好きだから傍に居たい

麻沙綺

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亜耶に何が…遥

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 昼休みに入り十分経った頃だった。
 滅多に顔を出さな者が職員室に来たのだ。
 しかも、俺に。
「高橋先生。解らないところがあるので教えてください。」
 と龍哉が相沢を伴って来るから、何か企んでるのが分かったが一体何をしようとしてるのか分からず眉を潜める。
 相沢のエセ笑いがどうも気になる。
 それに、龍哉に限って "解らないところがある" とは、考えにくいのだ。
「先生。そんな怖い顔で睨まないで下さいよ。」
 詫びれる事無く口にする龍哉。
 隣に居る相沢が怯えてるが、そんなに怖い顔をしてるのか俺は?
「解らないところがあるのは本当なんで、教えてください。」
 龍哉の揶揄う声が煩わしく思いながら、そう言われてしまえば聞くしかない。
「……で、解らないところとは?」
 俺が問えば、相沢の方が問題集を開き指を指した。
 俺がその問題を読んでるとどこからか、ブルルル……ブルルルとバイブレーションの音が聞こえてきた。
 校内は携帯禁止の筈だが……。
 怪しげに二人を見る。
「先生、ここで出ても良いですか?」
 相沢がポケットから携帯を取り出して、俺に聞いてきたので許可を出す。

「ユキ? どうしたの?」
 ユキってことは木村からか?
 だが、わざわざ学校内での連絡って何があった?
 相沢が、俺に視線を寄越してきた。
 って事は、俺がらみって事か?
 否、違うな……って事は……考えたくもないが……。
「亜耶がどうした?」
 相沢が息を飲んだのがわかる。
 亜耶に、何があった。
「ユキ! 今、何処に居るの?」
 相沢が言葉を切った隙にその携帯を奪い取り。
「救急車は呼んだか?  意識は?」
 矢継ぎ早に聞く。
『救急車はまだです。意識は無いです。場所は、北校舎の……二階から一階への踊場で西側です。』
 俺に質問に堂々と答えてくれる木村だが、内心焦ってるんだろう。所々詰まり気味だった。
 北校舎西側の階段といえば、職員室ここに来るつもりだったのか?
 俺が、お昼を食べないことを見越して、持ってこようとしてたのか?
 目の前に居る二人は、青い顔をして俯いてる。
 まさか、こいつらに担ぎ上げられてここに来ようと……。
 憶測でしかないが、今はコイツらを攻めている時ではない。早く亜耶のところに行かねば。
 俺は、相沢に携帯を返し、自分の携帯と財布だけを手にして職員室を出る。
 その後ろを龍哉達が着いてきた。
「龍哉、救急車を呼べ。来るまで下で待機!  北校舎西側階段に誘導をしろ。」
 俺は、そう言うと雅斗へ電話する。廊下を駆けながら(緊急事態だ見のがせ)。

 本来なら、義父に連絡した方がいいと思うのだが、多忙過ぎて出れない可能性が高い。だったら、雅斗に事情を話しておいた方が早いと思ったのだ。

『どうした、遥?』
 数コールで雅斗が電話に出た。不思議そうな声で。
 滅多にこんな時間に電話しないからな。
「亜耶が、階段から突き落とされた。」
 俺の言葉に、雅斗が息を飲むのがわかった。
 そりゃあそうだろう。
 溺愛してる妹なのだから。

『どう言うことだ?』
 雅斗の声が低く苛立った気がする。よく聞けば、心配声にも聞こえるが……。
「俺も電話越しで聞いただけだから、詳細はわからん。ただ、亜耶と一緒に居た生徒から、直ぐにでも事情を聴くつもりだ。」
 俺も気が動転してるのか、まともな答えが出ていない。
『なら、携帯は切らずに置いておけ。その方が早いからな。後、救急搬送させるなら、何時もの病院にしてくれ。』
 雅斗が、俺に指示を出してきた。
 案外、冷静なんだな。そう思いながら。
「わかった。」
 そう答えると上着のポケットに携帯を仕舞う。
 俺の後ろには、相沢が息を切らしながら着いてきてるのがわかった。


 木村が言った場所に辿り着くも、騒ぎを聞き付けた生徒で溢れていた。

「ユキ!!」

 相沢が大きな声で木村を呼ぶと、人垣がこちらに顔を向ける。
「こら、そこどけ!!」
 すかさずそう言えば、道が自ずと開かれた。
 視界に亜耶の横たわる姿が入り、その横では木村が心配そうにしながら、ある一点を見つめていた。
 俺は、直ぐに亜耶の傍に行き脈を測り呼吸の確認をする。
 意識が無いだけで安堵したが、このまま目覚めないってことはないよなぁ……。

 そんな不安を抱ながら周囲を見渡す。

 透が、ある女子生徒を拘束しその隣にはお嬢の弟が……。

 木村と相沢を見れば、心配そうな顔で亜耶を見つめている。
「大丈夫だ。……で、何があった?」
 俺は、木村から話を聞き出すことにした。
「この階段を降りようとした亜耶ちゃんの背中を、湯川くんが押さえている女子生徒が押してそのまま落ちたんです。その前から殺気の混ざった視線が亜耶ちゃんに付きまとっていて、あたしは心配で亜耶ちゃんを追いかけてたんです。」
 木村の話に思わず、眉間に皺が寄った。
 何故、亜耶が狙われることに?
 俺は、その女子生徒を睨み付け。

「お前が、亜耶を突き落としたのか!!」

 自分でもわかる怒気に、周囲が萎縮し出す。
 久々の冷酷モード。
 手加減なんかしない。
 大切な姫を傷つけたんだからな。
「ち、ちが、う……。……あたし……じゃない。ただ……あの人に……頼まれた……だ、け……。あたしじゃ……。」
 彼女が何やらブツブツ呟いているが、そんなの関係ない。
 彼女が、亜耶を突き落としたと言うことだけは、確信できた。証人も居るしな。
 だが、気になるのは "あの人" と言う言葉。
 誰かに指図されて行ったのは、事実だろう。
 そう考えてた時。

「高橋先生。この女子生徒は、姉の拾僕です。俺の憶測ですが、姉に言われて、鞠山さんを……。」
 細川が、口を挟んできた。
 やはり、ゆかり嬢が絡んでるのか……。
 やっかいだ。
 俺は、頭を抱え込みたくなった。
「……ゆかり嬢の差しがねか……。透。コイツを連れて理事長室へ。細川も一緒にな。」
 俺の言葉に透は頷き、彼女の腕を掴んで去って行く。

 ゆかり嬢は、亜耶が死ねば自分が代わりになれるとでも思ったのだろう。
 何て、浅はかな考えだ。
 そんな事しても、あのお嬢を選ぶことは絶対に無い!
 元々、亜耶が居なければ結婚なんて考えなかった(政略はあったかもしれないが、冷めた関係だろう)。


 気付けば、龍哉が隊員を連れてきていた。
「こちらの生徒のご家族には連絡は?」
 と聞かれたので。
「あぁ、俺が彼女の家族です。俺は、彼女の夫ですから。」
 堂々と口にした。
 彼女は、俺にとって大事な妻なんだ。
 一瞬驚いた顔をし、元に戻す隊員。
「一緒に来てください。」
 そう告げると担架に載せられた亜耶と共に階段を降りて行く。

 事後処理だけはしておかないとな。
「龍哉、悪いが宮原先生にこの事を伝えておいて、あと、木村と一緒に理事長室へ行って、説明をして。透には、後で電話するって伝えておいてくれるか?」
 生徒の中で信頼できるのは龍哉だけだったから、そう一気に伝えると亜耶を追った。

 透には悪いが、延期にさせてもらうか二人で行って来るかしてもらえればと思う。


 救急車に乗り込むと、隊員に雅斗に指定された病院名を告げ、亜耶の手を握りしめた。






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