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夏合宿2
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旅館近くにある高校の剣道場で合同練習をしていた部員たちを見たり、ほぼ水分補給係として麦茶を作ったり、後片付けを手伝ったりと暇な時間を過ごしていた夏合宿1日目。
「愛花ちゃん、これも」
部員達もチラホラ旅館に帰っていて、使用した食器類の洗い物をしていた私は、舞ちゃんに言われて麦茶の入っていたヤカンを受け取った。
「舞ちゃん、私これ終わったら行くから先に旅館に戻ってて、先輩に備品の補充お願いされていたよね」
「え…でも」
「洗い物これだけだし、帰りもわかるから」
「本当?ごめんね、何かあったらすぐ連絡してね!」
申し訳なさそうにそう告げた舞ちゃんは、スマホを上げた。暇だった時に連絡先を交換していたのだ。
舞ちゃんが見送った後に、ヤカンも洗い終わり軽く水回りを拭いてタオルを蛇口に干した。
「終わったのか?」
「っわっ!…びっくりしたぁ、聡かぁ」
ヨシッと、腰に手を当て立っていた私の背後から声を掛けられ、驚いた。
「うん、終わったよ…待っていてくれたの?」
「ん、そうだな」
ポリポリと頬を掻いた聡の頬が少し赤い気がする。ムズムズと胸がこそばゆい感じになって、嬉しくて気持ちが爆発した。
「わ~嬉しいっ」
「っどわっ!」
彼の胸に飛び込むと、聡はよろけながらも私をがっちりと抱きとめてくれる。夏休み入ってから会う事が出来なくて、久しぶりの触れ合いに抱きつく腕の力が強くなるが、聡も片手で私の腰を掴む手が強い。
「…行くか」
しばらく抱き合っていたが、ぼそりと告げた聡の声に名残惜しくなったが、彼の腕に自分の腕を絡めてギュッと身体を寄せる事で、妥協して旅館へと帰る事にした。
***********************
「夕飯は19時に鶴の間でやるみたいだから、それまでに戻ればいいか」
旅館から高校に行った道のりではなく、少し遠回りして海辺を手を繋ぎ歩く。夕日が赤く染まり海の中へと入っていく。日も沈んでいるからか、泳ぐ人はいなくチラホラ散歩をする人しかいない。
「夏休みなのに人があまりいないね」
「…そうだな」
私の一歩前を歩く竹刀袋を肩に掛け紺色の剣道着と袴姿の大きな背中を見つめながら歩く。波打つ音と2人分の砂を踏む音がして、まるでこの世界に2人しかいないような錯覚がする。
「合宿許可取ってくれて…ありがとう」
「…別に」
合宿について行けるとは夢にも思わなかったし、少しだけ顔を出して彼を見たら帰ろうと思っていたので少なくとも5日間一緒に居れるなんて幸せだと感じた。メッセージアプリでも彼にお礼は言ったし、聡と2人で顧問にも挨拶して部費から出すと言われた宿泊費を断り、親から貰った宿泊費のお金も渡した。
いつの間にか暗くなった海岸で、聡は海から国道へと続く細長い石の階段に向かい、荷物を置いた。
ドカッと勢いよく座り、そばに居た私の腰に腕を回し引き寄せると、彼の足の間に座らされ背後から抱きしめられた。
私の左頬に彼の頬が当たり、固い腕が私のお腹の前をクロスして強く抱きしめる。
顔をズラした彼の唇が私の頬に触れて離れない。
「ンッ…」
「…苦しいのか?」
「ぅうん…違う」
耳元のすぐそばで囁く声が顔に響いて、力が抜けそうだ。どうして声だけで、こんなに安心するんだろうか。瞼を閉じて彼の胸に背を預け、お腹にある彼の腕に自分の手を置いた。
「…合宿の練習がない日は…海で遊ぶか?」
彼が喋る度に軽く頭が揺れてしまって、ふふふっと笑い声が漏れる。
「…何?」
ムッとする彼は、私の頬を甘噛みする。
違う、違うと笑ってしまい、身体が揺れて彼が私を抱きしめる力を強くする。本格的に苦しくなった私は降参した。
「聡が喋る度に頭が動くからっ…面白くてっ」
彼の力が少し緩んだので、うしろを振り向き彼の肩に手を置くと、彼の顔が近寄り口を塞がれる。
いつもは啄むキスから始まる事が多いのに、いきなり舌を絡めた濃厚なキスで戸惑う。彼の肩に置いた手を押すと唇が離れそうになったのだが、腰から動いた聡の手が頭部に置かれ、私の頭を動かす事を許さないと言っているみたいで、諦めて彼の舌に自分の舌を絡めた。
はぁっと、息を吐いたら彼の口にあたり私に返ってくる。彼の頬に向けていた視線を上げると、私をじっと見つめる彼の瞳とぶつかる。
「愛花」
「ん…?」
