好きだから傍に居たい

麻沙綺

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脅し…遥

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 学校に付き、職員室に入ると。
「高橋先生、おはようございます。今日、時間ありますか?」
 と声がかかった。
 振り向けば、奈津先生が笑みを浮かべてこちらを伺っている。
 挨拶と同時にお誘いって、可笑しくないか?
「今日も無理ですね。ちなみに、明日も明後日も、ずっと空いてませんよ。」
 俺は、戸惑いもなくそう答えれば。
「そうですか……。」
 奈津先生が、残念そうな顔をして言う。
 誰が、あんたの誘いに乗るかよ。

 それにしても、昨日の事問題になってる風でもないなぁ。
 アイツラ、言いふらすのを諦めたか?
 そう思いながら、午前の授業が終わり職員室で、亜耶の手作り弁当を食べようと広げようとしたら。
「高橋先生。亜耶ちゃんが……。鞠山さんが上級生の三人に呼び出された」
 龍哉が、職員室に飛び込んできてそう言う。
「何!」
 俺は、慌ててスマホで雅斗を呼び出した。
『おう、遥どうした? っていうか、今近くに居るんだが……。』
 呑気な雅斗の声。
 雅斗こいつ、亜耶のピンチに敏感過ぎやしないか?
 何て思いながら。
「亜耶が、昨日の生徒に呼び出しくらった。近くに居るなら、直ぐに来てくれ。」
 俺はそれだけ言うと電話を切り、亜耶を探すため職員室を出た。


 何処だ、何処に連れ出したんだ。
 屋上、空き教室……イヤ違う考えろ。
 人目につかない場所。
 体育館裏が一番最適な場所じゃないか。
 俺は、急いでその場所に向かった。


 案の定、亜耶はそこに居た。
 俺は、校舎の物陰に潜んだ。
 呼び出したのは、昨日の三人で間違いない。
 話し声が風にのって聞こえてくる。


「昨日も遥さん、言いましたよね。全校生徒に触れ回っても構わないって。その理由も分かってないみたいですけどね。」
 亜耶の呆れた声が聞こえてくる。
 っていうか、今は学校だから "遥さん" じゃなくて、 "高橋先生" だろうが……。なんて内心突っ込んでおいた。
「何、笑ってるのよ。弱味は、こっちが握ってるのよ!」
 三人は、亜耶の笑みが気にくわないみたいだ。
「あなた達が楯突いてるって事は、私の後ろ楯にも気付いてないんでしょ? 教えてあげましょうか。私は、鞠山財閥の一人娘です。まぁ、信じられないだろうけど……。それに、遥さんはこの学校を何時でも辞められるんです。遥さんにとっても私にとっても別に何ともないんです。全て噂をばら蒔いていく貴女達に向かうだけですから。何故なら、社会的地位があり信頼されてるのですから。」
 亜耶が、冷静に対処していく。
「あなたの言葉を信じるわけないでしょ。たかが一生徒でしかないんだから、さ。」
 亜耶の言葉を信じようとしないとは、呆れるぜ。
「確かに私は一生徒に過ぎませんが、私が一言遥さんに "辞めて" って言えば、直ぐに辞めるでしょうね。元々乗り気じゃなかった仕事みたいだし、ね……。遥さん。そこに居るんでしょ?」
 何時から気付いてたんだ?
 俺は、物陰から出た。
「亜耶には、叶わないな。」
 俺は苦笑するしかなかった。
 三人は、俺の方を向いて口を開けたまま固まった。
 その姿が、滑稽で笑いを耐えるのに必死だった。
「遥さん。この人達、信じてくれないんだよ。私の言い方、難しかったのかなぁ。」
 亜耶が小首を傾げて俺に聞いてきた。
「ううん。分かりやすかったよ。ただ、この三人が理解できなかったんだろ?」
 俺は、蔑んだ。こいつらが、ここまで馬鹿だとは、思わなかった。
「俺達の噂をばら蒔いても、誰も信じないだろうなぁ。この学校、財界・政界の子息、令嬢が多く通ってる。しかも、財閥のトップである、鞠山家を敵に廻す人材なんて、居ないだろ。逆にお近づきになりたい人材は、巨万といるだろうけど……。一般生徒もバカじゃない。より良いところへ就職したいなら、そんな噂なんか信じる訳無いだろ。」
 俺は、亜耶の方に歩み寄りながら告げた。
「それに、俺達が夫婦だって触れ回っても、セレブではやっとかって思われるだけ、一般生徒だと君たちみたいに思う奴等も居るだろうが、亜耶の後ろ楯が大きいから口にしないだろうな。」
 口許に笑みを浮かべながら、三人を睨み付けていると。
「遥。呼び出すのは良いが、場所ぐらい指定しておけよ。校内中探しただろう。」
 何て、わざと息を切らせながら言う雅斗。
 嘘つけ。
 さっき来る途中だって言ったじゃんか。 
 ちょうど良い。雅斗を利用するか。
「悪いな、雅斗。やっぱりさ、雅斗に直に会った方がこいつらも信じるかもと思ってさ。」
 俺は、三人を顎で指した。
 三人は、雅斗の顔を知っていたのか、唖然とする。
 そのバカっぽさといったら、笑える。
 さっきから、そんな顔しかしてない三人。
 マトモな顔出来ないのかよ。
 少しは繕うとは思わないのかねぇ。
「お兄ちゃん、ごめんなさい。」
 亜耶が、申し訳無さげに謝り出す。
 別に亜耶が、謝る必要何処にもないのに……。
「亜耶が、謝る必要ないだろう。この三人が馬鹿な上に性格ブスなのがいけないんだろ。まぁ、三人の面が割れたし、鞠山財閥うちの系列には一切就職出来無い様にしておくよ。紹介状があってもな。」
 雅斗の鋭い睨みにたじろぐ三人。
「理不尽過ぎる!」
 声を荒げる三人に。
「当然の報いだと思うが。何せ、鞠山家の "宝" に牙を向けたんだからな。」
 どんどん追い込んでいく雅斗。
 まぁ、仕方ないだろうなぁ。
 大切な妹を傷つけられたんだし、それにブレインだもんなぁ。
「大事な姫を侮辱したとあっては、それぐらい当然の報いさ。」
 雅斗の言葉に顔を青くしている三人。
「あっ、俺の方も就職できないようにしておくわ。」
 職権濫用して悪いけど、許せるわけ無いじゃん。
 俺の大事な奥さんを虐める奴なんてさ。
 手を挙げないだけましだと思いなよ。
 俺の言葉がわかってない三人が、首を傾げる。
 本当にこいつらバカか。
 俺の事、知らないってどんだけ無知なんだよ。
 っていうか、男は顔だけって事かよ。
 まぁ、良いけどさ。
「うち、ホテル経営してる。その系列での就職も無くす事も簡単だ。」
 俺の言葉に青かった顔が、白くなった。  
 だって、これ言ったら三人は、大手企業に就職出来無いって事だろ。出来ても三流企業ぐらいか……。
「それから、理事長にもこの件は話しておくから。」
 雅斗の言葉に三人は、何も言えなくなり俯くだけだった。

