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聞きたかった事…遥
しおりを挟む「雅斗、助かった。」
俺は、雅斗にお礼を言う。
あのままだとまた要らぬことを言ってたかもしれない。
「あぁ、別に構わない。お前こそ、大変だったな。」
雅斗が何食わぬ顔で言う。
しかし、亜耶の事となると容赦ないな。
まぁ、人の事言えないが……。
「何で、わかったんだ?」
俺は、何気に聞いてみた。
「ん? 亜耶の事必要以上に見てたし、しかも顰めっ面だったからな。」
雅斗の観察眼恐るべし。
「で、何て言われてたんだ?」
雅斗が、逆に聞き返してきた。
「俺と亜耶では不釣り合いだ。年相応の自分の娘と結婚しろってさ。」
俺は、いたって普通に答えたんだが、亜耶の落ち込み様は、半端ない。
「ふーん。それで、亜耶の家柄を知って謝ることもなく立ち去るのは、大人としてどうなんだ?」
不機嫌な雅斗の声。
「それなぁ。本当に参るよ。姉さんに言って、降格させてもらう。」
俺の言葉に雅斗も満更じゃなさそうだ。
「そうしてくれ。理由も説明しておけよ。」
「そこは、抜かりなくしておく。後で突っ込まれて説明できなかったら困るしな。」
本当に勘弁して欲しい。
大の大人が、自分の非を認めることもなく逃げるとは……。
雅斗の妹だと知ったとたんのあの態度は、頂けない。
何て思っていれば。
「そのブラック遥のキーワード、何言われた時だった?」
雅斗が、亜耶に質問してる。
その悪そうな笑顔、本当に止めて欲しい。
その言葉に亜耶が上目遣いで、口許に右の人差し指を持っていき一生懸命思い出そうとしてる。
別に今思い出さなくていいんだけど……。
「んっとね。主に私に関しての言葉かな。 "そんな娘" とか "あの娘よりも癒してあげられる" とか "可愛くない"」
そのワード、俺にとってはタブーでしかないんだよ。
自分の事は、別に何言われても構わないんだが、亜耶の事となるとなぁ。
「ぶっは……。遥、何それ。亜耶の文句に対して切れるとか、お前、どんだけ亜耶に一途なんだよ。」
雅斗が、吹き出して笑う。
「悪いかよ。俺は、亜耶が居ればいいんだよ。」
俺は、ムッとしながらも亜耶を抱き寄せた。
あー、落ち着く。
亜耶は、されるがまま動く気配がない。
「はいはい。全く仕方の無い奴だなぁ。そんなんで、仕事できるのかよ。」
雅斗が呆れた顔をして俺を見る。
「ん? まぁ、出来るって言えるのかな。殆んど、古株の先生だし……。そういえば、変な話し聞いたんだけどさぁ。亜耶が入院してたって本当?」
その言葉を出したとたん、俺の腕の中で固まった。
おっ、これは事実だな。
どっちが話すんだ。
って、亜耶は俺の腕の中で固まってるから、雅斗か。
「あぁ、本当だ。夏休み前のレクでな、体調崩してたのに参加して、悪化させたんだ。責任感の強い亜耶だから、言えなかったんだろ。」
ほぉ~。
今まで隠せていたことが、不思議だ。
確かに、体調崩しても迷惑かけたくないって言って、参加するのが亜耶だけど。
俺は、もう一つの方が気になるんだが。
「何で、その時に言ってくれなかったんだよ。」
俺は、雅斗を睨んだ。
こいつなら、直ぐに俺に連絡つけれるのに何で言わないんだよ。
「言ったってしょうがないだろう? お前、どっちにしても帰ってこれなかったんだから。」
雅斗が睨み返してきた。
そうかもしれんが、亜耶に関しての事は、知っておきたかったんだよ。
「だけど、それだけじゃないんだろ? 亜耶が、突き落とされたって聞いたぞ。」
俺は更に言葉を続けた。
その言葉に雅斗が驚いた顔をする。
突き落とした犯人は、わかってるんだろうな?