名前を呼ばれたので返事をすると、聡は視線を彷徨わせた後
、
「そろそろ帰ろうか」
と足を動かした聡は、私の腰を持ち上げて一緒に立ち上がった。
「愛花ちゃん、これも」
部員達もチラホラ旅館に帰っていて、使用した食器類の洗い物をしていた私は、舞ちゃんに言われて麦茶の入っていたヤカンを受け取った。
「舞ちゃん、私これ終わったら行くから先に旅館に戻ってて、先輩に備品の補充お願いされていたよね」
「え…でも」
「洗い物これだけだし、帰りもわかるから」
「本当?ごめんね、何かあったらすぐ連絡してね!」
申し訳なさそうにそう告げた舞ちゃんは、スマホを上げた。暇だった時に連絡先を交換していたのだ。
舞ちゃんが見送った後に、ヤカンも洗い終わり軽く水回りを拭いてタオルを蛇口に干した。
「終わったのか?」
「っわっ!…びっくりしたぁ、聡かぁ」
ヨシッと、腰に手を当て立っていた私の背後から声を掛けられ、驚いた。
「うん、終わったよ…待っていてくれたの?」
「ん、そうだな」
ポリポリと頬を掻いた聡の頬が少し赤い気がする。ムズムズと胸がこそばゆい感じになって、嬉しくて気持ちが爆発した。
「わ~嬉しいっ」
「っどわっ!」
彼の胸に飛び込むと、聡はよろけながらも私をがっちりと抱きとめてくれる。夏休み入ってから会う事が出来なくて、久しぶりの触れ合いに抱きつく腕の力が強くなるが、聡も片手で私の腰を掴む手が強い。
「…行くか」
しばらく抱き合っていたが、ぼそりと告げた聡の声に名残惜しくなったが、彼の腕に自分の腕を絡めてギュッと身体を寄せる事で、妥協して旅館へと帰る事にした。
***********************
「夕飯は19時に鶴の間でやるみたいだから、それまでに戻ればいいか」
旅館から高校に行った道のりではなく、少し遠回りして海辺を手を繋ぎ歩く。夕日が赤く染まり海の中へと入っていく。日も沈んでいるからか、泳ぐ人はいなくチラホラ散歩をする人しかいない。
「夏休みなのに人があまりいないね」
「…そうだな」
私の一歩前を歩く竹刀袋を肩に掛け紺色の剣道着と袴姿の大きな背中を見つめながら歩く。波打つ音と2人分の砂を踏む音がして、まるでこの世界に2人しかいないような錯覚がする。
「合宿許可取ってくれて…ありがとう」
「…別に」
合宿について行けるとは夢にも思わなかったし、少しだけ顔を出して彼を見たら帰ろうと思っていたので少なくとも5日間一緒に居れるなんて幸せだと感じた。メッセージアプリでも彼にお礼は言ったし、聡と2人で顧問にも挨拶して部費から出すと言われた宿泊費を断り、親から貰った宿泊費のお金も渡した。
いつの間にか暗くなった海岸で、聡は海から国道へと続く細長い石の階段に向かい、荷物を置いた。
ドカッと勢いよく座り、そばに居た私の腰に腕を回し引き寄せると、彼の足の間に座らされ背後から抱きしめられた。
私の左頬に彼の頬が当たり、固い腕が私のお腹の前をクロスして強く抱きしめる。
顔をズラした彼の唇が私の頬に触れて離れない。
「ンッ…」
「…苦しいのか?」
「ぅうん…違う」
耳元のすぐそばで囁く声が顔に響いて、力が抜けそうだ。どうして声だけで、こんなに安心するんだろうか。瞼を閉じて彼の胸に背を預け、お腹にある彼の腕に自分の手を置いた。
「…合宿の練習がない日は…海で遊ぶか?」
彼が喋る度に軽く頭が揺れてしまって、ふふふっと笑い声が漏れる。
「…何?」
ムッとする彼は、私の頬を甘噛みする。
違う、違うと笑ってしまい、身体が揺れて彼が私を抱きしめる力を強くする。本格的に苦しくなった私は降参した。
「聡が喋る度に頭が動くからっ…面白くてっ」
彼の力が少し緩んだので、うしろを振り向き彼の肩に手を置くと、彼の顔が近寄り口を塞がれる。
いつもは啄むキスから始まる事が多いのに、いきなり舌を絡めた濃厚なキスで戸惑う。彼の肩に置いた手を押すと唇が離れそうになったのだが、腰から動いた聡の手が頭部に置かれ、私の頭を動かす事を許さないと言っているみたいで、諦めて彼の舌に自分の舌を絡めた。
はぁっと、息を吐いたら彼の口にあたり私に返ってくる。彼の頬に向けていた視線を上げると、私をじっと見つめる彼の瞳とぶつかる。
「愛花」
「ん…?」
名前を呼ばれたので返事をすると、聡は視線を彷徨わせた後
、
「そろそろ帰ろうか」
と足を動かした聡は、私の腰を持ち上げて一緒に立ち上がった。
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