3 / 5
3.進みたい
しおりを挟む
唯香たちと別れたあと、高月の家に遊びに来た。高月の母親とのお邪魔しますの挨拶もそこそこに、二人が今いるのは高月の部屋だ。
映画が好きな演劇部所属の高月らしく、部屋には映画グッズがあふれている。部屋の壁の一つがブルーのアクセントウォールとなっており、そこには高月の1番好きな映画のポスターが飾られていた。
「お前ってホント映画が好きなんだな」
高月の部屋を見た感想を呟く。
「ああ。将来映画関係の仕事に就きたいって思ってる」
映画の話をする時の高月は楽しそうだ。
そこからお互いの好きなものの話をしたり、お菓子を食べたり、まるで友人同士と変わらず過ごしている。
それだって充分楽しい。
楽しいのだけれど……。
高月の好きな映画だと聞いて、さっきから二人で並んで映画を見ている。それが恋愛映画で、映画の中の二人がキスをし出すものだから、つい横にいる高月の顔を見てしまった。
『俺たちも、そろそろキス、しよっか』
そんなことを高月に言われるという妄想が宮咲の脳内を占領するのだが、現実の高月は目が合ったのに「あ、カルピス飲む?」と、まるでムードがない。
——高月は、そういうことに興味ないのかな……。
結局、高月との関係に進展は何もなかった。
◆◆◆
それから二ヶ月ほどが過ぎ、その間も高月とのデートは重ねていたが、相変わらず高月は宮咲に手を出してくることはなく、いつも宮咲の妄想が不毛となるだけの関係性だった。
今日も、5限まで授業を受けたあと、高月に家に「遊びに来ないか」と誘われて行くつもりでいるが、こんな調子ではこの前みたいに何もないだろう。
それどころか高月は、付き合う以前よりも宮咲と距離を置いているようにすら感じる。付き合ったはいいものの、このままフェードアウトしていく恋愛だったらどうしようと焦りを感じてきた。
——せっかく高月と付き合えたのに。このまま何もなく終わるのかな……。
高月のことばかり考えて講義に全く集中できていない自分に気づいて呆れてしまう。
「おい、宮咲! 俺、インスタですげぇの見つけちまったんだよっ」
大学での講義が終わり、すぐに宮咲のもとに飛んできたのは森田だ。
「なんだよ」
「これこれっ」
どうせくだらないんだろうと思っていたのに、森田が見せてきた写真を見て宮咲は目を見張った。
「これ、高月の彼女じゃね?」
唯香のインスタに載せられていた写真は、高月と唯香のツーショット。ツーショットと言っても高月は横向きだが、それだけでも高月とわかるし、かなり特徴がある作りの白のカットソーは高月がよく着ている服だ。
写真の背景には、ブルーのアクセントウォールに飾られた映画のポスターが映り込んでいることから、高月の部屋だと宮咲にはわかる。
写真には『結構飲みましたぁ』の文字が添えられ、『#センスいい部屋』『#朝まで飲み』『#お泊り』などなどのハッシュタグ。
なんだこれ。
どういうことだ?
高月は、昨日は同窓会だと言っていた。でも店の営業時間の関係で21時で終わると言っていた。その後、唯香を高月の家に呼んだのか。さらに唯香は、そのまま高月の部屋に泊まったのだろうか。
待てよ待て。俺だってそんなのしたことないのに……。
「な? 高月は隠してるけど、これ彼女さんがインスタで暴露しちゃってる系だろ?」
「まさか……」
信じたくない。
高月と唯香が?!
なんで唯香が……。あいつだけは嫌いだ。
「唯香って子、いつも高月のインスタにコメントしてるしさ、高月と仲いいのかなって思ってたんだ。見たら高月と同じ高校みたいだったぜ? 俺怪しいと思ってたんだよ、あいつちょっと前からなーんか浮かれてたんだよな。俺の誘いを断ることも多くなったし……。多分その頃から彼女と付き合ってたんじゃね?」
森田に、高月が隠してる恋人は唯香じゃなくて俺なんだと言いたいが、そんなことはできない。
それに。
自分が本当に高月の恋人なのか自信がなくなってきた……。
宮咲は、高月に告白はされたものの、やっていることはただの友達と同じことだけ。高月の手に触れたことはあるが、ちゃんと手を繋いだことすらない。
事実だけで言えば、高月の腕に抱きついたり、高月の部屋に泊まったりしている唯香のほうがよっぽど恋人らしいのではないか。
——高月は、俺のこと、今でも好きでいてくれてるのかな……。もう俺に愛想尽かしたのかな……。
映画が好きな演劇部所属の高月らしく、部屋には映画グッズがあふれている。部屋の壁の一つがブルーのアクセントウォールとなっており、そこには高月の1番好きな映画のポスターが飾られていた。
「お前ってホント映画が好きなんだな」
高月の部屋を見た感想を呟く。
「ああ。将来映画関係の仕事に就きたいって思ってる」
映画の話をする時の高月は楽しそうだ。
そこからお互いの好きなものの話をしたり、お菓子を食べたり、まるで友人同士と変わらず過ごしている。
それだって充分楽しい。
楽しいのだけれど……。
高月の好きな映画だと聞いて、さっきから二人で並んで映画を見ている。それが恋愛映画で、映画の中の二人がキスをし出すものだから、つい横にいる高月の顔を見てしまった。
『俺たちも、そろそろキス、しよっか』
そんなことを高月に言われるという妄想が宮咲の脳内を占領するのだが、現実の高月は目が合ったのに「あ、カルピス飲む?」と、まるでムードがない。
——高月は、そういうことに興味ないのかな……。
結局、高月との関係に進展は何もなかった。
◆◆◆
それから二ヶ月ほどが過ぎ、その間も高月とのデートは重ねていたが、相変わらず高月は宮咲に手を出してくることはなく、いつも宮咲の妄想が不毛となるだけの関係性だった。
今日も、5限まで授業を受けたあと、高月に家に「遊びに来ないか」と誘われて行くつもりでいるが、こんな調子ではこの前みたいに何もないだろう。
それどころか高月は、付き合う以前よりも宮咲と距離を置いているようにすら感じる。付き合ったはいいものの、このままフェードアウトしていく恋愛だったらどうしようと焦りを感じてきた。
——せっかく高月と付き合えたのに。このまま何もなく終わるのかな……。
高月のことばかり考えて講義に全く集中できていない自分に気づいて呆れてしまう。
「おい、宮咲! 俺、インスタですげぇの見つけちまったんだよっ」
大学での講義が終わり、すぐに宮咲のもとに飛んできたのは森田だ。
「なんだよ」
「これこれっ」
どうせくだらないんだろうと思っていたのに、森田が見せてきた写真を見て宮咲は目を見張った。
「これ、高月の彼女じゃね?」
唯香のインスタに載せられていた写真は、高月と唯香のツーショット。ツーショットと言っても高月は横向きだが、それだけでも高月とわかるし、かなり特徴がある作りの白のカットソーは高月がよく着ている服だ。
写真の背景には、ブルーのアクセントウォールに飾られた映画のポスターが映り込んでいることから、高月の部屋だと宮咲にはわかる。
写真には『結構飲みましたぁ』の文字が添えられ、『#センスいい部屋』『#朝まで飲み』『#お泊り』などなどのハッシュタグ。
なんだこれ。
どういうことだ?
高月は、昨日は同窓会だと言っていた。でも店の営業時間の関係で21時で終わると言っていた。その後、唯香を高月の家に呼んだのか。さらに唯香は、そのまま高月の部屋に泊まったのだろうか。
待てよ待て。俺だってそんなのしたことないのに……。
「な? 高月は隠してるけど、これ彼女さんがインスタで暴露しちゃってる系だろ?」
「まさか……」
信じたくない。
高月と唯香が?!
なんで唯香が……。あいつだけは嫌いだ。
「唯香って子、いつも高月のインスタにコメントしてるしさ、高月と仲いいのかなって思ってたんだ。見たら高月と同じ高校みたいだったぜ? 俺怪しいと思ってたんだよ、あいつちょっと前からなーんか浮かれてたんだよな。俺の誘いを断ることも多くなったし……。多分その頃から彼女と付き合ってたんじゃね?」
森田に、高月が隠してる恋人は唯香じゃなくて俺なんだと言いたいが、そんなことはできない。
それに。
自分が本当に高月の恋人なのか自信がなくなってきた……。
宮咲は、高月に告白はされたものの、やっていることはただの友達と同じことだけ。高月の手に触れたことはあるが、ちゃんと手を繋いだことすらない。
事実だけで言えば、高月の腕に抱きついたり、高月の部屋に泊まったりしている唯香のほうがよっぽど恋人らしいのではないか。
——高月は、俺のこと、今でも好きでいてくれてるのかな……。もう俺に愛想尽かしたのかな……。
109
あなたにおすすめの小説
好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」
十二年付き合った彼氏を人気清純派アイドルに盗られて絶望してたら、幼馴染のポンコツ御曹司に溺愛されたので、奴らを見返してやりたいと思います
塔原 槇
BL
会社員、兎山俊太郎(とやま しゅんたろう)はある日、「やっぱり女の子が好きだわ」と言われ別れを切り出される。彼氏の売れないバンドマン、熊井雄介(くまい ゆうすけ)は人気上昇中の清純派アイドル、桃澤久留美(ももざわ くるみ)と付き合うのだと言う。ショックの中で俊太郎が出社すると、幼馴染の有栖川麗音(ありすがわ れおん)が中途採用で入社してきて……?
突然現れたアイドルを家に匿うことになりました
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
「俺を匿ってくれ」と平凡な日向の前に突然現れた人気アイドル凪沢優貴。そこから凪沢と二人で日向のマンションに暮らすことになる。凪沢は日向に好意を抱いているようで——。
凪沢優貴(20)人気アイドル。
日向影虎(20)平凡。工場作業員。
高埜(21)日向の同僚。
久遠(22)凪沢主演の映画の共演者。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話
雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。
塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。
真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。
一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。
告白ゲームの攻略対象にされたので面倒くさい奴になって嫌われることにした
雨宮里玖
BL
《あらすじ》
昼休みに乃木は、イケメン三人の話に聞き耳を立てていた。そこで「それぞれが最初にぶつかった奴を口説いて告白する。それで一番早く告白オッケーもらえた奴が勝ち」という告白ゲームをする話を聞いた。
その直後、乃木は三人のうちで一番のモテ男・早坂とぶつかってしまった。
その日の放課後から早坂は乃木にぐいぐい近づいてきて——。
早坂(18)モッテモテのイケメン帰国子女。勉強運動なんでもできる。物静か。
乃木(18)普通の高校三年生。
波田野(17)早坂の友人。
蓑島(17)早坂の友人。
石井(18)乃木の友人。
ギャルゲー主人公に狙われてます
一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
多分前世から続いているふたりの追いかけっこ
雨宮里玖
BL
執着ヤバめの美形攻め×絆されノンケ受け
《あらすじ》
高校に入って初日から桐野がやたらと蒼井に迫ってくる。うわ、こいつヤバい奴だ。関わってはいけないと蒼井は逃げる——。
桐野柊(17)高校三年生。風紀委員。芸能人。
蒼井(15)高校一年生。あだ名『アオ』。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる