ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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中学生と婚約解消

決意…悠磨

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 妹の爆弾発言で、頭の中は亜耶の事ばかりになっていた。


 昨日の亜耶、何処と無く慌てていたような……。
 それが、お兄さん含めて四人でのダブルデート……。
 どう考えても、大人の中に中学生が入ってる感じだ(亜耶の身長がそれほど高くない為、下手したら小学生にも見えるかも?)。
 だけど、あの人が亜耶にベタ惚れしてるのは一目瞭然で……。
 でも、亜耶はどうなんだろう?
 今の亜耶の態度を見る限り、嫌悪感しかないような気もする。
 それは、オレの勘違いなのだろうか?
 あの時のあの人に甘える態度は、他の四人もビックリするくらいだったし……。
 あの態度は、あの人にしか見せてないような気もする。
 それは、感に近いものだが……。
 あの人には、心置きなく許しているのだと思うと無償に悔しくなる。
 出会った、年月でこうも信頼関係が違うとは思いたくない。向こうは年上だからだと思うことにすれば、少しはオレの気持ちも変わるのだろうか?


 自問自答を繰り返すだけで、答えは出てこない。
 オレは、どうしたら良いんだ。
 頭をかきむしる。
 あ~ぁ、クソ!!
  
 亜耶への想いは誰にも負けないと自負できる。
 だが、亜耶の気持ちが何処にあるのか、全く見当がつかない。
「あ~~~~~~~ぁ!!」
 部屋で叫び声をあげてしまうくらい、オレは狼狽えていた。
「悠兄ちゃん、煩い!」
 妹の千春がノック無しにドアを開け、そう怒鳴って言うと直ぐに去って行く。
 オレは、ドアを呆然と眺め途方に暮れた。

 トゥルルル……、トゥルルル……。
 その時、タイミングよく電話が鳴り出した。
 画面を見れば義幸からでその電話に出れば、わからない所があるから、家に来てくれとの事で、オレは直ぐに準備をして家を出たのだった。
 コイツなら、相談できると思って……。


 ピンポン。
 家のチャイムを鳴らすとおばさんが出てきて。
「あら、悠磨くん。久し振りね。義幸なら部屋に居るから上がって」
 ニコニコしながらそう告げられ。
「はい、お邪魔します」
 俺はそう告げると中に入り、二階の義幸の部屋へ向かう。

 コンコンコン。
 ヘアのドアをノックすると。
「はい?」
 返事が返ってきたから。
「悠磨だけど、入るぞ」
 そう声をかけてドアを開ければ、そこには居ない筈の人物も居て、絶句する。
 否、奴の彼女だから居ても良いとは思うのだが、流石に二人の邪魔するのも申し訳ないと思い踵を返そうとしたら。
「ちょ、ちょっと待て、悠磨!」
 慌てて声を掛けてくる義幸。
「オレが居たら邪魔だろ? 出直してくる」
 そう告げるが。
「だから、待てって言ってるだろうが。用事が有るのは俺じゃなくて姫の方。悠磨に話したいことがあるんだとよ」
 話したい事?
「電話で話せばよかっただろ? 直接会って話さないといけないことか?」
 怪訝に思いながら、水口を見る。
「亜耶ちゃんの事だと。取り敢えず、中に入って戸を閉めろ」
 亜耶の事?
 オレは気になり、中に入り戸を閉めた。
 そんなオレを見て顎で自分の前に座れと義幸が指す。
 オレは、渋々座ると、水口が義之をちらりと見て確認してからオレを見て。
「昨日だけど……。私、見ちゃったの……」
 って、言いずらそうに口を開く。
 見たって……。
 まさか……。
 オレが不安になってると。
「亜耶が、あの人に背負われてるのを……。それも、とても嬉しそうな顔をしていた」
 あぁ、やっぱりか。
 妹に引き続き、水口もなのか。
 しかも、それって安心してるってことだよな。
「俺はな、見間違いだと思うんだよ」
 義幸がフォローしてくれるが。
「ううん。見間違いじゃない。あれは、亜耶だった。服は違ってたけど昨日塾でしてた薔薇のチョーカーをしてた!」
 興奮ぎみに言う水口。
 確信だな。しかもあの人とも一緒となると、疑いようがない。
「どうするんだよ、悠磨?」
 義幸が心配そうに聞いてくる。
「どうすると言われても……」
 そう、今のオレにはどうする事もできない。
 何をすれば良いのかわからない。
「何もしないの?」
 水口が不満そうに聞いてくる。
「しない。今はできない」
 気付けばオレの口からそう言葉が出ていた。
「何で……。悠磨くんは、亜耶のこと好きなんでしょ! 何で、何もしないの?」
 水口が、苛立気に問いてくる。
「亜耶の事は好きだよ。だけど今のオレは、亜耶にとって未だ物足りない男だってこと」

 そう、あの人に嫉妬するのは、オレに無いものをあの人が手にしてるから。
 オレは、あの人に追い付いたら正々堂々と勝負したいんだ。
 追い付いたところで、亜耶に告白するんだ。

「悠磨くんの意気地無し!!」
 唐突に怒鳴られて、そっちを見れば目を吊り上げた水口が居た。
「やめろ、姫。悠磨には悠磨の考えがあるんだ。俺たちが口出しする事はできない」
 義幸が水口を宥める。
「でも……」
 何か言いたそうにしている水口に。
「ありがとな。水口のお陰で、吹っ切れた」
 オレがそう言うと、驚いた顔をする。
「姫。もう、気がすんだだろ。悠磨も呼び出して悪かったな」
 義幸が申し訳なさそう言う。
 彼女に言われたら、従うしかないもんな。
「否、こっちこそありがとうな。取り敢えずの目標ができた」
 オレは、笑顔で返していた。
 




 
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