 虐めすぎたか?

「わかったら、金輪際亜耶に近づくな!」
 俺がとどめを刺すと逃げるようにその場を去って行った。


「遥。一緒に理事長室に行くぞ」
 雅斗が突然言い出す。
「はっ?」
 理事長に何の用事があるんだよ?
「あの三人の名前と写真をな。」
 雅斗のニヤリ顔。
 何がしたいのか、わかったけど……。
「ん? それならもう終わった」
 俺の言葉にクスクス笑う雅斗とオタオタしてる亜耶。
 対照的な二人が俺の前に居る。
 雅斗がしたかった事はきっちりとしておいた。
 何をしたかは、ここじゃ言えないが……。
「相変わらず早いな。まぁ、理事長に挨拶だけして、仕事に戻るわ。」
 雅斗は俺の肩をポンポンと叩く。
「亜耶も教室に戻れよ。」
 亜耶に笑顔を向ける雅斗。
「うん。」
 笑顔で頷いた亜耶は、教室へと歩き出した。


「今日来たのって、あの三人の事と亜耶と俺の事を理事長に報告するためだろ。」
 俺は、横を歩く雅斗に訪ねた。
「元々、昨日遥に言われた時に親父が説明に来るつもりだったんだ。だが、時間がとれず今日から出張で来れないから、俺が今日時間を作って、理事長に説明をしに来たんだ。そのついでに昨日足止めした生徒の事を見ようかとな。」
 雅斗が苦笑する。
 まぁ、亜耶に楯突いた時点で就職しにくくなることに気付いてなかったんだからな。
「それで、近くにいたのか。でも、本当に良いタイミングで現れたな。」
 感心してる俺に。
「まぁな。しかしこんな格好で全力疾走するとは、思わなかったぞ。」
 あはは……、まぁ、そうだろうなぁ。
 スーツで、全力疾走は、無いよなぁ……。


「なぁ、俺、やっぱり教師やめた方がいいのか。」
 このままだと、他の先生方に迷惑かけてしまう。
 それに亜耶にまで危害が及ぶなら、辞めた方が良いんじゃないかって思う。
「何、珍しく弱気だな。俺は、どっちでも構わないんだ。出社してきたら、女性社員に言い寄られるのは、目に見えてるからな。今だけ、亜耶との学校での二人だけの思い出も作れるだろ。学校での亜耶を見れるのって、今だけだろが。まぁ、遥の好きにすれば良いんじゃないか。嫌でも副社長の肩書きは、付いて回るんだからな。」
 雅斗が、困ったような顔をして言う。
 まぁ、そうだよな。
 教師を辞めたら、副社長の肩書きが付くんだよな。
 それなら、亜耶と過ごせる学校での時間を楽しまないとな。
「もう少しだけ、頑張るかな。」
 ポツリと呟いた言葉に。
「それでこそ、遥だ。」
 ニッコリと笑って言う雅斗。
 なんだよそれ……。
 それで励ましてるつもりかよ。
 結局の所雅斗は、今のうちに息抜きをしておけって言いたいんだろ。
「ほら、理事長室に着いた。中に入って話すぞ。」
 雅斗に促されて、理事長室に入った。






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