好きだから傍に居たい

麻沙綺

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惚気会見…遥

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 伯父が、全校生徒を体育館に集めてくれた。
 その中に亜耶を見つけ。
「亜耶。」
 と呼び、手招きをして呼び寄せた。
 亜耶がクラスの列から離れ、ゆっくりと俺のところに来る。

「ゴメンな、亜耶。迷惑かけて。一応、噂の真相を話すから、それから後のこと決めるから……。後、雅斗とお義父さんには、伝えてあるから……。」
 小声でそう伝えた。

 伯父が、出て行った後、直ぐに雅斗に連絡した。
 雅斗やお義父さんにまで、迷惑が及ぶと考えた末だ。
 何かあった時の対応もあったからだが……。
 まぁ、その前に雅斗が何とかするだろうが、な。
 雅斗に頼るのは癪だけど、俺だけじゃ対応できないと思ったから……。
 俺の大切なお姫様を守るためなら、手段なんか選んでいられない。
 目の前に居る亜耶が、不安そうな顔で俺を見てくる。
「そんな不安そうな顔をするな。俺の大事な姫の不安は、全部取り除いてやる。」
 俺は、そう言って亜耶の顔を覗き込み、笑みを浮かべた。
 俺の事を信じて待ってて欲しいのと、安心して欲しくて……。
 すると徐々に口許が緩んでいく亜耶。
「やっと笑ったな。亜耶は、笑ってないとダメだよ。悲しい顔は、似合わない。何かあったら、俺に全て話して。全部、俺が引き受けるから。」
 気付けば、亜耶を腕に抱き締めてた。
 この娘に出会った時から想ってた。
 この娘が、俺の傍でずっと笑っていられるように全てから守ってきたんだ。
 これからも、大輪の笑顔で俺の傍に居て欲しいから、その為ならなんだってするよ。

 例え、自分がどれだけ傷付いても……。



 全校生徒が体育館に集まり、伯父が舞台上に立った。
『急遽集まってもらったのは、噂について、高橋先生が自ら話をしたいとの事だ。高橋先生』
 伯父が、マイクを通して俺を呼ぶ。
 横に居る亜耶に。
「ん……。じゃあ、行くな。亜耶は此処に居て。」
 声をかけて、不安そうな顔をしてる頭に手をポンとやってから舞台に向かった。


 亜耶にとって、いい方向に持っていかないとな。



 舞台に上がり、全校生徒を見た。
 俺が、何を話すか、興味津々って感じだな。
 亜耶に目を向ければ、相変わらず不安そうな顔をしてて、俺は笑顔を見せた。
「……噂についてだが。」
 俺はそこで言葉を区切った。
 静まり返る場内。
「その噂は、本当だ。俺と鞠山亜耶は、結婚してる。お互いが合意の上でだ。」
 俺がそう言えば、ザワザワと騒ぎだした。
「政略結婚ですよね?」
 何処からか聞こえてきた。
 政略結婚か……、他から見れば、そうかもな。
 だが。
「政略結婚ではないぞ。俺と亜耶は、愛し合ってるんだからな。」
 俺は、亜耶を見た。
 さっきまで不安そうにしてたのに、今は顔を真っ赤にさせてる。
「亜耶とは、九年前の夏に出会った。当時高二だったが、亜耶の兄の誘いで家に行った時だった。その時、まだ小学一年生だった亜耶は、無垢な笑顔の中に警戒心を抱いてた。俺、その時に思ったんだよ。 "俺と同じような境遇の子" だって。だから、 "自分が守ってやりたい" って、そう強く思った。それから、ずっと傍で見てきたんだ。」
 出会った時の亜耶を思い出した。
 誰にもなつこうとしない、子猫のようだったな。
「俺が、亜耶の婚約者に選ばれたのもその時。亜耶の後ろ楯が大きすぎて、そちらを目当てに寄ってくる人が多くて、それを阻止するためにも元会長が、俺を選んだ。俺は、その時から亜耶自身を好きだったから、戸惑いもなく受けた。」
 亜耶と出会った翌年の新年会の会場で、雅斗が会長の元に連れてってくれたことで、婚約者にしてもらえたんだよな。
 俺は、元々欲なんか無かったし、亜耶さえ居てくれればって思ってた時だし……。
「婚姻する前に互いの気持ちも確かめあった。その時、俺はこの学校の正門に居た。見てた奴も居たんじゃないか? あの日、海外研修から帰ってきて、これで、堂々と亜耶と婚約者として居られると、ホットしつつ互いの気持ちを確かめた日でもあったんだよ。」
 俺の言葉に覚えてた奴が、声をあげていた。
「それから、直ぐだったんだ。亜耶の家の事情で、俺と一緒に暮らすことが決まったのは。 "元々婚約してたんだから、いっそうの事結婚してしまえ" って、鞠山元会長…亜耶のお爺さんの一言で、結婚した。俺としては、棚ぼた…願ったり叶ったりで、物凄く嬉しかった。亜耶も、戸惑ってはいたが、嬉しそうな顔をしたんだ。俺は、九年間彼女を見てきて、ずっと傍に居て欲しいって想ってたから、もしここで反対する奴が一人でも居るなら、俺は直ぐにでも教師を辞めて元の生活に戻る。」
 俺の想いが届けばいいが。
「元の生活って?」
 そっか、こいつらは知らないか……。
「俺の本業の肩書きは、鞠山財閥の副社長だ。

 俺は、隠さずにそう告げた。
「結局、先生は辞めても裕福な暮らしができるんだ。」
 って声が上がってきた。
 嫌みなのか?
 まぁ、そう思われても仕方がない。
「そう言うがな。俺は、大学に行きながら仕事してた。バイトじゃねえぞ。家業のホテルの経営に携わってた。大学を出て、アパレル業で下積みもしてきた。鞠山財閥に引き抜かれ、副社長のサポートして研修に行き、今の地位を手に入れたんだよ。愛しい人の為になら、何でもできるだよ。」
 あの時、頑張ってたから、この結果がついてるんだ。
 楽して、この地位を手にした訳じゃない。
「俺、ずっと遥さんの事を見てきたから言えるんだけどさ。遥さんは、亜耶ちゃんの為なら何でもするよ。現にここで教師をしてるのは、亜耶ちゃんの一言だったんじゃないですか? それがなければ、此処に居ないですよね?」
 透の鋭い指摘に感謝しないとな。
「あぁ、透の言う通りだ。教師の話が来たとき、断るつもりだった。が、亜耶の嬉しそうな顔を見たら、断れなくなった。」
 俺の言葉にざわつく。
「此処に居るのは、亜耶が願ったから。本来なら、お前らに会うこともなかったんだ。」
 亜耶の願いは、できるだけ叶えてやりたいと思ってるんだ。甘いかもしれないが。

「皆に問う。本来、俺はただのサラリーマンだった。それが、ちょっとした事情で、結婚し、そして教師として妻の通う学校に来た。教師でなければ、普通の夫婦生活を送る事ができただろう事を妻が喜ぶ顔を見たくて、蕀の道に進んだ。ただの男として女として考えれば、普通の事。教師と生徒ではいけないことなのか? 良く考えて答えを出して欲しい」
 俺たちは、何も悪いことしていない。ただ偶然が重なって、教師と生徒であり、夫婦なだけ。
 それが、いけないと言うならば、俺は直ぐにでも辞めるよ。
「オレは、高橋先生がやめる必要ないと思いますよ。相思相愛なのをわかりますし、それに公私混同しなければ、学業にも影響ないのでは? 先生の教え方、とても解りやすいです。」
 そう声をあげたのは、悠磨だ。
 俺が、まさかこいつに助けられるとはな。
「私も、辞めなくていいと思います。恋愛は、自由なんですよね。ただ、偶然が重なりすぎて教師と生徒って形になっただけなんだし、それにそこまで堂々とノロケられたら、何も言えませんよ。」
 苦笑を漏らしながらそう言う小林。
 まぁ、そうかもな。
「鞠山さんの気持ちを聞いてから、判断してはダメですか?」
 そう声が上がってきた。
 確かに亜耶の気持ちも伝えることが必要か……。
「いいだろう。亜耶、おいで。」
 俺は、マイクを通して亜耶を呼び寄せる。
 さっきから涙してるのが、気になってたから、調度いい。
 亜耶が、ゆっくりと舞台に上がってきて、俺の横に立つ。
「何、泣いてるの?」
 俺は、亜耶の涙を拭う。
「嬉し泣き……。」
 小声で答え、亜耶が微笑んで、前に向き直った。

「今日、私たちのせいで、迷惑をかけてしまい申し訳ありません」
 そう言って、頭を下げた亜耶。
「私は、最初は、兄の友達ってしか見ていなかった。そして、年を重ねる毎に邪魔に思っていた時もあった。だけど、何時も頼っていたのは、両親や兄ではなく此処に居る遥さんだった。この学校を選んだ理由も遥さんが卒業した学校だったから行ってみたいって思ったのと遥さんが "いい学校だよ" って、後押しをしてくれたから。迷った時には、アドバイスくれて、困ってたら手を貸してくれた。そんな遥さんの傍に居て、支えたいって思った。今まで、ずっと支えてくれたから、今度は、私が支える番だって……。私は、何時の間にか遥さんを心から求めていた。」
 亜耶の気持ちが、痛いほど伝わってきて、心が温まる。
 亜耶が、俺の方を向き。
「遥さんを愛しく想ってます。」
 堂々と宣言した。
 あーもう、何この可愛い子は……。
 こんな全校生徒の前で、告白してくれたよ。
 俺、メチャ嬉しい。俺のだって、自分の腕の中に閉じ込めたくなるだろ。

 俺は、亜耶の肩を抱き、微笑むと亜耶も同じように微笑む。


「こんな堂々とノロケられたら、認めないわけにはいかないだろ」
 って声が、響いた。




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