「どうして、それを……。」
抱き締めている亜耶の口から言葉が、漏れ聞こえてくる。
「古株の先生が……。って言うか、口を滑らせたのは、亜耶の担任で、それから話しが膨らんで、亜耶がプールに突き落とされたって話しが出たんだ。」
職員室で耳にしたことを伝えた。
「……はぁ。そっか。聞いてしまったのなら仕方がない。突き落とした生徒にもきちんと謝罪してもらってるし、何せ、亜耶が大事にしたがらないからな。」
雅斗が、諦めたと顔に出して説明する。それに同意するように亜耶が頷いた。
二人が、納得いってるのなら、何も言えない。
「そうか……。ならないいけどさぁ、何か、俺だけ知らないって言うのやだからな」
この言い方、餓鬼っぽいよな。
だけど、亜耶の事は全て知っておきたいと思うのは、いけないことなのか?
隠し事されるの好きじゃないし、況してや俺達夫婦なんだぞ。
何て、考えていたら、亜耶がクスクス笑ってる。
「亜耶が笑う所じゃないだろ。」
俺は、頬を膨らます。
「ごめんなさい。だけど、遥さんが可愛いから……。」
か、可愛いって……。
俺がか?
初めて言われたかも……。
って、感激してる場合じゃない(一人突っ込みモード)。
可愛いって、大人の男に使う言葉じゃないと思うぞ亜耶。
「は、遥が、可愛いって……。亜耶、お前の目、どうにかなったんじゃないのか?」
本日二度目の吹き笑いをありがとう、雅斗。
そう言いながらも心配そうな顔をして亜耶を見てる。
雅斗の言う通りだと思う。内心そう思った。
「まぁいいか。遥の珍しい顔を見れたし……。」
雅斗が苦笑しながら言う。
珍しい顔?
俺今一体どんな顔してるんだ?
エレベーター内に在る、鏡を覗き込む。
何?
気が付かない内に顔が真っ赤に……。
うわ~、やらかした。
普段、ここまで赤く(澄ましているから)なったこと無い。
「はっ……、ちょ、雅斗。この事お前の嫁には言うなよ。絶対、からかってくるんだから……。」
俺は、雅斗に釘を指した。
あたふたしてる俺を見ながら。
「亜耶。やっぱお前じゃないとダメなんだな。そんな自然体の遥は見れない。」
雅斗が穏やかに笑ってる。
「亜耶以外の奴に気が許せるものか。」
その言葉を口にしたら、亜耶が俺の背に腕を廻して、抱き付いてきた。
何、何で、こんなに可愛いんだよ。
「亜耶。それ以上俺を煽るのは、やめてくれ。」
俺は、亜耶から視線を逸らした。
俺に抱きつきながら、上目使いで見てくるんだ。
「亜耶に振り回されてる遥って、滅多に見れないな。」
雅斗は、いかにも楽しそうな笑みを浮かべた。
こいつ、ホント亜耶の兄じゃなかったら、殴ってたかも……。
いや、その前に親友やめてるか。
話してる内に展望レストランがある階に着。
「亜耶、降りて。」
俺は、亜耶の背に手をやりエスコートする。
雅斗は、俺達の前を歩いて行く。
直に亜耶に触れているせいか、何時も以上に緊張しているのがわかる。
「亜耶。緊張してる? 大丈夫だよ。俺も居るし、安心しな。」
そう言って、頭をポンポンと軽く叩く。
「まぁ、無理も無いだろう。何かあれば、俺もフォローするからな。」
雅斗が振り向き様に言う。
「う、うん」
ぎこちない返事。
そうとう緊張してるな。
どうにかしてやりたいんだが……。
その時ヒラメイタ言葉が。
「亜耶。愛してるよ。」
だったんだ。
これで、少しは緊張が解れただろう。
さっきとは違い、自然体になってるから……。
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