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目が覚めたら…亜耶
しおりを挟むずっと、暗闇の中に居た。
何処に進むべきかわからないまま、佇んで居た。
ふと、何かが視界の端に映った。
私は、それを追い求めるように追い駆けていた。
そして……。
自分の手に微かな温もりを感じる。
何だろう?
とても安心する温もり。
それに惹かれるように、ゆっくりと瞼を上げた。
あまり見慣れない天井が目に写る。
消毒液の臭いも感じる。
体を起こそうとして、右腕を動かそうとしたが、思うように動かず痛みが走る。
痛みを感じた腕を見れば、包帯が巻かれていた。
えっと……私、どうしたんだっけ?
思い出そうとして呆然としてると、反対の手が何かに包み込まれるような温かさを感じ目を向ければ、遥さんが私の手を両手で握りしめながら額を着けて眠っていた。
あ~あ。
心配させちゃった。
彼の事だから、ずっと傍に居てくれたんだろう。
私は、起こすのは偲び無いと思いながら、繋がれている手を軽く動かしてみた。
「……ん?」
それに答えるように声を出す遥さん。
「は、るか……さん……。」
掠れた声で声を掛ければ。
「ん……。目が覚めたんだな、亜耶。よかった。」
目に涙を溜めてホッとした顔をし、私の頭を撫でる。
それが、とても優しい手付きだった。
「どこか痛いところはあるか?」
って、優しい口調で聞いてくる。
「……右腕が少し……。」
思ったことをそのまま口にしていた。
「腕は、骨折してるから仕方ないよ。暫くはギブスで固定だぞ。」
痛々しげに答える遥さん。
眉根を寄せて、心配そうな顔をして私を見てくる。
それ程、心配させちゃったんだな。
反省しなければいけないね。
でも、何で病院ここに居るのか、わからないんだけど……。
「遥さん。」
「何だ?」
「私、何で病院で寝てるの?」
と口にすれば、遥さんは目を見開いて、驚いた顔をする。
「覚えて……無いのか?」
逆に聞かれて、ゆっくりと首を縦に振り。
「全然覚えてないの。ただね、今日は朝から嫌な視線は感じてた。それだけで、何も覚えてない……。」
朝から感じていた視線。
その事だけが、自分の中にあって、どういう経緯で病院ここに居るのか全く、わからないのだ。
遥さんは、困惑した顔で私を見ると。
「昼放課に学校の階段で突き飛ばされ、そのまま気絶し病院ここに運ばれたんだ。」
って、淡々と告げてきたが、何も思い当たる節がなく、益々混乱する。
えっと……、突き落とされた?
誰に?
その時の事を思い出すが、押された感覚なんてなかった筈だ。
もう一度思い出そうとするが、無理だった。
「なぁ、さっき気になる言葉が出てきたんだが。」
っと、こちらを睨むようにしてみてくる遥さん。
私、遥さんが気になる言葉を何か言ったかなぁ?
首を傾げながら遥さんを見る。
「"朝から嫌な視線" って……。気付いていたのなら、何でその時に言わなかったんだ。そうしたら、こんな事にはなって無かっただろうが!」
って、怒鳴られる。
ここ病院だから、怒鳴って欲しくない。
っていうか、ズキズキと頭痛くなってきた。
「だって、遠くで感じていただけだったから、気にするほどでもないかなって、思ったんだもの。」
その時に思ったことをそのまま告げる。
「はぁ~。」
遥さんが、溜め息を吐いた。
「それでも、言ってくれてたら、もっと違う対処ができた筈だ。それに、雅斗も心配してたぞ。」
そっか……、お兄ちゃんにも心配させちゃったのか……。
後で、物凄く怒られるな。
仕方ないかな。
自業自得だもんね。
「……週末の旅行。」
気分を持ち上げるためにそう口にしていた。
真由ちゃんに久し振りに会える嬉しさもあったのだが。
「亜耶が、こんな事になってるのに、旅行なんて出来ないって、延期になった。」
遥さんが、ジト目で私を見てくる。
「えっ……、何で? 私、行きたいよ。」
って言えば。
「亜耶……。もしかしたら、頭を打ってるかもしれないってことで二・三日の入院だ。どうやって旅行に行くんだ? 医者の許可無しに出れないんだぞ。」
って、呆れた顔で見てくる。
「だって、真由ちゃんに会えると思ってとても楽しみにしてたんだよ。」
駄々っ子みたいに我が儘を言ってみた。
「だから、延期だって言ってるだろ。それと、明日透が真由を連れてお見舞いに来てくれるってさ。」
そう言って、私の頬を撫でてくる。
その顔は、優しさの中に悲しみが交じった様な顔だった。
自由の利く左手を遥さんの頬に伸ばした。
「……亜耶?」
困った顔をして私を見てくる。
普段の私からしない仕草だから、戸惑ってるのだろう。私の手に重ねてくる遥さん。
「心配させてしまって、ごめんなさい。遥さんの事、苦しめてるよね。」
そう口にしていた。
私の言葉に遥さんは、首を振り私の手を外すと。
「亜耶の心配をするのは、当然だろう。俺は、亜耶の夫だぞ、それ以前に愛しい人なんだから、心配位させろ。」
って、遥さんに抱き締められ耳許で囁かれれば、自然と顔が熱くなる。
だから、素直に伝えることにした。
「遥さんに悲しい顔をして欲しくなくて、自分で何とかしようと思ったの……。だけど、失敗しちゃった……。」
私って、遥さんに迷惑かけてる存在なのかな?
そうだったら、私は……。
遥さんから距離をとろうと左手を遥さんの胸にやり、腕を伸ばしたが、びくともしなくて逆に焦ってしまう。
「亜耶……。」
優しい声音が頭上から振ってくる。
ビクリと体強張った。
「亜耶はさぁ、普段から人に頼ろうとしないもんなぁ。だから、心配になるんだ。俺は、何でも一緒に……二人で解決していきたいと思ってるんだよ。亜耶の事、無いがしろになんてしたくない。一人の問題だろうとも、俺達は、夫婦なんだから話し合って、二人で立ち向かうのもいいんじゃないかって思ってるんだ。だから、迷惑になってるなんて思わなくても良い。むしろ、愛しい亜耶から頼られたら嬉しいからな。これは、前にも言った筈だが。」
ゆっくりと諭すように言う遥さん。
確かに言われた気がする。
私は、顔を上げて遥さんを見る。
「私は、遥さんと一緒に居たいと思ってる。でも、それが負担になる様なことはしたくないって思ってた。……けど、今の遥さんの言葉で、私は間違った選択をしてしまったんだって、気付けた。お互いを護るには、共有することが必要だと改めて思う。遥さんにとって守る存在が私なら、私にとっても守りたい存在が遥さんだけなんだって、知ってて欲しい。」
今の思いを言葉を選びながら口にする。
私にとって、遥さんが居ることで強くなったり弱くもなる。
だけど、それが今の自分であるのだと伝えたかった。
私の言葉を聞いて驚きを隠すこと無く。
「あぁ。俺の想いはちゃんと伝わっていたんだな。」
って、目尻を下げて愛しそうに見つめてくる遥さん。
私の想いも届いているんだと嬉しくなる。
「亜耶。俺のせいで嫌な思いさせてごめんな。これで、ようやく手が打てる。」
そう言葉を発し、口許を上げる遥さん。
何か企てているのがわかる。
こうなると、私の手に終えないので、暫くの間放置しておく事にした。
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