好きだから傍に居たい

麻沙綺

文字の大きさ
61 / 183

突然の訪問者…亜耶

しおりを挟む


「お兄ちゃん!」
「雅斗。」
 私と遥さんの声が重なる。
 体育館内は、一気に騒がしくなった。
 突然、話題の人がこの学校に居るんだから。

 お兄ちゃんは、そんなのも構わずに、理事長に黙礼して私たちの所に来た。
 お兄ちゃんの険しい表情に、思わず息を飲んだ。


「亜耶、遥。大変なことになってるんだ。お前らだったら、察しがつくと思うが。」
 お兄ちゃんが、そう告げてきた。
 まさか……。
 まだ、ここだけだと思っていた。
 今の世の中、携帯があれば直ぐにネットに繋がる。
 それが、流れてるってこと?
 じゃあ、もしかして……。
「それを今から伝えるが、現状を理解してない奴の方が多いだろう。とにかく、俺が説明できるところまでする。その後のフォローを頼む。」
 お兄ちゃんに言われて、頷いた。


「突然で申し訳ないが、簡単な自己紹介だけする。俺は、鞠山雅斗。ここに居る亜耶の兄で、遥の親友だ。そして、鞠山財閥の時期社長でもある。」
 淡々とした声音で、自己紹介するお兄ちゃん。
 私と遥さんは、その横でただ聞いていた。

「ここから本題だ。今回の噂を広めた奴、出て来い!」
 お兄ちゃんの怒気の含んだ声。
 本気で怒ってるときの声だ。
 普段優しいお兄ちゃんだけど、悪いことした時の怒り方は、尋常じゃない。だけど、その後ちゃんと理由を聞いてくれるし、どうしてやってはいけないか理解するまでとことん説教される。
 それがあったから、今の私があるんだと思う。
 中々出てこない。

「1Eの中に居るんだろ。早く出て来い!」  怒鳴るように言うお兄ちゃん。
 すると三人の男女が出てきた。
 一人は、やんちゃ系の男子戸波くん。一人は、インテリ系の真面目な篠田くん。女子生徒は、大人しめの小野さんだった。
「お前ら、即刻自主退学しろ。そして、この学校に一切関わるな。」
 辛痛な言葉を告げるお兄ちゃん。
 それぐらいしないと、学校は守れない。
 自分達が蒔いた種は、自分達で刈らねばならない(一番の元凶は、私たちなのはわかってる。だから、それなりの処罰は受けるつもり)。
 だけど、三人はまだ何を言われてるのか理解しきれてないみたいで、ポカンとお兄ちゃんを見ている。
「お前らのせいで、この学校が無くなるかもしれないんだぞ!」
 お兄ちゃんの言葉に笑みを浮かべる。
 そんな三人にお兄ちゃんが。

「お前らが情報を漏らしたせいで、この学校に通う上流企業のご子息・ご令嬢の親たちが、こぞってこの学校を辞めさせようとしてるんだ。この意味がわかるか?」

 そう問いかけた。

 この中にどれだけの上流階級の子息令嬢が居るか、私にはわからないけど、お兄ちゃんはそれをも把握してるんだね。
「それがどうかしたんですか?」
 何の感情も籠らない声で、戸波くんが言う。
 それって、何も感じないってこと?
 何で?
 もっと、危機感もって欲しい。
 情報を漏らすってことは、自分が社会に信頼されないって事だよ。
「今居る在学生徒の4分の1が居なくなると学校自体の運営にも関わるんだ。そして、何よりも、今在校してる生徒全員の就職先が無くなると言ってもいい。」
 お兄ちゃんが、険しい顔つきで言う。
 雇う側からの意見だね。
「俺たち、そんなの知りませんよ。」
 篠田くんの無責任な発言。
 知らないって……。
「そっか。じゃあ、お前らがここの生徒の生活をみるんだな。お前ら自身も職に就くこともできないのにどうやって、この全校生徒の生活を見るんだ? 親の脛をかじるのか? 親なんて、何時いなくなるかわからないんだよ! 親を安心させるのではなく、心配させたままにするのかよ! それ、違うだろ。それにだ、お前らがした行為によって、一つの企業がなくなる可能性も社会に出たらあるんだ。自分達は、そんなつもり無かっただろうが、社会に出れば、大なり小なりあるんだ。今ならまだ間に合う。お前ら三人が、責任をとって自主退学をすれば、他の生徒には、害は最小限に押さえることができるんだ。」
 お兄ちゃんが、大袈裟に言う。
 確かに、企業内の秘密を一人が何気に話したことで、無くなる企業が出てくる場合もある。
 それを高校生に解れって言っても、無理だと思う。
 親の比護の元に居る以上は、気付かないことだと思う。
「私、退学します……。これ以上の迷惑かけられません!」
 小田さんが、スカートを両手で握りしめて俯き言う。
 彼女、悔しいだろうな。
 やりたいことがあるからって、言ってたから。
「別や辞める必要ないじゃん! こいつらが、禁断の恋(?)をしてたからって、そこまで大事になるわけないだろ。」
 私たちを顎で指しながらそう言い放つ篠田くん。
 なっ。
 確かにそうかもしれないけど、クラスだけの秘密事だとも言った筈。それを話したことは、重大だと思うよ。
 それに、お兄ちゃんの感じからして、ネットにまで流れてるんだろう。って推測できる。
 そこまで流出してるってことは、この学校に居る以上、就職が難しくなるってことだ。
 全校生徒(一部の生徒は除外)が職に就けないってことになる。
 そんな事だけど、大事になりすぎて誰かが責任をとらないと示しがつかない。
 その責任は、無いって言ってるんだよね(私が悪いのは解ってるので、その分の償いはしますよ)。
「ほう、なら言うが。お前らが責任もとらず残るなら、4分の1の生徒が居なくなり、充実している整備もなくなる。就職も出来ない。後に残るのは、ホームレスにでもなるのか? あの時、ああしてればよかったて、後悔するだけの毎日を送るのかよ!」
 お兄ちゃんの言葉が、胸に突き刺さる。
 私のたった一言が、こんな大惨事になってるんだ。
 あの時の自分を殴りたいよ。
 自然と顔が俯いていく。
 私が、余計な一言を言ったばかりに……。
 ゴメンなさい。
 涙が、頬を伝う。
 駄目、今は、ガマン、ガマン。
 唇を噛み締めて、拳を握る。

 涙が溢れないように、ただ強く目を閉じた。











しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

【短編】ちゃんと好きになる前に、終わっただけ

月下花音
恋愛
曖昧な関係を続けていたユウトとの恋は、彼のインスタ投稿によって一方的に終わりを告げた。 泣くのも違う。怒るのも違う。 ただ静かに消えよう。 そう決意してトーク履歴を消そうとした瞬間、指が滑った。 画面に表示されたのは、間の抜けたクマのスタンプ。 相手に気付かれた? 見られた? 「未練ある」って思われる!? 恐怖でブロックボタンを連打した夜。 カモメのフンより、失恋より、最後の誤爆が一番のトラウマになった女子大生の叫び。

女性が少ない世界でVTuberやります!

dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉ なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。 ※初日一気に4話投稿してから恋愛大賞エントリーしたため文字数5万これから(´;ω;`)みんなも参加するときは注意してね! ※忘れてなければ毎週火曜・金曜日の夜に投稿予定。作者ブル

生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-
恋愛
人身御供(ひとみごくう)は、人間を神への生贄とすること。 天魔神社の跡取り巫女の私、天魔華鈴(てんまかりん)は、今年の人身御供の生贄に選ばれた。 昔から続く儀式を、どうせ、いない神に対して行う。 私で最後、そうなるだろう。 親戚達も信じていない、神のために、私は命をささげる。 人身御供と言う口実で、厄介払いをされる。そのために。 親に捨てられ、親戚に捨てられて。 もう、誰も私を求めてはいない。 そう思っていたのに――…… 『ぬし、一つ、我の願いを叶えてはくれぬか?』 『え、九尾の狐の、願い?』 『そうだ。ぬし、我の嫁となれ』 もう、全てを諦めた私目の前に現れたのは、顔を黒く、四角い布で顔を隠した、一人の九尾の狐でした。 ※カクヨム・なろうでも公開中! ※表紙、挿絵:あニキさん

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

恋が温まるまで

yuzu
恋愛
 失恋を引きずる32歳OLの美亜。 営業課のイケメン田上の別れ話をうっかり立ち聞きしてしまう。 自分とは人種が違うからと、避けようとする美亜に田上は好意を寄せて……。

処理中です...