好きだから傍に居たい

麻沙綺

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敵わない…亜耶

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「亜耶?」
 どう言うことだと怪訝そうな顔をして私を呼ぶ遥さん。
 だが、今話すべき事ではないので。
「後で話す。」
 と短く答える。
 今話したら、真由ちゃんが恥ずかしがって会ってくれない気がするんだよね。
 だって、私だったら嫌だもん。
「わかった。」
 遥さんの口が尖ったのを見て納得してないことは分かる。
 ちょっと場の空気が重かったんだけど、コンコンコンとドアからノック音がしてドアが開いた。
「亜耶ちゃんとその友達かな。そろそろ面会時間が終わるよ。後、検温の時間。」
 看護婦長の都さんが顔を覗かせる。
 朗らかな方で、優しさの中に厳しさを兼ね備えている。都さんのお陰で、場の雰囲気が変わっていた。
「あっ、はい。」
 私は慌てて返事を返し、都さんから体温計を受け取って、脇に指す。
「もう、そんな時間なんだ。楽しいと時間が過ぎるのが早いね。はる兄、プレゼントこれ有り難うね。亜耶ちゃん、絶対に無理しちゃダメだからね。はる兄に甘えるんだよ。」
 真由ちゃんの顔、ぎこちない笑顔になってる。
 あぁ、遥さんに先を越されて悲しいんだけど、この場にそぐわない顔はしたくないから真顔になっちゃってるよ。
「うん、分かった。真由ちゃん、来てくれて有り難う。」
 私は、真由ちゃんに笑顔で言う。
 まぁ、遥さんの甘えるかどうかは、さて置き。
「亜耶ちゃん、お大事に……。」
 湯川くんがいつの間にか真由ちゃんの隣に来てて、然り気無く荷物を持っていた。
 そのまま二人は手を繋いで仲良く部屋を出て行った。

「俺は、もう少し居てもいいですか?」
 遥さんが都さんに声をかける。
「えぇ、構いませんよ。食事の補助ですよね。」
 都さんがクスクス笑いながら聞き返す。
「えぇ、左手での食事は、大変みたいで……。」
 遥さんの言葉に顔が熱くなり俯いてしまう。
 イヤ、だってさ、使いなれてない手で食事するの結構大変なんだよ。しかも、怪我しなければ絶対に練習だってしないし……。
「もう、十分程で食事が届きますのでお待ちください。」
 都さんはそれだけ告げて出て行った。

 都さんが出て行った後。
「遥さん。ごめんね、不器用で……。」
 と謝った。 
 器用に何でもこなせたら良かったんだけどさ、こればかりは仕方がない。
「何を謝るんだ? 俺は、楽しんでるんだから。」
 目を細めて、私を見つめてくる。
 その目は、慈しみのある目で見てる方が照れ臭くなって、顔を赤めた。
「で、さっきの真由が固まった理由って何だ?」
 遥さんが聞いてきたので。
「それは、乙女心と言うやつです。」
 女性ならではの問題ですよ。
 なのに遥さんは分からなかったみたいで、更に顔を歪める。
「簡単に言ってしまえば、湯川くんがウダウダと考えてる、見るからに悩んでそうなのに一向に話してくれなくてもどかしい気持ちをさっき遥さんの "悩み……" の所で、真由ちゃんが自分で掛けたかった言葉を遥さんに言われてしまって、ショックだったのだと思うの。後、真由ちゃんのもう一つに悩みがあったんだけど、それも解決しそうだし……。」
 まぁ、真由ちゃんの悩みが解決するなら、いいのかなと思わなくもないけど……。
「亜耶、そのもう一つとは何の事だ?」
 知りたそうな顔を此方に向けてくる。
 珍しいなぁ、何て思いながら。
「湯川くんが、真由ちゃんの事をどう思っているかって話が出たの。ほら、あの二人って政略的な婚約だったでしょ? だけど、真由ちゃんは湯川くんの事好きなんだって。だから、湯川くんの気持ちが知りたいって言ってたんだけどさ。さっきの湯川くんの発言聞けば、大丈夫じゃないかな。」
 あんな際どい言葉を聞けばね、気付くと思うの。
 両片想いになってるから、二人が話し合えば両思いになると思うのは、遥さんも分かったんじゃないかな。

「そう言う、遥さんには悩み無いの?」
 何時だって遥さんの相談相手になるのに何にも言ってくれないんだもん。
 興味津々で遥さんの返事を待っていると。
「悩みならあるぞ。」
 って答えが返ってきたから、余計にワクワクする。
「何、何?」
 弾んだ声で聞き返せば。
「ん……。亜耶が可愛過ぎてどうしたらいいか……。」
 まさかの答えが自分の事だとは思わず、一瞬呆けてから顔が火照り出す。
 左手で、顔を扇ぐが冷めることがなく、焦っていると遥さんが頭をピンポンと叩く。
「は、遥さん。何言ってるんですか……。」
 動揺しながら言葉にするが、遥さんが優しい目で此方を見つめていた。


 あぁ、もう、遥さんには一生敵わないと思う。




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