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幸せの鐘
しおりを挟むあの時と同じ青く澄んだ空の元、私はあの人の瞳と同じ緑のマーメイドラインドレスを身にまとい、白い花を基礎とした美しいブーケを手に持ち、隣に顔をぐちゃぐちゃにしたカインを添えて、まっすぐ伸びた道を歩いている。
この道の先には私の瞳と同じ黒のタキシードを身に纏うイェシルが嬉しそうに待っている。
手を差し出し私を迎える。
共に歩く人がカインからイェシルに変わり、祭壇に向かって歩みを続ける。周りにはフィシゴやリドリーさん、タイラやそれに支えられた女性など、短期間ながらも色々と関わった人が見守る中で、祭壇の前にまで来た。
祭壇にはマントヒヒの獣人の神官さんが神聖な面持ちで立っている。
この日、私は結婚することとなった。
せっかくなので、前世式に執り行う事にした結婚式はまずは神前でのパートナーとの誓い。
こちらでは、結婚式宴会な事が多いらしく、神にわざわざ誓うなんてしないらしい。
宴会に神の席を設けてお祝いしてとの事だった。
カインとの偽りの婚約関係(と思わせてた)の事があったので改めて感謝をこめてお互いを守る事を誓い合う。
それが終わったら、食事会。
アレルギーの概念が少ないこの世界にアレルギーの概念を植え付けるため、事前に調査をして卵が駄目だ、小麦粉駄目だと振り分け済である。
毒の時にお世話になったディーラさんには後で詳しく教えてと言われたが、まずは軽く説明を挟んで食事会が開催された。
料理人さんには無理を色々言ってしまったので、申し訳無かったが、色々と代替えの物の応用が思いついて楽しかったと言ってくれたので良かった。更には、飢饉の時に使えそうな食材もあったため、呼ばれた各国の代表が目を光らせて、じっくり堪能してくれたらしい。
食事の最中には飽きないように、くじ引き大会なんかも行った。
フィシゴが巨大な熊のぬいぐるみが当たり、肩を落としていたが、ハイエナの女性が欲しそうに眺めているのを見てあげていた。
後々、その娘と結婚することになるのだが、それをイェシルが仕込んでいた事は今は秘密である。
食事が終われば、会場の外に出てフラワーシャワーの予定が、精霊王の本気のフラワーストームをくらい、二人して全身を花だらけにしてお互い笑いあう。
最後にブーケを空に投げて、女のコの方に投げてあげれば、こんな結婚にあやかりたいと争奪戦のすえ、ディーラさんの方に飛んでしまい受け取る形となってしまった。あとで、意味合いを教えてあげよう。
「イェシル、有難う。」
「俺は何もしてねぇ。」
「まさか、こんなに幸せになるなんて思わなかった。」
「これからもそれが続くんだよ。」
じゃないと、ライバルがうるせぇ
そう、照れ隠しの様に頭を掻く、イェシルによりかかり私は笑う。
後に語られる事になる、獣人の国のとある公爵一家。
王の相談役を命じられてどんな難解にも答えを出す頭の切れ者の主人は、他国からの相談にさえ気分がのれば答えてくれるらしい。
しかし、愛妻家で人間である妻をいじろうならもう二度と相談にはのらないし、破滅に向かおうともアドバイスはくれないという。
かつて、妻を殺しかけたとある人間の国は、優しく、利発な王妃がいたにも関わらず周りの発展についていけずに、消えていってしまった。
それを聞いた妻は静かに微笑んだという。
だって、獣人が滅ぼしたら怒りが獣人にくるでしょ?私の恩人をそんな目に合わせたくない。
こうして国が発展できずに自然に消え領土が他の国に吸収されでもしたら怒りの矛先は無能な上役にいくはず。
昔の歴史で何度も聞いた光景が再現されている。
私はただ、手を汚さずに復讐することになっただけ。
これこそ正に『この記憶、復讐に使わせてもらいます!』かな?
END
1ヶ月の間有難うございました。
久々の作品なので不出来な物のかと思いますが、深く考えないで読んでいただけたらと思っています。
年末年始に向けて過去作の続きを考えていますので良かったらまた会いましょう。
SHIN
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