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5.反撃
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真下side
真下が塔矢に相談をしてから数日後。
ゼミで一条と会った。でも一条の態度は相変わらずだ。恋人なのだから、少しはアイコンタクトくらいしてくれてもいいのにと思うが、一条と視線すら合わない。
「まーしたっ!」
ゼミの教室の入り口で、笑顔で真下を呼ぶのは塔矢だ。
「塔矢?! どうした?!」
塔矢がここまで来るとは思わずに、真下はまさかと目をしばたかせる。
「あ! 塔矢くん!」
ゼミの皆も塔矢のもとに集まってくる。なぜかというと塔矢の初主演映画がクランクアップしたと今朝のニュースで取り上げられていたからだ。塔矢はTVで期待の新人俳優と紹介されていた。一躍時の人だ。
「TV見たよ! すごいねー!」
あっという間に人だかりだ。塔矢はそれを適当にありがとうありがとうとあしらって、真下のそばにやって来た。
「真下、もう帰る?」
「う、うん……まぁ……」
「じゃあ俺に付き合ってよ。一緒に映画観に行かない?」
塔矢は真下に向かって言うのだが、その視線は近くにいた一条も同時に捉えている。
「お前言ってたじゃん。誰かのせいで見逃した映画があるって」
塔矢の言葉に一条がぴくりと反応した。塔矢も塔矢で、一条を見てキッと睨みつける。
「そういうクズ野郎はこっちから願い下げだろ。インスタもリムれ! 何が明治神宮で初詣だよ。どーでもいいわ」
塔矢やめろ。一条は誰のことを言ってるのか気がついたみたいだ。一条のイライラがこっちまで伝わってくる。
一条の顔色を伺おうと真下が一条の方を見ようとしたら、塔矢がそれを身体で阻止する。
「行こうぜ、真下!」
塔矢は強い力で真下を引っ張っていく。まるで強制連行だ。
「塔矢っ! いい加減離せよっ!」
「ダメだ。あと少しだけ我慢しろっ」
塔矢はゼミの教室があった建物が見えなくなるところまで行ってやっと真下を解放してくれた。
「真下。スマホを見てみろ。あいつから連絡来たか?!」
塔矢に言われてスマホを確認する。塔矢の言う通り、一条からのLINEが届いている。
『真下。今日の夜、俺の部屋に来てくれないか?』
一条からの誘いなんて、滅多にないのに一体どういうことだ?!
「貸せ」
塔矢は真下のスマホを奪い、勝手に操作している。
「おい、塔矢っ! 何してんだよ!」
「これでよし」
塔矢にスマホを返され、何をしたんだとスマホの画面を確認すると、塔矢は勝手に一条にLINEを送っていた。
『他の女を連れ込んだ部屋に誰が行くかよバーカ!』
しかも既読になってる……。今さら送信取消しても一条に見られた後だ。
「塔矢、お前さぁ……」
塔矢の行動に呆れるが、塔矢はなんだか嬉しそうだ。他人事だと思って楽しんでるのか。
「大丈夫だよ。一条は今頃お前を俺に取られたと思ってるだけだから。釣った魚に餌はやらないような奴みたいだけど、奪われた宝は取り返しにくる。人に奪われると思ったら急に惜しくなるってのはよくある話だろ?」
塔矢は何をしたいんだよ……。
「さてと。真下、どうする? さっきのは一条を焚き付けるための嘘だから、お前はこのまま帰っていいけど、本当に俺と映画、観に行っちゃう?」
塔矢はニヤッと笑っている。その笑顔を見て思い出した。塔矢は思ったことをはっきり表現するような奴だったなと。
「うん。行く。あの映画本当に観たかったから」
「お! いいね! 早速座席予約する」
塔矢はスマホであっという間に予約をしてみせる。
「早いな」
「俺ね、映画好きでしょっちゅう予約してるから」
そうだった。塔矢は演劇バカだった。観るのも演じるのもどちらも好きだったなと思い出した。
真下が塔矢に相談をしてから数日後。
ゼミで一条と会った。でも一条の態度は相変わらずだ。恋人なのだから、少しはアイコンタクトくらいしてくれてもいいのにと思うが、一条と視線すら合わない。
「まーしたっ!」
ゼミの教室の入り口で、笑顔で真下を呼ぶのは塔矢だ。
「塔矢?! どうした?!」
塔矢がここまで来るとは思わずに、真下はまさかと目をしばたかせる。
「あ! 塔矢くん!」
ゼミの皆も塔矢のもとに集まってくる。なぜかというと塔矢の初主演映画がクランクアップしたと今朝のニュースで取り上げられていたからだ。塔矢はTVで期待の新人俳優と紹介されていた。一躍時の人だ。
「TV見たよ! すごいねー!」
あっという間に人だかりだ。塔矢はそれを適当にありがとうありがとうとあしらって、真下のそばにやって来た。
「真下、もう帰る?」
「う、うん……まぁ……」
「じゃあ俺に付き合ってよ。一緒に映画観に行かない?」
塔矢は真下に向かって言うのだが、その視線は近くにいた一条も同時に捉えている。
「お前言ってたじゃん。誰かのせいで見逃した映画があるって」
塔矢の言葉に一条がぴくりと反応した。塔矢も塔矢で、一条を見てキッと睨みつける。
「そういうクズ野郎はこっちから願い下げだろ。インスタもリムれ! 何が明治神宮で初詣だよ。どーでもいいわ」
塔矢やめろ。一条は誰のことを言ってるのか気がついたみたいだ。一条のイライラがこっちまで伝わってくる。
一条の顔色を伺おうと真下が一条の方を見ようとしたら、塔矢がそれを身体で阻止する。
「行こうぜ、真下!」
塔矢は強い力で真下を引っ張っていく。まるで強制連行だ。
「塔矢っ! いい加減離せよっ!」
「ダメだ。あと少しだけ我慢しろっ」
塔矢はゼミの教室があった建物が見えなくなるところまで行ってやっと真下を解放してくれた。
「真下。スマホを見てみろ。あいつから連絡来たか?!」
塔矢に言われてスマホを確認する。塔矢の言う通り、一条からのLINEが届いている。
『真下。今日の夜、俺の部屋に来てくれないか?』
一条からの誘いなんて、滅多にないのに一体どういうことだ?!
「貸せ」
塔矢は真下のスマホを奪い、勝手に操作している。
「おい、塔矢っ! 何してんだよ!」
「これでよし」
塔矢にスマホを返され、何をしたんだとスマホの画面を確認すると、塔矢は勝手に一条にLINEを送っていた。
『他の女を連れ込んだ部屋に誰が行くかよバーカ!』
しかも既読になってる……。今さら送信取消しても一条に見られた後だ。
「塔矢、お前さぁ……」
塔矢の行動に呆れるが、塔矢はなんだか嬉しそうだ。他人事だと思って楽しんでるのか。
「大丈夫だよ。一条は今頃お前を俺に取られたと思ってるだけだから。釣った魚に餌はやらないような奴みたいだけど、奪われた宝は取り返しにくる。人に奪われると思ったら急に惜しくなるってのはよくある話だろ?」
塔矢は何をしたいんだよ……。
「さてと。真下、どうする? さっきのは一条を焚き付けるための嘘だから、お前はこのまま帰っていいけど、本当に俺と映画、観に行っちゃう?」
塔矢はニヤッと笑っている。その笑顔を見て思い出した。塔矢は思ったことをはっきり表現するような奴だったなと。
「うん。行く。あの映画本当に観たかったから」
「お! いいね! 早速座席予約する」
塔矢はスマホであっという間に予約をしてみせる。
「早いな」
「俺ね、映画好きでしょっちゅう予約してるから」
そうだった。塔矢は演劇バカだった。観るのも演じるのもどちらも好きだったなと思い出した。
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