好きだから傍に居たい

麻沙綺

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対策?という世間話…遥

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 亜耶から素早く鞄を奪うと、廊下を理事長室に向かって歩く。

「なぁ、亜耶。何かあったら、直ぐに言うんだぞ。」
 あのお嬢様の事だ、亜耶にちょっかい出すだろう。
「わかった。」
 亜耶が素直に頷いたのを見て少しだけ不安が残るが、こればかりは、亜耶を信じるしかない。

 理事長室に着いたが、俺の両手は塞がっている。さて、どうやってノックするべきか?
 俺が悩んでるのを気にせずに、横に居る亜耶が躊躇いもなくドアをノックする。

「はい。」
 中から、伯父の返事が返ってきたので、亜耶がドアを開けた。
 中に足を踏み入れれば、二人が深刻そうな顔をしてソファーに座っていた。
「雅斗、遅くなって悪いな。」
 と声を掛けながら、ソファーに近付く。
 が、二人はこちらをチラッと見るに留め、溜め息をついてる。
 重たい雰囲気が室内を包んでいた。
「何? どうした?」
 何があったんだ?
 そう思いながら、ソファーに座り、亜耶を俺の隣に座らせた。
 俺たちが、座ったのを見てから。
「あっ、うん。例のお嬢様に預かりものを返したんだがな……。」
 伯父が言葉を濁して、そう口にした。
 お嬢様って、あいつの事か。それに預かりモノって、お金か……。
 そういえば、入学式の代表を金で買っていたな。
 まぁ、ただの恥さらしだったが……。
「あぁ、そう言う事。」
 俺がそう答えたが、亜耶一人が、疑問符を頭に浮かべて俺たちを代わる代わる見ている。
「まぁ、そうだろうな。あのお嬢様だから、何か企んで使いそうだな。」
 あのお金があれば、多少は持ちこたえれるかもしれないが、あのお嬢様では、そんな事しないだろう。逆に自分が有利になるように使うだろう。
 例えば、亜耶を危険な目に遭わせるとか、な。
 チラリと横に座る亜耶の顔を見れば、頬を膨らませて明らかに "怒ってます" という顔付きで、俺たちの会話を大人しく聞いている。
 俺は、そんな亜耶の頬に指で突っつきながら。
「亜耶、そんなに怒るなよ。今の話は、亜耶には関係ないことだからな。それより、この後の真由の誕生日プレゼントをどうするかを考えていな。」
 そう告げれば、思い出したかのようにパッと目を見開いて、考え始めるのを見届けてから。

「一番懸念されるのが、来月に行われる予定のものだろ。」
 俺が、そう口にすれば、雅斗も頷いて同意する。
「あぁ、来月の結婚発表の時だろうな。でも、その前に何かしそうではあるが。」
 雅斗の言葉を聞いて、俺は驚き。
「結婚発表になったんだ。」
 聞き返していた。
「ん……あぁ、言い忘れてたか? まぁ、最初は、婚約にしようと思ってたんだがな、これだけ大事になったら、結婚発表の方が妥当というものだろ。」
 雅斗が真顔で返してきた。
 確かに、今日の騒動で、広まるのは確実なわけだしな。
 亜耶のドレス注文しないとな。
 今日、ついでに頼んで来るか。
「それは、俺も招待されるのか?」
 伯父が、嫌そうな顔をして聞いてくる。
「確か、入ってましたよ。」
 雅斗が淡々と答える。
 一応、近い親戚筋ですよね。
「……そうか」
 伯父が溜め息をついて、肩を落とす。
 パーティーとか苦手だからなぁ、伯父さんは。
「で、対策はどうする?」
 雅斗が、俺を見てくる。
「ん? まぁ、亜耶の周りは何があっても大丈夫だと思うが、一人にならないように注意はしておくよ。」
 俺は、あいつらの事を思い出しながら言う。
「珍しいなぁ。お前がそんなこと言うなんてさ。」
 雅斗が驚いた顔をするから。
「あっ、うん。まぁ、一人だけ頼れる奴がクラスに居るからな。そいつの仲間も亜耶の事気にかけてくれてるからな。」
 さっきの顔を見れば、一目瞭然だ。
 あの六人は、亜耶を心配してくれてたからな。
「誰だ?」
 気になったのか、雅斗が聞いてきた。
「河合龍哉。お前に心底陶酔してる奴。」
 そう答えれば、納得したようだが。
「亜耶と同じクラスなのか?」
 そう聞かれて俺は、首を縦に振って肯定した。
「亜耶からも、龍哉からもその事は聞いてない。」
 雅斗がブツブツ言い出した。
 自分の知らないことに文句つけてるぜ。
 亜耶からなんて、到底無理だろうなぁ。
 俺たちが龍哉と接点があるなんて、亜耶は知らなかっただろうし……。
「それなら大丈夫か……。後は、あのお嬢様と繋がりがある令息令嬢の動きだけか……。」
 雅斗の言葉に。
「それも大丈夫じゃないか。今日、堂々と亜耶が告げたんだ。しかも、雅斗が居る前で。下手なことはしてこないだろうって、出来ないだろ。亜耶に何かあれば、親会社にも影響があると考えれば、余程のバカじゃない限り手は出せないだろう。」
 それに、家の系列からも何かしらの制裁があると見てもいいだろう。
「だが、用心に越したことはないだろ。」
 まぁ、な。
「それは、湯川家が亜耶を護るだろ。」
 俺は、そう言葉にしていた。
「何で、湯川家?」
 あれ、雅斗。もしかして知らないのか?
「それは、うちの娘も関係してる事かな。娘が、湯川家の直系と婚約してるから……。」
 伯父が真顔で言う。
「それと、お前の嫁の兄が、湯川家の娘を嫁として入れてるのもあるがな。」
 俺は、さらっとそう告げた。
「えっ、あれ、そうだっけ? って、何で遥がそんなこと知ってるんだよ。」
 雅斗が怪訝そうな顔をして、俺に聞いてくる。
「だって、元々俺のところに来ていたのを湯川家を説得して沢口家を推したんだよ。当時、沢口家の長男が嫁を探してたし。」
 お見合いしろって散々言われ続けてて、俺は亜耶以外は受け付けるきが無かったから、他にまわしただけなんだが、な。
「そっか……。学園内は、ある程度は安心なんだな。」
 雅斗が、ホッとしたように肩の力を抜いた。
 その時、隣から。
「う…ん。どうしよう………。」
 と呟きが聞こえてきた。
 一体、何を悩み始めたんだ?
 俺が目をやると、眉間にシワを寄せて難しい顔をしてる亜耶。
「亜耶、煩いよ。」
 雅斗に声をかけられて、我に返ったように。
「もしかして、口にしてた?」
 真顔で聞いてきた。
 雅斗が苦笑を漏らし頷く。
 まぁ、難しい話もここまでかな。
「ごめんなさい。」
 亜耶が、シュンと肩を落とし、明らかに落ち込みだした。
 猫か犬の耳があれば、垂れ下がってるんだろうなぁ、何て思いながら。
「伯父さん。真由への誕プレ決まった?」
 俺の唐突の言葉に。
「まだだが。って、来週だろ。何かあるのか?」
 不思議そうな顔を浮かべて聞いてきた。
「今週末、透にせがまれて、真由のとこと遊びに行くんだよ。だからさ、決まってるなら直接渡してやろうと思ってさ。」
 そう伝えれば、伯父が睨み付けてきた。
 あぁ、娘に構ってもらえないから、僻んでやがるな。
 それと、自分で渡したかったんだろうな。
 何て思いながら。
「そうか。明日でもいいか。」
 伯父が、悔しそうな顔をしてそう聞いてきた。
「あぁ、俺達もこれから買いに行くんだけどな。じゃあ、店が閉まる前に行くわ。」
 俺は、そう言うと傍らに置いていた亜耶の鞄を手にして、立ち上がった。
 それを見ていた、亜耶が慌てて立ち上がるのを横目で見ながら、出口に向かう。
 ドアに手をかけた時だった。
「あっ、遥。明日から夫婦同伴で登下校することを許す。亜耶ちゃんに何かあったら困るからな。」
 伯父が声を掛けてきた。
 まぁ、それは聞く前から考えていた事だけど、直接許可があるのと無いでは違うからな。
「わかった。ほら、行くぞ亜耶。」
 俺は、ドアを開けて亜耶が来るのを待つ。
「理事長先生、お兄ちゃん。お先に失礼します。」
 亜耶が、振り返って二人に挨拶する。
 あぁ、もう。礼儀ただしい娘だよ。
 そこも、気に入ってるんだがな。
 亜耶と二人、部屋を出た。



 理事長室を出て、俺は職員室に足を向け。
「亜耶。悪いけど、このまま職員室に行って、荷物を取りに行くな。」
 そう告げれば、亜耶も気付いたようで、素直に頷いてくれた。
 そんな亜耶に。
「……で、さっきは何を悩んでいたんだ?」
 ちょっとだけ、からかうつもりで言ったんだが。
「えっ、あぁ。真由ちゃんと湯川くんが一緒に使えるのがいいのか、真由ちゃん一人で使えるの方がいいのかって、悩んでたの。」
 亜耶が、唇に人差し指を当てて、真顔で言ってくる。
 何だよ、その仕草。始めてみるぞ。
 めちゃくちゃ可愛いだろうが……。
「何だ、そんなことか。」
 って口にすれば。
「私にしたら大問題ですよ。お小遣いの中から出すんですから、どっちかしか買えないんですよ。」
 口を尖らせていう亜耶。
 おいおい、何で亜耶は一人で買おうとしてるんだよ。
「亜耶さん。俺は、何のために居るんだよ?俺は、亜耶にとってはお飾りですか?」
 拗ねた口調で俺がそう吐いた。
 亜耶が、キョトンとした顔で俺を見てくる。
「俺は、亜耶の夫だぞ。亜耶が望んでるなら、何だって叶えてやるぞ。出きる範囲でならな。」
 まぁ、無理なお願いでも出きる限り叶えてやりたいと、何時も思ってるんだが、な。
「遥さん……。」
 亜耶が、今気付いたみたいに俺を見る。
「亜耶はさぁ。俺に迷惑掛けないようにって考えてるんだろうけどさ、それ、間違いだからな。好きな娘には、頼ってもらいたいって思うんだからな。ましてや俺たちは夫婦だ。それとも、俺じゃあ頼りないのか?」
 俺は、亜耶の目を見て聞く。
 すると、亜耶は首を横に振り。
「ち、違うの。頼りないなんて思ってない。ただ、どうすればいいのかわからないの。」
 戸惑いながら、言葉を紡ぐ亜耶。
「ハァー。そうか……。亜耶は、自分から頼ることなかったもんな。仕方ないか……。」
 亜耶が悩む前に誰かが手を出してるから、どうすればいいのかわからないんだな。
「なぁ、亜耶。約束して。俺をもっと頼って、亜耶一人で悩むのは、ダメだからな。」
 俺は、笑みを浮かべながら伝えた。
「うん。」
 亜耶が、小さく頷いてくれた。



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