好きだから傍に居たい

麻沙綺

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ブラック…亜耶

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 授業が終わり、部室に向かう。


 部室では、先輩たちが遥さんの事で盛り上がっていた。
「高橋先生。メチャカッコよかったよね。」
「うんうん。」
「彼女とか居るのかなぁ。」
 その言葉に、ドキッとするも平常心を保つ。
 "それ私です" とはいえない、チキンです。
「さぁ。あんだけカッコいいんだから、居るんじゃないの?」
「ねぇ、鞠山さん。あなた1Eだったよね? 何か知らない。」
 先輩に話を振られ、ドキドキと心拍数が上がる。
 隠しててもその内わかることだし、朝の自己紹介の時の事を伝えれば大丈夫だろう。
「最近、結婚したそうですよ。」
 そう言いながら、平常心平常心と胸の内で唱える。
 浅く深呼吸する。
 嘘の報告はしてないよね。相手を言ってないだけで……。
「そうなんだ。ちょっと残念。結構好みだったから……。」
 先輩が落胆したように言う。
 好み……。
 嘘、ううん。

 あんだけカッコよくて、大人の魅力を醸し出してるんだもの、誰もが虜になるのって、時間の問題なんだろう。

 何か、嫌だなぁ……。
 遥さんは、私のなのに……。
 此処に居たら、もっと嫌な思いになっちゃいそうで。
「先輩。私先に行きますね。」
 私はそれだけ告げて、部室を後にした。


 グランドに出て、雑用をこなしてると。
「亜耶。高橋先生あの人から伝言。」
 悠磨くんが近付いてきて言う。
 悠磨くんが言うあの人って、遥さんの事?
 そう思いながら。
「"部活が終わったら、職員用駐車場で待ってて" だって。」
 悠磨君の言葉を聞き、やっぱりと思った。
「悠磨くん、ありがと。」
 何で、悠磨くんに伝言を託したのかなぁ?
 直接言うタイミング、あったと思うけど……。
 何て考えていたら。
「あの人と結婚したんだって?」
 悠磨くんが、周りを気にしながら小声で聞いてきた。
「う、うん。色々と事情があってね。元々婚約することになってたから、その期間がなくなっただけ。」
 私は、悠磨くんの目を見て小声で答えた。
「そっか……。おめでとう。今は、それしか言えない。」
 悠磨くんの複雑そうな顔を見ると、胸が痛くなる。
 そんな顔をさせるつもりなかったんだけど……。
 私のせいだよね、ごめんね。
 これは、声に出して言えない。そんな事言ったら、優しい悠磨くんの事だから余計に辛い思いを抱くだろうと予測できるから……。
「ありがとう。それだけで充分だよ。」
 私は笑みを浮かべて、そう告げた。
「亜耶ちゃん。結婚おめでとう。」
 突然の言葉に驚き、振り返ったら透くんだった。
「あ、ありがとう。って言うか、透くん。もう少しだけ声をおさえてくれるかな。」
 私は、周りを気にしながら言う。
「えっ、あっごめんごめん。俺、本当に考えなしだよなぁ。亜耶ちゃんに迷惑ばかりかけて、本当にごめん。」
 透くんが、頭を下げてきた。
「うん。もう少し、考えてから行動しようか。その方が、湯川くんの為になるしね。」
 私は、湯川くんを諭すように言った。



 部活も終わり、急いで着替えて遥さんが待ってるだろう、職員用の駐車場に回りに警戒しながら足早に向かう。

 えっと、遥さんの車は……。
 駐車場内をキョロキョロ見渡す。
 あ、あった。

 私は、その車に恐る恐る近付く。遥さんの姿は未だ無くて、車に凭れるようにして待っていた。
「悪い亜耶。待ったか?」
 遥さんがそう言って近付いてきた。
「ううん。私も今来たところだよ。」
 そう答えると遥さんにムギュッて私から抱きついた。
 何で、こんな事したのか自分でもよくわかってなくて、それでも遥さんの温もりに触れて安心してる自分が居るんだって気付いた。
「どうしたんだ、亜耶?」
 頭上から、遥さんの困った声が聞こえてくる。
 私から抱きついたからだって、直ぐにわかったけどね。
「ん。寂しかったから?」
「何で、疑問符?」
 そう言いながらクスクス笑ってる遥さん。
 そんな時に。
「高橋先生。こんな所で、生徒と何イチャついてるんですか?」
 と声がかかった。
 その声の方を見れば、上級生の女性徒が三人こっちを見ている。
 その目は、私を睨み付けている。
 理事長、先生方公認だからって、油断してた。
 私達の事知ってるの一部の生徒だけで、一般の生徒には知られてないってこと忘れてた。
 私は、遥さんを見る。
 遥さんは、如何にも面倒臭そうな顔をする。
「遥さん?」
 私が声をかければ。
「ごめん、亜耶。この子達にさっき声をかけられて、断ったんだけどな。跡をつけられたみたいだ。」
 罰が悪そうに言う。
 そうなんだ。
 やっぱり、遥さんは人気者なんだね。
 ちょっとだけ、妬いちゃうな。
「生徒との恋愛は、ご法度ですよ。何で、その子と一緒に居るんですか?」
「その子よりも、私達の事を送ってて下さいよ。」
 そう言いながら近付いてくる彼女達。
 そんな事言って、大丈夫なのかな?
「なぁ、亜耶。こいつらウザいから、始末しても良い?」
 遥さんが、何時もより低い声で彼女達に聞こえないように言う。
 顔を見れば、無表情だ。
 私が知らない、始めて見る遥さんの顔(これをお兄ちゃんに見せたら "何時もの遥だ" って言いそう)。
 私が返事をしないから、肯定とみなしたらしく遥さんが。
「お前ら、何が言いたい訳? 亜耶は、俺の嫁だし、理事長・先生方・教育委員からも許可を得ている。俺が、お前らを大事に出来る訳無いだろ。あぁ、俺達の事全校生徒に伝えてもいい。どんな批判受けても平気だから。まぁ、それで学校を辞める事になっても仕事はあるしな」
 そう言いながら、ニッコリと口許をあげてるが、目だけは鋭利な刃物のように彼女達を睨み付けている。
 これが、ブラックな遥さん?
 始めて見た。
 何て、一人感激してると。
「さっきから言ってる亜耶って、そこに居る一年の鞠山亜耶の事? そんなのの何処がいいんだか。まだ私達の方が可愛いって、先生を慰めてあげられるし……。」
 何て言葉まで……。
 あ~あ、自分で可愛いって言っちゃってるところで、アウトだと思うんですけど……。
 それにこの人達、全然わかってない。
 一番言ってはならないキーワードを次から次へと並べ立ててるってことに……。
 遥さんの顔が、さっきよりも険しくなってる事に気付いてないの?
「お前ら。さっきから言いたい放題だな。俺にとったら、お前らなんか眼中に無いんだよ! 頭が足りない奴なんか、お呼びじゃないんだ! とっとと失せろよ。厚かましいにも程がある。お前ら三人の頭ですら、亜耶の足元にも及ばないんだろ。さっさと帰って、勉強でもしろ。」
 あ~あ。
 遥さんが、私の目の前で怒鳴るなんて、よっぽどの事だよ。
 自分の事を貶されてるのに他人事のように見てる私。
「ちょっ、遥先生。」
 その呼び方、やめてよね。私以外して欲しくないんですけど……。
 それに遥さんも許可してない。
「お前らに "遥" なんて呼ばれたくないです! 普通に呼んでください!」
 あっ、言葉使いが……。
 暴走し出してる。
 そろそろ止めないと不味いよね。
「もう、いい加減にして、帰ってください。これ以上遅くなったら親御さんが心配しますよ。」
 助け船を出したのに。
「だから、先生が送ってくれたら直ぐだと思うけど。」
 退く気無いみたいで、ただ遥さんに送ってもらいたいだけでは無いのも感じる。
「送ってあげるつもりありません。俺たち、この後待ち合わせをしてるので、そんな余裕無いんです!」
 突然遥さんの口から出てきた言葉に、私が驚いた。
 朝、そんな事言ってなかったよね。
 何時、出来たんだろう?
「しかも、既に遅刻なんです。相手方にあなた達が頭を下げてくれるのですか? それで許してもらえると思ってるのですか? 社会に出たら時間厳守が常識なんですよ。それをあなた達の足止めのせいで、俺たちが平謝りする事になるんです。当然、遅れた理由なんか言ってもそこでダメになる事だってあるんです。それもわからないんですか? 俺達が、どれだけ迷惑を被ってるのかもわからないあなた達に、俺が靡くことなんて絶対に無い! それから、鞠山財閥のお嬢様に楯突いたんだから、この先の就職良いとこに就くことなんか無いと思っておきなさい」
 遥さん、最後脅してますね。
 まぁ、私の苗字(今は高橋だけど)を聞けばある程度予測出来ると思うんですけどね(社会に疎くない人は)。
 三人の顔色が、面白いように変わっていく。
 それって、私のせいですか?
 あっ、私のせいですね。まぁ、後を継ぐのは私ではないけどね。
「亜耶、乗って。マジでヤバイから。」
 あっ、口調戻ってるし顔付きも心なしか、焦ってるって感じですね。
 これで、大丈夫かな。
 何がって、遥さんの事ですよ。

「亜耶。早く。」
「あっ、はい。」
 慌てて助手席に座る。
 遥さんがドアを閉めてくれる。
 遥さんも運転席に回り、乗るとエンジンをかけて、車を走らせた。

 あんなに切れたの始めてみた。
 手を出さなかったのは、多分生徒だからだと思う。
 有段者の遥さんが、手を出したら学校問題になっちゃうもんね。

「……遥さん、ありがとう。」
 私は、小声でそう呟いた。
















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