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10.塔矢の想い
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「なぁ真下。俺ずっとずっと欲しいものがあってさ。でもそれは絶対に手に入らないものだと思ってたんだ」
「絶対だなんて……。塔矢はオーディションを勝ち抜いて、主演の座を手に入れたんだぞ? それ以上難しいものなんてあるか?」
一縷の可能性を信じて、何度も何度もチャレンジすることができる塔矢が、絶対無理だと端から諦めることなんてことあるのか。
「ある。あったんだ。どんなに欲しくても触れた途端に壊れちゃうから、失わないようにずっと触らないギリギリまで近づいて見つめてたんだ」
「塔矢。何の話をしてるんだ?」
表現がまどろっこしいな。どっかの映画の台詞か?
「真下。お前のことだよ」
真下は驚いて塔矢を見る。塔矢は真剣なまなざしでこちらを見つめ返してきた。
「俺はずっと真下のことが好きだったんだ。でも、そんなこと男のお前にはとてもじゃないけど言えなくて黙ってた。真下と付き合うとか、真下に告白することすら絶対に叶わないと思ってた」
——嘘だろ、塔矢が、俺のことを……?!
「早く忘れよう、誰か別の人を好きにならなきゃって頑張ったけど無理で、最近は開き直って密かに好きって思い続けたまま、一生誰にも打ち明けることはなくてもそれでもいいと思ってたんだ」
塔矢は密かに真下のことを想ってくれていたのか……?
「俺はお前を好きでいられるだけで、この世界のどこかにお前がいてくれると思うだけで幸せだったから」
塔矢とは疎遠になっていた時期もあったし、その間、塔矢は俳優として華々しい世界に飛び込んでいった。ただの大学の友人のひとりでしかなかった真下のことなど記憶の彼方に飛んでいってもおかしくないのに。
「でもさ、俺はやっぱり欲張りで堪え性がない。真下が男と付き合える奴だと知った瞬間から、お前と付き合いたいって、一条なんてやめて俺の恋人になって欲しいって願ってた。その気持ちを必死で抑えて、真下のためにって一条との仲を応援したのに……」
「ごめん……」
「ごめんじゃない。ありがとうだよ。お前から『一条と別れた』って聞いて、さっきから俺の心臓がやばい。もしかしたら真下と付き合えるかもしれないっていう期待でずっとドキドキしてるんだ」
「塔矢……」
なぜだろう。涙が溢れそうだ。
「おびえないで。俺の気持ちが重荷か?」
そんなことあるわけない。これは嬉しくて目が潤んでしまっているだけだから。
「俺が真下のことを好きで好きで堪らないから、きっと真下を怖がらせてる……。なるべく自重する。全部ぶつけてお前を困らせないようにする。だから俺と付き合ってください。俺の恋人になってくれませんか?」
今日、一条と別れたばかりだ。その数時間後に塔矢に告白されるなんてありえない。
「もし恋人になってくれたら、お前のこと必ず大切にする。毎日会いたいとか我儘は言わないようにするし、電話もLINEもやり過ぎないようにするから」
「塔矢……」
塔矢と恋人になったら、すごく幸せそうだな。ものすごく愛されそうだ。
「真下が好き。初めてお前に会った時、電流が走るみたいな衝撃を受けたんだ。それから色んな人に出会ったし、幸せなことに俺を好きだと言ってくれた人もいた。でも全部がお前には敵わない。全然好きになんかならないんだ。本心を隠したまま付き合うことなんて俺にはできないし、俺が恋人にしたいと思うのは真下だけなんだよ」
塔矢はいつだって真っ直ぐな奴だ。今も一途に想いを真下にぶつけてくれている。
「絶対に無理だと諦めてたのに、いまそれが目の前に、手を伸ばせば届くかもしれない距離にあると知った俺の気持ちがわかるか? もう言わずにはいられない。俺の想いを伝えたい。お前が好きすぎて、お前に触れたくて仕方がなくて、さっきから身体が勝手に動き出しそうなのを必死で堪えてる」
塔矢。お前はずっとただの友人のふりをしていたのか。強い想いを抱えながら、そんなことはおくびにも出さないで。
塔矢の手は震えてる。その震えをなんとかしてあげたいと思って、塔矢の手に触れた。その瞬間、塔矢の頬に静かに涙が伝う。
「塔矢。俺をこんなに一途に想ってくれるのはきっと塔矢だけだ」
真下のために自分を犠牲にすることすら厭わない塔矢。どうしたらそんなに強くなれるんだろう。
「そんなことない。真下は優しいからきっとこれからもたくさんの人に愛されるよ。そんな真下のすぐ隣に俺もいたい。真下さえ許してくれるなら、俺を真下のそばにいさせてもらえる? 俺、全力で真下を助けるから」
バカだな塔矢は。君主に忠誠を誓うナイトみたいだな。そこまでしてくれなくてもいいのに。
でも、塔矢がすぐ隣にいてくれると安心する。塔矢だったら信じられる。すごく頼り甲斐がある。
「じゃあ、そばにいて」
真下はそっと塔矢の胸に身を委ねる。塔矢は包み込むように真下を両腕で抱き締めた。
「俺、真下の恋人としてそばにいていいの?」
心配そうに塔矢が訊ねてきた。
「うん……」
「ホントか真下?! 恋人って、恋人だぞ? その……友達じゃない。キスしたり抱き合ったりするやつだぜ?!」
「知ってるよ。そのくらい」
今だって二人抱き合ってるくせに今さら何を確認したいんだよ。
真下が更にぎゅっと塔矢に抱きつくと、塔矢は「幸せすぎる……」と抱き締め返してきた。
「俺、真下のことこれ以上ないくらいに好きだったのに、恋人になってくれてもっと好きになった」
おい。恋人同士になる前からあんなに尽くしてくれてたのに、これ以上はないだろ。
「真下、好き」
塔矢は真下を離さない。
「あー、本当好き。真下さえいてくれれば他に何も要らない」
塔矢は足まで絡めてきた。
「好きだ。大好き、真下」
もうわかったから……。
塔矢。
ほんと一途だな……。
——完。
「絶対だなんて……。塔矢はオーディションを勝ち抜いて、主演の座を手に入れたんだぞ? それ以上難しいものなんてあるか?」
一縷の可能性を信じて、何度も何度もチャレンジすることができる塔矢が、絶対無理だと端から諦めることなんてことあるのか。
「ある。あったんだ。どんなに欲しくても触れた途端に壊れちゃうから、失わないようにずっと触らないギリギリまで近づいて見つめてたんだ」
「塔矢。何の話をしてるんだ?」
表現がまどろっこしいな。どっかの映画の台詞か?
「真下。お前のことだよ」
真下は驚いて塔矢を見る。塔矢は真剣なまなざしでこちらを見つめ返してきた。
「俺はずっと真下のことが好きだったんだ。でも、そんなこと男のお前にはとてもじゃないけど言えなくて黙ってた。真下と付き合うとか、真下に告白することすら絶対に叶わないと思ってた」
——嘘だろ、塔矢が、俺のことを……?!
「早く忘れよう、誰か別の人を好きにならなきゃって頑張ったけど無理で、最近は開き直って密かに好きって思い続けたまま、一生誰にも打ち明けることはなくてもそれでもいいと思ってたんだ」
塔矢は密かに真下のことを想ってくれていたのか……?
「俺はお前を好きでいられるだけで、この世界のどこかにお前がいてくれると思うだけで幸せだったから」
塔矢とは疎遠になっていた時期もあったし、その間、塔矢は俳優として華々しい世界に飛び込んでいった。ただの大学の友人のひとりでしかなかった真下のことなど記憶の彼方に飛んでいってもおかしくないのに。
「でもさ、俺はやっぱり欲張りで堪え性がない。真下が男と付き合える奴だと知った瞬間から、お前と付き合いたいって、一条なんてやめて俺の恋人になって欲しいって願ってた。その気持ちを必死で抑えて、真下のためにって一条との仲を応援したのに……」
「ごめん……」
「ごめんじゃない。ありがとうだよ。お前から『一条と別れた』って聞いて、さっきから俺の心臓がやばい。もしかしたら真下と付き合えるかもしれないっていう期待でずっとドキドキしてるんだ」
「塔矢……」
なぜだろう。涙が溢れそうだ。
「おびえないで。俺の気持ちが重荷か?」
そんなことあるわけない。これは嬉しくて目が潤んでしまっているだけだから。
「俺が真下のことを好きで好きで堪らないから、きっと真下を怖がらせてる……。なるべく自重する。全部ぶつけてお前を困らせないようにする。だから俺と付き合ってください。俺の恋人になってくれませんか?」
今日、一条と別れたばかりだ。その数時間後に塔矢に告白されるなんてありえない。
「もし恋人になってくれたら、お前のこと必ず大切にする。毎日会いたいとか我儘は言わないようにするし、電話もLINEもやり過ぎないようにするから」
「塔矢……」
塔矢と恋人になったら、すごく幸せそうだな。ものすごく愛されそうだ。
「真下が好き。初めてお前に会った時、電流が走るみたいな衝撃を受けたんだ。それから色んな人に出会ったし、幸せなことに俺を好きだと言ってくれた人もいた。でも全部がお前には敵わない。全然好きになんかならないんだ。本心を隠したまま付き合うことなんて俺にはできないし、俺が恋人にしたいと思うのは真下だけなんだよ」
塔矢はいつだって真っ直ぐな奴だ。今も一途に想いを真下にぶつけてくれている。
「絶対に無理だと諦めてたのに、いまそれが目の前に、手を伸ばせば届くかもしれない距離にあると知った俺の気持ちがわかるか? もう言わずにはいられない。俺の想いを伝えたい。お前が好きすぎて、お前に触れたくて仕方がなくて、さっきから身体が勝手に動き出しそうなのを必死で堪えてる」
塔矢。お前はずっとただの友人のふりをしていたのか。強い想いを抱えながら、そんなことはおくびにも出さないで。
塔矢の手は震えてる。その震えをなんとかしてあげたいと思って、塔矢の手に触れた。その瞬間、塔矢の頬に静かに涙が伝う。
「塔矢。俺をこんなに一途に想ってくれるのはきっと塔矢だけだ」
真下のために自分を犠牲にすることすら厭わない塔矢。どうしたらそんなに強くなれるんだろう。
「そんなことない。真下は優しいからきっとこれからもたくさんの人に愛されるよ。そんな真下のすぐ隣に俺もいたい。真下さえ許してくれるなら、俺を真下のそばにいさせてもらえる? 俺、全力で真下を助けるから」
バカだな塔矢は。君主に忠誠を誓うナイトみたいだな。そこまでしてくれなくてもいいのに。
でも、塔矢がすぐ隣にいてくれると安心する。塔矢だったら信じられる。すごく頼り甲斐がある。
「じゃあ、そばにいて」
真下はそっと塔矢の胸に身を委ねる。塔矢は包み込むように真下を両腕で抱き締めた。
「俺、真下の恋人としてそばにいていいの?」
心配そうに塔矢が訊ねてきた。
「うん……」
「ホントか真下?! 恋人って、恋人だぞ? その……友達じゃない。キスしたり抱き合ったりするやつだぜ?!」
「知ってるよ。そのくらい」
今だって二人抱き合ってるくせに今さら何を確認したいんだよ。
真下が更にぎゅっと塔矢に抱きつくと、塔矢は「幸せすぎる……」と抱き締め返してきた。
「俺、真下のことこれ以上ないくらいに好きだったのに、恋人になってくれてもっと好きになった」
おい。恋人同士になる前からあんなに尽くしてくれてたのに、これ以上はないだろ。
「真下、好き」
塔矢は真下を離さない。
「あー、本当好き。真下さえいてくれれば他に何も要らない」
塔矢は足まで絡めてきた。
「好きだ。大好き、真下」
もうわかったから……。
塔矢。
ほんと一途だな……。
——完。
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