ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

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中学生と婚約解消

秘め事…亜耶

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 答辞を読む前に会場を見渡した。
  
 自分から拒んでおいて、来る筈もないって思っていても今までの癖が抜けないのだ。
 吹っ切らなきゃって、思っていても無理で、目だけはあの人を探してる。

 そして、父兄席の中に紛れ込むようにしてる彼の姿を見つけてしまった。
 やっぱり来てくれたんだって、何故かホッとしてる自分が可笑しく思う。
 彼が、今同じ空間に居るってだけで、安心してしまう。


 式は滞りなく進行していき、後は退場だけ。

「亜耶、おめでとう」
 退場間際に彼の声が聞こえてきた。
 私は、彼の方に視線を流す。
 一瞬目が合うと彼は、自分の事のように喜んでくれていて、それが嬉しかった。

 久し振りに見る彼は、少し窶れたかなって、思った。
 仕事、頑張っるんだろうけど、体調崩してなければいいなぁ。
 何て、私が気にする必要ないよね。

  
 教室に戻り、卒業証書を貰うと解散になった。


 ……が、誰一人として教室から出て行こうとしないから、私もそのまま留まっていた。

 暫くすると悠磨くんが、教壇に立った。

「この後、一旦帰ってから、打ち上げ(?)みたいなことをしようと思う。来れる奴は、駅前に十三時に集合。時間厳守で……な。」
 突然の行事。

 打ち上げか……。
 確かに、このクラスでやることの出来る最後のイベントだけど……。
 参加できないなぁ。
 姫衣ちゃんが何か言ってる。
 けど、耳に届いてなかった。

「亜耶?」
 悠磨くんの優しい声が聞こえてきた。
「……ん。ごめん、聞いてなかった。」
 私がそう言うと、姫衣ちゃんが唇を尖らす。
「亜耶は、来れるのかって聞いてたんだが……」
 悠磨くんが、姫衣ちゃんがしただろう質問を繰り返す。
「ごめん。行けない。用事があるから……」
 私は、それだけ言って教室を出た。
  
 ちょっと棘のある言い方だったと思う。
 でも、彼の顔を見てしまったから、戸惑っているんだと思う。
 会わないつもりだったのに、会った途端気持ちが溢れそうになって、押さえるだけで精一杯で、そっけなくなってしまったのだ。


 下駄箱で靴を履き替えて、外に出ると両親とお兄ちゃん、由華さんが待っててくれた。

「おめでとう、亜耶。」
 って、お兄ちゃんが由華さんの肩を抱きながら言う。
「ありがとう!」
 笑顔で言ったつもりだったけど、お兄ちゃんの顔が歪んでいる。その顔で、笑えてないんだなって把握する。
「亜耶ちゃん、おめでとう!」
 由華さんが、目に涙を溜めて言う。
「ありがとう。」
 今度は失敗しないように笑顔を作り、素直に言う。

「お兄ちゃん、遥さんは?」
 って、気付けば声に出して聞いていた。お兄ちゃんは、怪訝そうな顔をして。
「遥かは、来てないよ。」
 って、淡々と答える。

 エッ……。
 でも、会場に居たよ。
 退場の時にちゃんと
「おめでとう!!」
 って、言ってくれたよ。

 何て、口に出せなかった。
 私から遠ざけていたから……。
 今更、どう言えば良いのかわからなくて、口にしなかった。
  

「ほら、亜耶。お祖父様が首を長くして待ってるから、行くわよ。」
 お母さんに言われて、臨時駐車場とされてるグランドに向かった。

 お兄ちゃんが、運転席に座り、助手席には由華さん。
 後部座席には、両親と私が座った。
「出すよ。」
 お兄ちゃんが、エンジンをかけて動き出した。


 
 遥さん。
 来てくれてありがとう。


 そう心の中で呟いた。







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