16 / 31
復讐は華やかに
しおりを挟む人の国であるテンペスト国が、他国を招いたとあるパーティーで、その場には不釣り合いな格好をした数人の人物達が入ってきた。
停止させようとした警備兵はその人物を見て、彼らを止めることができずにあわあわと意味のない動きをしている。
それもそのはず、その姿がボロボロの衣装を身に纏うとはいえ、彼らはこの国の姫とその従者達だったのだから。
しかし、彼の姫は数ヶ月前に獣人の国に嫁いだはずでした。
そんな姫がなぜかボロボロの服装で登場したのです。
「クェイル!どうしたのです!」
姫の姿を見た、王妃は自分の妹の変わりように悲鳴の声を上げた。
会場がざわざわとした喧騒からはりつめた空気のもつ静かな場へと姿を変える。
姫、クェイルは目をはらし、泥にまみれた顔に安堵の笑みを浮かべて、王妃の元に向かう。そして、掠れた声で訴えた。
「獣人の国は裏切りました!」
その言葉の意味はだれもが飲み込めずにいた。
何人かの視線が泳ぐように動揺している。
「あの日私は獣人どもに殺されそうになったのです。侍女が私を逃がさなかったらどうなっていたのか…。ああ……。」
ただ、それだけを見れば悲劇の姫の登場であるが…。
「獣人の国が貴女を?」
「そうなのです。何度も遠くに逃げようと思いました。けど、やはり、母国を見捨てることは出来ませんでした。命からがら姿を隠しながらやっとその事を伝えることができます。」
「それは面白いじょうだんですね。」
「えぁ?」
悲劇の姫を演じる彼女に私が声を掛けました。
隣にいる優しい旦那様は壊れ物を触るかのように繊細に腰に手を当て、ゆっくりとエスコートしてくれます。
私の姿がクェイル王女の目に入ると一瞬だけ呆けた顔をしたあと怒りの表情に変わった。
「なぜ、あんたがいる?その隣の奴は!」
「あら、本来なら貴女様がここにいるはずだったのですよ。」
きっと、今の私は誰もが羨むぐらい輝いているでしょう。
なぜかって?
ドレスはとある東の国の希少な光を反射する布で出来ており、ドレスには雪の国の美しい青色の小粒の宝石で飾られ、そのドレスにも負けない首もとや腕の装飾は、海の国の女帝が送ってくれた希少な黒真珠をつかっていた。
有名なファッションの貴公子によって飾られた衣装を映えさせる髪に添えられた月下美人の生花は精霊の次期王が自ら選んでくれたもので精霊の加護がかかっている。
このとんでもない状態は、姫が蔑んだ獣人の王子がお願いしただけで、皆が友だからと用意してくれたものだ。
もちろんお礼はきっちりとさせて貰っている。
世界中の選ばれた魔法使いの卵達が通う学園は、この世界を縮小した様に色んな種族がいる。
クェイル王女はその資格はなかった様ですが。
「そして、今宵のパーティーは私達の訪問のパーティーですよ。」
「ほ、訪問?」
今回、獣人の国とテンペスト国の婚約は、今まで領地の主張をしていた2つの国またがる森の共同開拓を目的とした、契約的な結婚でした。
本来なら、その話をするために王様が来る予定でしたが、王の推薦により我々が来ることになったのです。
最初はクェイル王女ではなく私が来たことに驚かれたものですが、何だかんだで迎え入れてくれた。
「い、生きていたのですね。きっと脅されているのね。」
「貴女には私が脅されているような状況にあるように見えます?」
私は、イェシル殿下にすり寄り、イェシル殿下は優しく抱きしめてくれる。
黒真珠の妖しい光が互いの物に反射してそれがお揃いに作られているのが分かると思います。
「こんなに尽くされるなんて私、初めてです。そこはお礼を言わせてくださいね。」
「ただの人質だったくせに。」
「あら、本性が出てますよ。まあ、貴女がやったことはここに居る皆さんがご存じですけど。」
そう言って会場の壁に写し出されたのは、例の記録映像であった。
13
あなたにおすすめの小説
不機嫌な侯爵様に、その献身は届かない
翠月るるな
恋愛
サルコベリア侯爵夫人は、夫の言動に違和感を覚え始める。
始めは夜会での振る舞いからだった。
それがさらに明らかになっていく。
機嫌が悪ければ、それを周りに隠さず察して動いてもらおうとし、愚痴を言ったら同調してもらおうとするのは、まるで子どものよう。
おまけに自分より格下だと思えば強気に出る。
そんな夫から、とある仕事を押し付けられたところ──?
【完結】悪役令嬢は何故か婚約破棄されない
miniko
恋愛
平凡な女子高生が乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった。
断罪されて平民に落ちても困らない様に、しっかり手に職つけたり、自立の準備を進める。
家族の為を思うと、出来れば円満に婚約解消をしたいと考え、王子に度々提案するが、王子の反応は思っていたのと違って・・・。
いつの間にやら、王子と悪役令嬢の仲は深まっているみたい。
「僕の心は君だけの物だ」
あれ? どうしてこうなった!?
