好きだから傍に居たい

麻沙綺

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守りたい存在…遥

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 手を引っ張られる感じがし、ゆっくりと瞼を上げる。
「……ん?」
 知らないうちにウトウトしてたみたいだ。
「は、るか……さん……」
 掠れた声が、静かな病室に響く。
 声の方を向けば、亜耶がこちらを見ていた。
「ん……。目が覚めたんだな、亜耶。よかった」
 あぁ、よかった。
 亜耶が目を覚ましたことに安堵する。
「どこか痛いところはあるか?」
 亜耶の顔を覗き込むように聞けば。
「……右腕が少し……。」
 小声ではあるが、しっかりした声で返ってくる。
「腕は、骨折してるから仕方ないよ。暫くはギブスで固定だぞ。」
 苦笑しながら、医者に言われたことを伝える。
「遥さん。」
 不安そうな顔をして俺を見てくる亜耶。
「何だ?」
 何を聞かれるんだと待ち構えていると。
「私、何で病院こんな所で寝てるの?」
 不思議そうな顔で聞いてくる。
 えっ……。
 まさか。
「覚えて、無いのか?」
 俺の言葉にゆっくりと頷く亜耶。
 何でだ?
 頭を打った時の後遺症か?
 俺が、戸惑っていると。
「全然覚えていないの。ただね、今日は朝から嫌な視線は感じてた。それだけで、何も覚えてない。」
 ハァ?
 嫌な視線を朝から感じていた……だと……。
 取り敢えず、俺が知り得てることだけを口にする。

「昼放課に学校の階段で突き飛ばされ、そのまま気絶し病院ここに運ばれたんだ。」
 俺が告げた言葉でも、無反応で困惑しているのがわかる。
「なぁ、さっき気になる言葉が出てきたんだが。」
 俺は、そこで言葉を区切り亜耶に詰め寄り。
「"朝から嫌な視線" って気付いていたのなら、何でその時に言わなかったんだ? そしたらこんな事にはならなかったかもしれないだろ。」
 俺は、亜耶の頭を撫でながら怒気を含む声音で言う。
「だって、遠くで感じていただけだったから、気にするほどでもないかなって、思ったんだもの。」
 って、何でもないような風に言い出す。
 やっぱり、危機感ないなぁ。
「はぁ~」
 呆れたような溜め息を吐き。
「それでも、言ってくれてたら、もっと違う対処ができた筈だ。それに、雅斗も心配してたぞ。」
 俺が言葉を紡げば、亜耶の顔色が曇る。
 雅斗の事を口にすると、何故そんな顔になるんだ。
 いくら兄妹だからとて、嫉妬するぞ俺。

「……週末の旅行。」
 唐突に話が切り変わる亜耶。
 こんな事があったばかりだっていうのに旅行とはな……。
 まぁ、楽しみにしていたのだから仕方ないか……。
「亜耶が、こんな事になってるのに、旅行なんて出来ないって、延期になった。」
 先程のやり取りをそのまま伝えた。
「えっ……。私、行きたいよ。」
 不満そうな顔を俺に向けてくる。
 何で、この子は自分を大切にしないんだろう?
「亜耶……。もしかしたら頭を打ってるかもしれないってことで、二・三日の入院だ。どうやって旅行に行くんだ? 医者の許可無しに出れないんだぞ。」
 俺は、諫めるように口にする。
「だって、真由ちゃんに会えると思ってとても楽しみにしてたんだよ。」
 って、肩を落として言う。
「だから、延期だって言ってるだろ。それと、明日透が真由を連れてお見舞いに来てくれるってさ。」
 そう言葉にすれば、頬を緩める。
 頭にやっていた手を頬に滑らせる。
 本当にこの子は、俺をどうしたいんだよ。
 何て思ってると、ギブスをしてないてで突然俺の頬に亜耶が触れて来たのだ。
「……亜耶?」
 困惑しているのが自分でもわかる。
 俺は、亜耶の手に重ねるように置く。
「心配させてしまって、ごめんなさい。遥さんの事、苦しめてるよね。」
 弱々しい言葉が俺の耳に届く。
 俺を苦しめてる?
 亜耶が?
 そうじゃない。
 俺は慌てて首を横に振り、亜耶の手を握り絞め。
「亜耶の心配をするのは、当然だろう。俺は、亜耶の夫だぞ、それ以前に愛しい人なんだから、心配位させろ。」
 俺は、亜耶を抱き寄せ耳許で囁くように告げた。
 抱き寄せたから、顔を見ることはできないが、体温が上がってるのか、何時もより熱く感じる。
「遥さんに悲しいそんな顔をして欲しくなくて、自分で何とかしようと思ったの……。だけど、失敗しちゃった……。」
 って、落胆した声が聞こえる。
 何を思って言ってるんだ?
 俺は、亜耶の顔を見るために下を見やれば、俺から逃げようと左腕を一生懸命に伸ばしているが、俺は離してやらない。
「亜耶……。」
 俺は、今までの亜耶の事を思い出しながら。
「亜耶はさぁ、普段から人に頼ろうとしないもんなぁ。だから、心配になるんだ。俺は、何でも一緒に……二人で解決していきたいと思ってるんだよ。亜耶の事、無いがしろになんてしたくない。一人の問題だろうとも、俺達は、夫婦なんだから話し合って、二人で立ち向かうのもいいんじゃないかって思ってるんだ。だから、迷惑になってるなんて思わなくてもいい。むしろ、愛しい亜耶から頼られたら嬉しいからな。これは、前にも言った筈だが。」
 諭す様に口から紡がれる言葉が、俺の本心だ。
 亜耶が、俺を見上げてきた。
 その顔は、真っ赤で恥ずかしがってるんだと推測できる。
「私は、遥さんと一緒に居たいと思ってる。でも、それが負担になる様なことはしたくないって思ってた。……けど、今の遥さんの言葉で、私は間違った選択をしてしまったんだって、気付けた。お互いを護るには、共有することが必要だと改めて思う。遥さんにとって守る存在が私なら、私にとっても守りたい存在が遥さんだけなんだって、知ってて欲しい。」
 言葉を選びつつ語る亜耶。
 これって……殺し文句では……なかろうか?
 本当に、亜耶このこは俺を殺したいのかよ。

「あぁ、俺の想いはちゃんと伝わっていたんだな。」
 嬉しい反面、怖いと思ってしまう自分が居る。
 ちゃんと守れるか心配だが、俺には亜耶だけだから……。
「亜耶、俺の性で嫌な思いさせてごめんな。これで、ようやく手が打てる。」
 俺が原因でこんな事になってるのはわかってるんだ。
 あのお嬢……いや、元お嬢がしでかしたことに目を瞑るわけには如何ない。

 俺の大事な姫に手を出したんだからな。


 絶対に許さない!!
 後悔させてやる!



 俺は、亜耶が再び眠るまで傍に居り、寝付いたのを確認してから病室を出た。












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