好きだから傍に居たい

麻沙綺

文字の大きさ
73 / 183

俺の目標…龍哉

しおりを挟む


 相も変わらず、あの人はカッコ良いな。
 俺は、あの人を目標にしてるんだ。
 口に出しては言えないが……。


「龍哉。あの人……鞠山雅斗さん。滅茶苦茶格好いいな。男の俺でも惚れちまう。」
 和田が、俺の横に来てそう口にする。
「あぁ。あんな風に堂々と口に出して言えるなんて、真似したくても無理だ。」
 田中が、そう口にした時。
「俺の昔からの目標の人だから……な。」
 自然と俺の口から溢れ出ていた。
 その言葉を聞いた二人が。

「「昔から?」」

 聞き返してきた。
 ヤバイ。
 そう思うも、二人は俺を怪しげ眼差しで見てくる。
 うっ……どう誤魔化すかそれを思案してるところに。
「龍哉ー!!」
 廊下を大きな声で俺を呼び、駆けてくる梨花の姿が目にはいる。
 この時、本当に"助かった"って思った。
 だって、追求されることがなくなったんだからな。
 俺の傍に来てニコニコしてる梨花の頭を撫でてやる(感謝の意味を込めて)。
 そんな俺を不思議そうな顔で見てくる。
 "どうしたの?" って、目で訴えてくる梨花に "なんでもない" と首を振って答える。
「それより、亜耶のお兄ちゃんカッコよかったね。」
 うっとりした顔で梨花に言われれば、ムッとなるのは仕方ないと思う。
 好きな娘に他の男性を誉められるのって嫌だと思う。
 だって、どうあがいたってその人にはなれやしないのだから……。
「そうそう。あんな風に護ってもらえる亜耶ちゃんが羨ましい~。」
 加藤が、梨花と同じ顔をして言う。
「えー。付き合うの大変そうだなって思う。あんだけのイケメンだもの、同姓からのやっかみが、ね。」
 木村が、顔を歪ませて言う。

「「確かに。」」

 梨花と加藤が、木村の言葉に同意する。
 お前ら、どっちなんだよ。
 まぁ、あの人には奥さん居るしな。
 そう思いながら苦笑する。
 女子達の話を聞きながら、時たま相槌を打ちつつ教室に向かう。

「ねぇ、龍哉。亜耶に謝りたいから、一緒に残ってれくれない?」
 梨花にしては、珍しいお願いだった。
 俺は、思わず頷いていた。
 だが、頷いてから、今日の予定を思い浮かべてた。
 急ぎの案件はなかった筈だから、大丈夫か。
「僕らも一緒に待っても良いか?」
 田中の言葉に驚きはしたが、首を縦に振って頷いた。


 教室に入れば、他のクラスメイトは居なくて、俺たちだけが残ってた。
 夕日が差し込む窓側の席に各々椅子を引いて座った。


「亜耶のあんな安心しきった顔、初めて見た。」
 不満そうな顔をして口にする梨花。
「それに、大人に対して、堂々と自分の意思を告げれる亜耶ちゃんが、カッコよく見えた。」
 加藤が口にする。
 俺もそれは、思った。
 あんなにも堂々と自分の意見を言えるのって少ないと思うんだよね。
 俺は、彼女程強くはない(メンタルの部分においては)。
 彼だったら、彼らだったらって何時もその事ばかり気にして、自分の意見なんか言えてない。
 そんな事を考えていた時だ。


 ガラッ。


 教室の戸が勢いよく開いた。
 入り口に目をやれば、二人仲良く手を繋いで立っていた。

「亜耶!」
 梨花が叫ぶと同時にイスから立ち上がり、慌てて入り口に駆け寄る。
 俺も慌てて後を追った。

「亜耶、ごめん。こんな大事になるなんて思ってなかった」
 梨花が、勢いよくそれこそガバッて音がするんじゃないかって思う程に、頭を深く下げる。
 俺は、それに続くように。
「遥さん、亜耶ちゃん。すみませんでした。俺が梨花こいつに言っておけばこんな事にはならなかったんです。」
 梨花の隣に並び、そう告げて頭を下げた。
 俺の大切な彼女の不始末は、俺にとっても責任あることだ。

「龍哉、相沢、頭を上げろ。亜耶が狼狽えてる。それに、お前らの所為じゃない。これは、俺たちが決めたことだからな。」
 遥さんの優しい声にゆっくりと頭をあげれば、そこには一度たりとも見せたこともない穏やかな表情の遥さんがいた。

 遥さんは、亜耶ちゃんの頭を片手で撫で回している。
 亜耶ちゃんの髪は見る間にグチャグチャになっていく。
 その後、手櫛で髪を整えていく遥さん。
 何て器用なんだ。俺には到底出来ない。

「二人とも。遥さんの言う通りだよ。二人の所為じゃないし、元を質せばうちのゴタゴタの所為。それに遥さんまで巻き込まれたんだよ。」
 亜耶ちゃんが、申し訳なさそうな顔をして遥さんんを見ている。って言うか、そんな顔を俺等に見せて欲しくない。何故なら、 "何がなんでも護ってやらないと" と思わせる顔付きは、遥さんの前だけにして欲しい。本人は無意識なんだろうけど……。
 遥さんは、遥さんでとても愛しそうな眼差しを向けている。本当に彼女の事を溺愛してるんだと思わされるくらいだ。
 この二人、俺らの事忘れてるんじゃないかってくらいだ。

「亜耶。俺は巻き込まれたなんてこれっぽっちも思ってないぞ。むしろ自分から好んで巻き込まれたんだよ。」
 なんだか、甘い雰囲気が漂い始めた。
 普段と違う遥さんに戸惑う俺。

 ツンツン……。

 俺の制服を誰かが引っ張る。
 その方を向けば、隣に居る梨花で。
「ねぇ、あの二人って言うか、先生の方が亜耶にベタ惚れ?」
 小声で聞いてきた梨花に、縦に頷いて肯定した。
「それにな、亜耶には隠し事なんて不可能なんだ。何時バレルかヒヤヒヤして過ごすよりも、大胆に宣言しておいた方が、安心なんだよ。」
 何時もの偽笑いではなく、素の笑顔の遥さんに驚かされる。

「遥さんのそんな笑顔、初めて見た」
 気付けば、ポツリと呟いていた。
 その言葉が他の五人を脅かせることになってるとは、思わなかった。
「当たり前だろ。素の顔なんか、亜耶以外に見せるわけ無いだろ。それよりも、龍哉の方が大変な事になってるぞ。」
 俺の呟きを聞いて、遥さんがそう口にした。
 俺は、慌てて振り返れば。
「龍哉、どういう事?」
 梨花が問い詰めてきた。
「えっと……。」
 一難去って、また一難ってか……。
 俺が言葉を選んでる時に。
「お前さ、自分の立場を何時まで隠しておくんだよ。そろそろ話してやればいいだろ。それで、離れていく仲間じゃないだろ。」
 遥さんが、ニヤリと嫌な笑みを浮かべながら、さらりと爆弾を投下していく。
 ちょ…遥さん。
 たじろいで居る俺を楽しそうに見ながら。
「それに、俺たち、雅斗を待たせてるから、そろそろ行くな。」
 って、亜耶ちゃんに鞄を取りに行かせてる。
「観念しろよ。さっきから、俺の事 "遥さん" って何度も呼んでるんだよ。」
 遥さんが俺の耳許で言う。
 その言葉に俺は、覚悟を決めた。
「亜耶。行くぞ。」
 遥さんが、亜耶ちゃんに声をかける。
「は~い。」
 嬉しそうな返事が返ってきた。

 亜耶ちゃんが、遥さんの隣に立つと、当たり前のように手が繋がれる。
 遥さんも優しい笑みを浮かべてて、とても幸せそうだ。

「いいな。あんな幸せそうな顔の亜耶が、羨ましいよ。」
 俺の横に居た梨花がポツリと漏らした言葉。
 確かにな。
 俺も首を縦に振って肯定する。

「……で、龍哉。さっきの高橋先生が言ってた事って、何?」
 目線を俺に戻し、鋭く睨めつけながら、問い質してくる梨花。
 うっ、梨花、その目怖いから。

 そう思いながら、とうとうこの日が来たんだと観念し、5人に自分の事を話した。











しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

貴方の側にずっと

麻実
恋愛
夫の不倫をきっかけに、妻は自分の気持ちと向き合うことになる。 本当に好きな人に逢えた時・・・

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。

亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。 しかし皆は知らないのだ ティファが、ロードサファルの王女だとは。 そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

女性が少ない世界でVTuberやります!

dekoma26+ブル
恋愛
ある日朝起きてキッチンに行くとそこには知らない男性たちが! …え、お父さん⁉ なぜか突然女性の少ない世界に来てしまった少女がVTuberをしたり、学校に通ったりするお話。 ※初日一気に4話投稿してから恋愛大賞エントリーしたため文字数5万これから(´;ω;`)みんなも参加するときは注意してね! ※忘れてなければ毎週火曜・金曜日の夜に投稿予定。作者ブル

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

【完結】欲しがり義妹に王位を奪われ偽者花嫁として嫁ぎました。バレたら処刑されるとドキドキしていたらイケメン王に溺愛されてます。

美咲アリス
恋愛
【Amazonベストセラー入りしました(長編版)】「国王陛下!わたくしは偽者の花嫁です!どうぞわたくしを処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(にっこり)」意地悪な義母の策略で義妹の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王女のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯? 

生贄巫女はあやかし旦那様を溺愛します

桜桃-サクランボ-
恋愛
人身御供(ひとみごくう)は、人間を神への生贄とすること。 天魔神社の跡取り巫女の私、天魔華鈴(てんまかりん)は、今年の人身御供の生贄に選ばれた。 昔から続く儀式を、どうせ、いない神に対して行う。 私で最後、そうなるだろう。 親戚達も信じていない、神のために、私は命をささげる。 人身御供と言う口実で、厄介払いをされる。そのために。 親に捨てられ、親戚に捨てられて。 もう、誰も私を求めてはいない。 そう思っていたのに――…… 『ぬし、一つ、我の願いを叶えてはくれぬか?』 『え、九尾の狐の、願い?』 『そうだ。ぬし、我の嫁となれ』 もう、全てを諦めた私目の前に現れたのは、顔を黒く、四角い布で顔を隠した、一人の九尾の狐でした。 ※カクヨム・なろうでも公開中! ※表紙、挿絵:あニキさん

恋が温まるまで

yuzu
恋愛
 失恋を引きずる32歳OLの美亜。 営業課のイケメン田上の別れ話をうっかり立ち聞きしてしまう。 自分とは人種が違うからと、避けようとする美亜に田上は好意を寄せて……。

処理中です...