1 / 14
プロローグ
しおりを挟む「保田くん、私と付き合って」
夏休みが間もなく始まろうとしていた、高校1年生の7月中旬。保田聡は、同学年一の美女と名高い松本愛花に呼び出された。
「…は…?」
朝登校した時に下駄箱に入っていた半分に折られた淡いピンクの花柄の絵が描かれた紙。開くと
『放課後、体育館裏に来てください』
と、書かれた文字は丸っこい字で、女子が書いたものだと分かった…が、差し出し人の名前が書いていなかったため誰が書いたのか分からなかった。
どうせ遊び半分だろうと、無視する事も出来たがなんとなく気になったので呼び出された場所へ行く事にしたのだった。
目の前にいる美女、松本愛花は肩までのセミロングの艶のあるピンク色の髪を下ろし制服の白いYシャツと黒のスカートを履いていた。センターで分けた前髪から覗く額は丸く、柔らかい曲線の眉の下にこぼれ落ちそうな錯覚をしてしまうぱっちりとした大きな瞳、頬は何故か赤く染まっていて、唇はツヤツヤで小さくぷっくりと膨らんでいる。学則で決まっているYシャツをスカートの中にしまっているため、腰の細さが際立ちスタイルの良さを表している。
ーーそれに比べ…
俺は身長180センチある巨体で彼女を見下ろしていた。元々身長は高かったのだが、中学の頃に始めた剣道で筋肉と基礎体力の向上で、胸板は厚く腕も脚も太い。黒い短髪の髪にキリッと上がってる眉、鋭い一重の目は人々を威圧してしまうらしい。
そんな同じ学年のマドンナ的存在が俺を呼び出し、付き合ってほしいと告げている。
もしかしてと思い俺は、キョロキョロと周りを見渡すも、誰も居ない事を確認した。
「…なんで周りを見てるの?」
眉をキュッと寄せて、疑問の顔を見せる。
「…罰ゲームかなんかと思って」
「なんでっ!?」
目を見開き驚く彼女に俺は、目が落ちそうだなと思った。
「ひどいっ!私の気持ちを疑うなんてっ!」
と顔を手で覆う彼女が泣き声になったので慌てて、
「わっ悪いっ!なんでもするからっ許してくれっ!」
「…何でも…?」
「ああっ!」
と彼女の周りをウロウロしていたら、彼女のか細い声が聞こえ、コクコクと頷くとパッと顔を上げた彼女は、涙など微塵もない変わらぬ可愛い顔でにっこりと笑い
「じゃっ!付き合ってね!」
と恐ろしい事を言ったのだった…
**********************
「保田ー!彼女が来てるぞー」
そう言った同じ剣道部員の先輩が、道場の出入口で待つ愛花が来た事を知らせてきた。
愛花と(強引に)付き合う事になって1週間。部活終わりに差し掛かるぐらいに、部活動をやっていない彼女が俺の事を迎えに来ることが増えた。
最初は美人で有名な愛花が剣道部に顔を出した事に衝撃が走ったが、1週間も経つと見慣れた光景となっていた。
初日からお互いの名前で呼び合う事を強制され、スマホの番号とメッセージアプリも交換させられた。
「まっ愛花、もうすぐ終わるから」
「うん…見学してもいいかな?」
「ああ」
言い慣れない女子の苗字じゃない名前を噛んでしまうが、愛花は気にする事なく中へと入り、間もなく部活が終わるために道場の端に出していた俺の荷物が置いてある近くの場所に座る。
ちなみに、俺のリュックに彼女が付けた頭にヒマワリを付けたゆるキャラのぬいぐるみをつけたために、すぐに俺の荷物かどうかわかる。
「本当美しいな…」
隣で俺たちのやりとりを見ていた先輩がボソリと呟き、俺は確かにそうだと、心の中で全力で頷いた。
5
あなたにおすすめの小説
禁断溺愛
流月るる
恋愛
親同士の結婚により、中学三年生の時に湯浅製薬の御曹司・巧と義兄妹になった真尋。新しい家族と一緒に暮らし始めた彼女は、義兄から独占欲を滲ませた態度を取られるようになる。そんな義兄の様子に、真尋の心は揺れ続けて月日は流れ――真尋は、就職を区切りに彼への想いを断ち切るため、義父との養子縁組を解消し、ひっそりと実家を出た。しかし、ほどなくして海外赴任から戻った巧に、その事実を知られてしまう。当然のごとく義兄は大激怒で真尋のマンションに押しかけ、「赤の他人になったのなら、もう遠慮する必要はないな」と、甘く淫らに懐柔してきて……? 切なくて心が甘く疼く大人のエターナル・ラブ。
Honey Ginger
なかな悠桃
恋愛
斉藤花菜は平凡な営業事務。唯一の楽しみは乙ゲーアプリをすること。ある日、仕事を押し付けられ残業中ある行動を隣の席の後輩、上坂耀太に見られてしまい・・・・・・。
※誤字・脱字など見つけ次第修正します。読み難い点などあると思いますが、ご了承ください。
年上幼馴染の一途な執着愛
青花美来
恋愛
二股をかけられた挙句フラれた夕姫は、ある年の大晦日に兄の親友であり幼馴染の日向と再会した。
一途すぎるほどに一途な日向との、身体の関係から始まる溺愛ラブストーリー。
碧眼の小鳥は騎士団長に愛される
狭山雪菜
恋愛
アリカ・シュワルツは、この春社交界デビューを果たした18歳のシュワルツ公爵家の長女だ。
社交会デビューの時に知り合ったユルア・ムーゲル公爵令嬢のお茶会で仮面舞踏会に誘われ、参加する事に決めた。
しかし、そこで会ったのは…?
全編甘々を目指してます。
この作品は「アルファポリス」にも掲載しております。
先生と私。
狭山雪菜
恋愛
茂木結菜(もぎ ゆいな)は、高校3年生。1年の時から化学の教師林田信太郎(はやしだ しんたろう)に恋をしている。なんとか彼に自分を見てもらおうと、学級委員になったり、苦手な化学の授業を選択していた。
3年生になった時に、彼が担任の先生になった事で嬉しくて、勢い余って告白したのだが…
全編甘々を予定しております。
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
巨×巨LOVE STORY
狭山雪菜
恋愛
白川藍子は、他の女の子よりも大きな胸をしていた。ある時、好きだと思っていた男友達から、実は小さい胸が好きと言われ……
こちらの作品は、「小説家になろう」でも掲載しております。
ソロキャンプと男と女と
狭山雪菜
恋愛
篠原匠は、ソロキャンプのTV特集を見てキャンプをしたくなり、初心者歓迎の有名なキャンプ場での平日限定のツアーに応募した。
しかし、当時相部屋となったのは男の人で、よく見たら自分の性別が男としてツアーに応募している事に気がついた。
とりあえず黙っていようと、思っていたのだが…?
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載しています。
ネット通販の配達は、彼を指名します!
狭山雪菜
恋愛
岡田みなみ、ネット通販ヘビーユーザーだ。
それもそのはず、彼女の目当ては宅配業者の担当者田中くんなのだから。
リモートワークで引きこもり生活に入ったみなみは、人と話したい欲もあり、彼と喋っていくうちに…
こちらの作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる