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中学生と婚約解消
プレゼント…亜耶
しおりを挟む翌日の朝。
目を覚ませば、自分の部屋のベッドの上だった。
私、何時の間に帰って来たんだろう?
不思議に思いながら、取り敢えずベッドから抜け出し着替える。
ふと見ると、机の上に塾の鞄と一緒に紙袋が二つと見覚えの無い包装されたものが置いてある。
残ってる紙袋の方を確認する。一つは、お兄ちゃん用のマグカップ。もう一つは、悠磨くん用の手袋。
遥さんのマフラーが無くなってる。
何で?
首を傾げながら、考えるも判らず、……包装されてる物を手にする。
よく見ても、自分が買った物ではない。
じゃあ、一体誰が置いたんだろう?
私の部屋に入れるのは、家族と遥さんぐらいだ。
ってことは、遥さんが……。
って思うけど、あんだけ毛嫌いしてる私にプレゼントするかなぁ。
取り敢えず開けてみるか。
丁寧に包装紙を開き(間違ってたときに戻せるように)、箱の蓋を開ける。
そこには、バラをモチーフにしたチョーカーが収まっていた。
こんな大人っぽいのくれるのは、誰?
そう思いながら、そのチョーカーを身に着ける。
姿見の鏡で見れば、浮くこと無く自然と収まっている。
こんなの貰ってよかったのかなぁ。
ちょっと不安に思いながら、部屋を出た。
「おはよう、亜耶。」
部屋を出ると、スーツ姿のお兄ちゃんと鉢合わせた。
「お兄ちゃん、おはよう。」
挨拶を返すと、お兄ちゃんの目線が私の首元に向けられていて。
「それ……。」
何か言いたそうにしてるお兄ちゃん。
私が不思議そうにしてると。
「よかったな。」
って、何故か笑顔で私の頭を撫でてくる。
よかったって、何が?
「それ、遥からだろ?」
確信めいて聞いてくるお兄ちゃんだが、私は首を横に振った。
「違うのか?」
お兄ちゃんが不思議そうに言ってきた。
だから。
「わからないの。起きたら机の上に見知らぬ包装紙があって、開けてみたらこれが入ってたの。」
正直に答えると。
「それなら、遥からだな。」
断言するお兄ちゃん。
私自身、貰った記憶は無いんだけど……。
「亜耶は、昨日の事覚えてない?」
昨日の事?
お兄ちゃんの質問に、昨日の事を思い出してみる。
仲の良いメンバーとパーティーして、プレゼント交換した後に眠くなってきて、ウトウトしてたら遥さんが迎えに来てくれて、一緒に玄関を出た後どうしたんだっけ?
意識がはっきりしない。
私が首を傾げてると。
「遥が、背負って帰ってきたんだよ。」
お兄ちゃんが意図も簡単に答えをくれた。
あっ、そうだ。限界がきてて、遥さんに背負われたんだ。
その後直ぐに寝入っちゃったから、何時帰ってきたかなんて判る筈もない。
「泊まっていけって言ったんだけどな、明日も早いからって、帰って行ったんだよ。」
お兄ちゃんが、苦虫を噛むような顔をする。
遥さん、やっぱり忙しいんだ。
体調崩さなければいいのだけど……。
「後、プレゼント、ありがとうって言ってたぞ」
一つ無くなっていたのは、遥さんが持って行ったからなんだ。
納得いった私だったけど、目の前に居るお兄ちゃんにまだプレゼントを渡してないことに気付き。
「お兄ちゃん、ちょっと待ってて。」
慌てて部屋に引き返して、机の上に置いてあるプレゼントを持って部屋を出る。
「これ、プレゼント……。一日遅くなっちゃったけど……。」
お兄ちゃんに差し出す。
「ありがとう。」
お兄ちゃんが嬉しそうに受け取ってくれた。
「由華さんと一緒に使って。」
そう言葉を足せば、怪訝そうな顔をするお兄ちゃん。
「ペアーのマグカップだから……。」
中身の事を伝えれば。
「そっか。ありがとう。」
耐性の出来てる私でさえ、魅了されてしまう笑顔で言って来る。
お兄ちゃんが、唐突に鞄をゴソゴソとしだす。
何だろうと不思議に思ってると。
「亜耶にもプレゼント。」
そう言って取り出した包み。
私はそれを受けとる。
貰って良いものかと思案してると。
「開けてみな」
お兄ちゃんに催促されて、その場で開封する。
中に入ってたのは、バラがモチーフになったバレッタだ。
えっ、こんなのもらえないよ。
困惑してる私を余所に。
「これ、由華と一緒に選んだんだよ。」
お兄ちゃんが、困ったような顔をして言う。
由華さんと……。
「ありがとう、大事に使うね。」
二人が私の為に選んでくれた事が嬉しくて、素直な言葉が出て来た。
「貸してみな。」
お兄ちゃんに言われてそれを渡すと、手早く私の髪に着けてくれた。
「よく似合ってるよ。」
お兄ちゃんが、ニコニコして言う。
このチョーカーとバレッタ、セットとかじゃないよね……。何処かで、示し合わせたとか無いよね。
何て思ってると。
「遥にも見せてやりたいから、そのままでな。」
って、スーツの内ポケットから携帯を取り出したかと思ったら、パシャパシャと数枚角度を変えて写真を取り出すお兄ちゃん。
「この中から一枚、遥に送っておくな。」
って、お兄ちゃんが満足気に言う。
「えっ、あ、うん。」
動揺しながらそう答えていた。
「これで、暫くは頑張れるだろう。」
っと言う呟きに首を傾げれば。
「何でもない、ほら朝飯食いに行くぞ。」
お兄ちゃんに促され、一階に降りていく。
リビングに入って。
「おはようございます。」
そう挨拶をすると。
「おはよう、亜耶。今度遥さんに会ったら、ちゃんとお礼言いなさいよ。」
お母さんから指摘されて。
「さっき、お兄ちゃんに聞いた。ちゃんとお礼言っておく。」
不貞腐れながらもそう返事を返す。
分かってることを言われると、腹立たない?
「そう、それより時間は大丈夫なの?」
お母さんに言われて時計を見ると、塾の始まる時間が近付いていた。
「朝御飯食べてる時間がない。」
慌て出す私に。
「駄目だよ、ちゃんと朝御飯食べないと頭回らないよ。」
お兄ちゃんに咎められて、席に付く。
「「いただきます。」」
お兄ちゃんと手を合わせて食べ出す。
お行儀が悪いけど、勢いよく掻き込む私。
仕方ないじゃん、自転車で飛ばしても間に合うかどうかの瀬戸際だったんだもん。
「亜耶、塾が終わった後時間あるか?」
突然のお兄ちゃんの問に。
「あるよ。」
口に在る物を飲み込んでから一言だけ発する。
「由華が、四人で食事しようって言ってるんだが、大丈夫か?」
由華さんからのお誘いか…断るわけ無いでしょ。
「いいよ。」
「じゃあ、六時半に駅で待ち合わせな。」
「わかった。」
私たちが話してると。
「亜耶。そろそろ出ないと、本当に間に合わないよ。」
お母さんの声。
わ~っ。
「ごちそうさまでした。」
私はそう言うと、使ってた食器を流しに運んで、自分の部屋に駆け込む。
机の上に置いてある鞄を掴み、その横にある紙袋を鞄に仕舞い階段を駆け降りる。
今日渡せたらいいんだけど……。
「乗ってくか?」
お兄ちゃんが、言ってくれた。私が降りてくるのを待ってたみたいだ。
「いいの?」
聞き返せば、頷くお兄ちゃん。
「ありがとう。」
「ほら、急ぐぞ。」
慌てて靴を履いて、玄関を出る。
私は、助手席を遠慮して、後部座席に座り、シートベルトをする。
「出すぞ。」
お兄ちゃんが、私の方を見て確認するとゆっくりと車を走らせた。
「ねぇ、さっきの四人って?」
疑問に思って聞いてみた。
「俺と由華と亜耶、それと遥だよ。」
残りの一人は、遥さんなんだ。
「由華がさぁ、亜耶とショッピングしたいって言い出したから、付き合ってやって。」
由華さんが、私と?
「由華さ、ずっと妹とショッピングしたかったみたいでさぁ。」
由華さん、兄弟居るよね。
私が、疑問に思ってると。
「由華、男兄弟しかいないよ。」
そうだったんだ。
「だから、妹が出来るって、凄く喜んでる。」
由華さんって、私が思ってた通りの人なんだ。
「ほら、着いたぞ。時間厳守だからな。」
お兄ちゃんが、塾の前で止めてくれた。
「うん、わかった。」
「ほら、頑張って勉強して来い。」
「は~い、行ってきます。」
お兄ちゃんがクスクス笑ってるのを見ながら車を降り、塾の入り口に走って入った。
教室に入ると直ぐに席に着き。
「おはよう、亜耶。」
瑠美ちゃんと姫依ちゃんが声を掛けて来た。
「おはよう。昨日は途中で帰っちゃってごめんね。」
私が昨日の事を謝ると。
「いいよ。亜耶の意外な一面が見れたし……。」
って、意味深な答えが返ってきた。
二人の目が垂れ下がっていて、口許はニマニマしてる。
私、何かやらかした?
頭の中では、疑問符が浮かびまくる。
「あれじゃあ、悠磨くん入る隙無いよね。」
って、嫌らしい笑顔で言って来る。
本当、昨日の私何したの?
何も浮かんでこない私。首を傾げることしか出来ない。
「おはよう、亜耶。」
背後から声をかけられて、振り向けば悠磨くんが居た。
「おはよう、悠磨くん。昨日はごめんね。」
と私が言えば。
「何の事だよ。」
ぶっきらぼうに答えられる。
あれ?
何かそっけない。
やっぱり私何かしたんだ。
どうしよう……。
あたふたする私。
「ほら、席に着け。授業始めるぞ」
塾講師が入って来て、話が途切れた。
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