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2.わけがわからない
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やっぱり気が乗らなかった。
果穂が会わせたい相手が誰かは知らないが、一度オーケーした果穂の週末の誘いを急遽キャンセルした。
神尾に捨てられた樋口の精神状態はかなり危険で、自分でもどうにか仕事をこなせているのが奇跡だと思うくらい酷かった。家に帰ればヤケ酒を煽り、「神尾戻ってきてくれ」「神尾に会いたい」と一人暮らしなのをいいことに声に出して毎晩泣いていた。
果穂の予定をキャンセルしたのにも関わらず、週末も何もせず家で世捨て人のように過ごした。何もやる気が起きなかった。
月曜日になり、仕事だけは休むわけにはいかないと疲れ切った心を引きずったまま会社に行く。そして退社する。帰り道にヤケ酒用の酒とつまみをコンビニに寄って買って家に帰るその途中だった。
神尾からの着信があった。
画面に現れた『神尾裕二』の文字を見ただけで、樋口は嬉しさのあまりにスマホを落っことしそうになったくらいだ。
「もしもし、神尾か?!」
用件などなんでもいい。もう一度神尾の声を聞けるだけでも幸せだ。
『樋口。今ちょっと話をしてもいいか?』
この声だ。久しぶりに聞いた神尾の声。声を聞いただけで嬉しさが込み上げてくる。
「ああ。どうした?」
まさかお前のところに戻りたいと言ってもらえるのではないかと淡い期待まで寄せていた。
『樋口、お前なんで佐上さんとの約束を断ったりしたんだよ!』
いきなりの怒声に驚き、思わず足が止まる。
「何でお前がそんなこと知ってるんだよ」
果穂が神尾に話をしたのだろうか。樋口は果穂の誘いのことは誰にも話してはいない。
『社内で噂になってるんだよ! 佐上さんはお前と結婚するってみんなに言ってたのに、社長と社長の奥さんとの顔合わせの日に急にキャンセルしたんだろ? お前、ちょっと酷すぎないか?!』
神尾は一体何を言っているのだろうか。意味がわからない。
樋口は果穂と結婚の約束をした覚えもなければ、顔合わせなんてするつもりなどなかった。そもそも樋口が一生を添い遂げたいくらいに好きなのは果穂じゃない。神尾だ。
『佐上さん、ショックで仕事にならないんだよ。婚約破棄だって社内でも噂されてさ』
「ちょっと待て、神尾。俺はお前が何を言っているのかわからない。俺は果穂ちゃんと結婚の約束なんてした覚えはないぞ」
『え? ……マジで言ってんの?!』
「マジだよ。俺、お前が勝手に俺の連絡先を教えたからさ、お前の上司ってのもあって邪険には出来ないし、果穂ちゃんに誘われて何度か二人で会ったことはあるけどそれだけだ。結婚どころか付き合ってもない」
その頃俺には神尾、お前という最高のパートナーがいたじゃないかと思う。
『嘘だろ?! え、だってお前。佐上さんと寝たんだろ?!』
何を言い出すんだ神尾!
「そんなことあるわけないだろ! だって俺にはお前がいたんだから」
いったい神尾はどうしたんだ……?
さっきからわけのわからないことばかり言っている。
『……ちょっと待ってくれよ……。俺はいったい誰を信じたらいいんだよ……』
神尾も混乱しているようだ。だが樋口が神尾に言えることはただ一つだ。
「神尾。俺はお前に1つも嘘は言ってない。全部真実だ。少しの間だったかもしれないが、俺と一緒に過ごしてくれたお前ならわかるだろ? 俺が嘘をつけないタイプだって」
『そうだよな……。でも俺はお前を信じきれなくて……もう……』
なんだこのモヤモヤ感は。樋口の知らないところで何かが起きていたとしか考えられない。そしてそれに神尾も巻き込まれたようだ。
「神尾。今から会って話せないか?」
樋口の誘いに神尾は力なく『ああ』と答えた。
果穂が会わせたい相手が誰かは知らないが、一度オーケーした果穂の週末の誘いを急遽キャンセルした。
神尾に捨てられた樋口の精神状態はかなり危険で、自分でもどうにか仕事をこなせているのが奇跡だと思うくらい酷かった。家に帰ればヤケ酒を煽り、「神尾戻ってきてくれ」「神尾に会いたい」と一人暮らしなのをいいことに声に出して毎晩泣いていた。
果穂の予定をキャンセルしたのにも関わらず、週末も何もせず家で世捨て人のように過ごした。何もやる気が起きなかった。
月曜日になり、仕事だけは休むわけにはいかないと疲れ切った心を引きずったまま会社に行く。そして退社する。帰り道にヤケ酒用の酒とつまみをコンビニに寄って買って家に帰るその途中だった。
神尾からの着信があった。
画面に現れた『神尾裕二』の文字を見ただけで、樋口は嬉しさのあまりにスマホを落っことしそうになったくらいだ。
「もしもし、神尾か?!」
用件などなんでもいい。もう一度神尾の声を聞けるだけでも幸せだ。
『樋口。今ちょっと話をしてもいいか?』
この声だ。久しぶりに聞いた神尾の声。声を聞いただけで嬉しさが込み上げてくる。
「ああ。どうした?」
まさかお前のところに戻りたいと言ってもらえるのではないかと淡い期待まで寄せていた。
『樋口、お前なんで佐上さんとの約束を断ったりしたんだよ!』
いきなりの怒声に驚き、思わず足が止まる。
「何でお前がそんなこと知ってるんだよ」
果穂が神尾に話をしたのだろうか。樋口は果穂の誘いのことは誰にも話してはいない。
『社内で噂になってるんだよ! 佐上さんはお前と結婚するってみんなに言ってたのに、社長と社長の奥さんとの顔合わせの日に急にキャンセルしたんだろ? お前、ちょっと酷すぎないか?!』
神尾は一体何を言っているのだろうか。意味がわからない。
樋口は果穂と結婚の約束をした覚えもなければ、顔合わせなんてするつもりなどなかった。そもそも樋口が一生を添い遂げたいくらいに好きなのは果穂じゃない。神尾だ。
『佐上さん、ショックで仕事にならないんだよ。婚約破棄だって社内でも噂されてさ』
「ちょっと待て、神尾。俺はお前が何を言っているのかわからない。俺は果穂ちゃんと結婚の約束なんてした覚えはないぞ」
『え? ……マジで言ってんの?!』
「マジだよ。俺、お前が勝手に俺の連絡先を教えたからさ、お前の上司ってのもあって邪険には出来ないし、果穂ちゃんに誘われて何度か二人で会ったことはあるけどそれだけだ。結婚どころか付き合ってもない」
その頃俺には神尾、お前という最高のパートナーがいたじゃないかと思う。
『嘘だろ?! え、だってお前。佐上さんと寝たんだろ?!』
何を言い出すんだ神尾!
「そんなことあるわけないだろ! だって俺にはお前がいたんだから」
いったい神尾はどうしたんだ……?
さっきからわけのわからないことばかり言っている。
『……ちょっと待ってくれよ……。俺はいったい誰を信じたらいいんだよ……』
神尾も混乱しているようだ。だが樋口が神尾に言えることはただ一つだ。
「神尾。俺はお前に1つも嘘は言ってない。全部真実だ。少しの間だったかもしれないが、俺と一緒に過ごしてくれたお前ならわかるだろ? 俺が嘘をつけないタイプだって」
『そうだよな……。でも俺はお前を信じきれなくて……もう……』
なんだこのモヤモヤ感は。樋口の知らないところで何かが起きていたとしか考えられない。そしてそれに神尾も巻き込まれたようだ。
「神尾。今から会って話せないか?」
樋口の誘いに神尾は力なく『ああ』と答えた。
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