※物語が本格的に動き出すのは、乙女ゲーム開始後です。
※ご都合主義の展開があるかもです。
※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしておりません。本編未読の方はご注意下さい。
婚約破棄ブームに乗ってみた結果、婚約者様が本性を現しました
ラム猫
恋愛
『最新のトレンドは、婚約破棄!
フィアンセに婚約破棄を提示して、相手の反応で本心を知ってみましょう。これにより、仲が深まったと答えたカップルは大勢います!
※結果がどうなろうと、我々は責任を負いません』
……という特設ページを親友から見せられたエレアノールは、なかなか距離の縮まらない婚約者が自分のことをどう思っているのかを知るためにも、この流行に乗ってみることにした。
彼が他の女性と仲良くしているところを目撃した今、彼と婚約破棄して身を引くのが正しいのかもしれないと、そう思いながら。
しかし実際に婚約破棄を提示してみると、彼は豹変して……!?
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています
愛する人は、貴方だけ
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
下町で暮らすケイトは母と二人暮らし。ところが母は病に倒れ、ついに亡くなってしまう。亡くなる直前に母はケイトの父親がアークライト公爵だと告白した。
天涯孤独になったケイトの元にアークライト公爵家から使者がやって来て、ケイトは公爵家に引き取られた。
公爵家には三歳年上のブライアンがいた。跡継ぎがいないため遠縁から引き取られたというブライアン。彼はケイトに冷たい態度を取る。
平民上がりゆえに令嬢たちからは無視されているがケイトは気にしない。最初は冷たかったブライアン、第二王子アーサー、公爵令嬢ミレーヌ、幼馴染カイルとの交友を深めていく。
やがて戦争の足音が聞こえ、若者の青春を奪っていく。ケイトも無関係ではいられなかった……。
「転生したら推しの悪役宰相と婚約してました!?」〜推しが今日も溺愛してきます〜 (旧題:転生したら報われない悪役夫を溺愛することになった件)
透子(とおるこ)
恋愛
読んでいた小説の中で一番好きだった“悪役宰相グラヴィス”。
有能で冷たく見えるけど、本当は一途で優しい――そんな彼が、報われずに処刑された。
「今度こそ、彼を幸せにしてあげたい」
そう願った瞬間、気づけば私は物語の姫ジェニエットに転生していて――
しかも、彼との“政略結婚”が目前!?
婚約から始まる、再構築系・年の差溺愛ラブ。
“報われない推し”が、今度こそ幸せになるお話。
【完結】無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない
ベル
恋愛
旦那様とは政略結婚。
公爵家の次期当主であった旦那様と、領地の経営が悪化し、没落寸前の伯爵令嬢だった私。
旦那様と結婚したおかげで私の家は安定し、今では昔よりも裕福な暮らしができるようになりました。
そんな私は旦那様に感謝しています。
無口で何を考えているか分かりにくい方ですが、とてもお優しい方なのです。
そんな二人の日常を書いてみました。
お読みいただき本当にありがとうございますm(_ _)m
無事完結しました!
竜の花嫁 ~夫な竜と恋愛から始めたいので色々吹き込みます~
月親
恋愛
前世で恋愛結婚に憧れたまま亡くなった美愛(みあ)が転生したのは、アルテミシアという美少女だった。
アルテミシアが生まれた世界は、ファンタジーな異世界。オフィスラブな物語が大好きだった美愛は世界観にがっかりするも、村長の養女である今世なら結婚はできそうだと思っていた。
ところが、その村長である叔父から言い渡された結婚相手は『湖』。旱魃の雨乞い儀式にて、湖に住む水神の花嫁になれという。
結婚という名の生け贄にまさになろうとしたそんなとき、アルテミシアの前に一体の竜が現れた。
竜は番であるアルテミシアを迎えに来たという。
今度こそ憧れの結婚ができるのではと思ったアルテミシア。それは思い違いではなかった。なかったが、いきなり手籠めにされかけた。
アルテミシアはシナレフィーと名乗った竜に提案した。恋愛から始めませんか、と。
その提案に、面白そうだとシナレフィーは乗ってくれた。さらに彼がアルテミシアに付けた愛称は、奇しくも『ミア』だった。
シナレフィーを前にアルテミシアは考える。人間のデートを知らない彼なら、何でもやってくれるのではないかと。そう、恋愛物語でしか見ないようなベタ展開も。
よし、色々シナレフィーに吹き込もう。アルテミシアはそう思い立ち、実践することにしたのだが――
※この作品は、『魔王の花嫁 ~夫な魔王が魔界に帰りたいそうなので助力します~』に登場するシナレフィー&ミア夫妻の馴れ初め話ですが、単体でも読めるようになっています。
※この作品は、『小説家になろう』様でも公開しています。
悪役令嬢?いま忙しいので後でやります
みおな
恋愛
転生したその世界は、かつて自分がゲームクリエーターとして作成した乙女ゲームの世界だった!
しかも、すべての愛を詰め込んだヒロインではなく、悪役令嬢?
私はヒロイン推しなんです。悪役令嬢?忙しいので、後にしてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる