付き合っているのに喧嘩ばかり。俺から別れを言わなければならないとさよならを告げたが実は想い合ってた話。

雨宮里玖

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2.誓いの指輪

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「陸斗。俺はずっと陸斗のことを愛してる」

 二人が恋人同士になる時に、大河はそう言って陸斗を抱き締めた。

「俺を陸斗の恋人にしてくれるの?」

 大河がこの台詞を言うのはもう何度目だろう。

「大河、しつこいな。さっきからいいって言ってるだろ」
「『いい』って何? 要らないの意味? それとも俺を受け入れてくれるって意味?」

 わかってるくせに確認するな。

「俺も大河が好き。大河の恋人になりたい。何回も言わすなよっ。これ以上は恥ずかしくて言いたくないっ」

 大河にいいように乗せられて「好きだ」「恋人にして欲しい」を散々連呼させられて、陸斗は羞恥の限界だ。



「可愛い、陸斗、大好き。もう絶対にこのまま離さないっ!」

 大河は陸斗を身動き取れないくらいに強く抱き締めてきた。

「何言ってんだよ、どうせすぐに離れるだろ。ずっとくっついたままじゃ、メシも食えないだろうが!」
「俺はメシくらいこのままでも食えるけど、そう言う意味じゃねぇよ」

 あ、大河は食えんの? こんなに抱き合ってままで? バカだなお前。

「絶対に陸斗と別れないって意味だよ。……まぁ、陸斗が俺と別れたいって言ったらそれは諦めるけどさ。俺から言うなんてありえない。命を懸けて誓ってもいい」

 大河はそれから本当に離してくれない。

 さすがに苦しくなって陸斗から「いい加減にしろっ」と言ったら「お前がそう言うなら、離れるよ」とやっと解放してくれた。



「そうだ陸斗。これ、貰って」

 大河は急にポケットから何かを取り出した。

 ——指輪だ。
 同じデザインの、ゴールドとシルバーの色違いの指輪。

「わざと金と銀にした。男同士で同じ指輪は恥ずかしいだろ? 陸斗、どっちがいい?」

 陸斗と大河の指のサイズは同じだ。以前アクセサリー屋で測った時に「同じじゃん」と大河と笑い合った事がある。

「いきなり指輪かよ……」

 今どき告白する時に指輪を用意する奴なんていないだろ。

「えっ? ごめん! 引いた? 引くか。引くよな……」
「違う。俺に告白して振られるかもしれないのによく買うよな……」
「なんだそっちかよ。びっくりしたな……。別にいいだろ、俺は陸斗を見える物でも縛っておきたいんだよ!」
「俺、指輪は好きじゃない」
「嘘つけ。いつもジャラジャラ付けてるだろ」

 ジャラジャラは言い過ぎだ。プライベートの時に気に入ったものを一つ二つだけだ。

「俺シルバーがいい」

 陸斗の持っているアクセサリーはシルバーばかりだ。ゴールドでは目立ってしまうから。

「貰ってくれるんだ」

 大河はものすごく嬉しそうな顔をした。

「仕事の時は着けないからな」

 陸斗と大河は同じ会社の同期で、会社ではほぼ他人のふりをしている。そして陸斗は会社では『付き合ってる人はいない』ということになっている。それなのに指輪なんてできる訳がない。

「いいぜ。陸斗の好きにしろ。お前が受け取ってくれるだけで俺は最高に幸せだから」

 大河はシルバーの指輪を手に取り、陸斗の左手を引き寄せる。

「右っ! 右がいいっ!」

 左手薬指なんて耐えられない。あからさま過ぎて恥ずかしい。

「右ね。わかったよ」

 大河は陸斗の右手の薬指にシルバーの指輪をはめる。そして大河はゴールドの指輪を左手の薬指に自らはめた。

 そして陸斗を愛おしそうに見つめて言う。


 この指輪に誓う。俺はずっとお前のそばにいるよ。変わらずお前を愛し続ける。お前が必要としてくれてる限り、お前に嫌だと拒絶されるまでは、俺は絶対に離れないから——。
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