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中学生と婚約解消
苛立ち…遥
しおりを挟む亜耶の中学最後の制服姿が見えてよかった。
俺にとっては、大事な行事なのだ。
一歩ずつ成長していく亜耶を見たいって、あの時から思っていたから……。見守ることが出来るって俺にとって、尤も重要なことだったから……。
半休取って、来たかいがあった。
自己満足だけど、ちゃんと亜耶に俺の口から伝えることができた。
それだけで、また頑張れる。
俺って、単純だな。
さぁ、仕事、頑張るか。
昼食を終えて、オフィスに戻った。
俺に与えられた部屋に入るとお嬢が居座っていた。
何で、コイツが居るんだ?
誰が入れたんだよ?
「遥さん。お昼ご一緒に……」
お嬢が、俺を上目使いで見上げながら言い出すが、それに被せるように。
「もう、食べた。用がないのなら早々にお帰りください!」
俺は、彼女を睨み付けて言う。
「私、遥さんと一緒に食べようと思って待ってたんですよ。」
唇を尖らせて、自分は怒っているアピール。
うざい。
そんなの、俺の知ったこっちゃない。
「誰も待ってくれなんて頼んでませんよ。俺は、仕事しますので、お引き取り願いますか?」
机に向かいながら言う。
「そんな……。遥さん、許嫁にそんな言い方……」
俺の腕を掴み言ってくる。
「許嫁って……。その言い方止めてくれません。俺は、あなたの許嫁になった覚えはない。それに、"遥さん"って言い方も許してないですよね。その呼び方が出来るのは、鞠山亜耶だけです!」
俺の苛立ちは、沸点に近い。
こんな強引なお嬢は、好きじゃない。
相手の気持ちを把握できない女はっきり言って迷惑。
学生時代から、こういうお嬢ばかりを相手にして来たから、余計に腹が立つ。
「じゃあ、何て呼べば……」
震える声で聞いてくる。
「は? 普通に"高橋"でいいでしょ。……では、お引き取り願います」
俺は、冷笑を浮かべ手をドアの方に向け、帰るように促す。
「……何で、あの娘なんですか……。私の方が……。」
呟く声が聞こえた。
「何でって……。あなたと違って、彼女は俺の心を充たしてくれるんですよ。彼女のお陰で、今の自分があるんですから……。彼女の存在その者が、俺の生き甲斐なんです。他人のゆかり嬢に指図される謂れはない!」
って、何でこんなことを言わなければならないんだ。
「私は、幼少の頃からあなたの側に立つために色々と習い事をして来たんです。それなのに何故、貴方は、私を拒絶するのですか?」
お嬢は、俺にすがり攻めてくる。
「拒絶……ねぇ。じゃあ、言わせて貰います。亜耶との婚約を破棄しろって、相手の会社まで乗り込んでいき、直談判することは、令嬢として如何なものかと思いますよ。亜耶は、あなたみたいなことする娘じゃない。あの娘は、身を引くんですよ。誰かが犠牲になるのを良しとしない。なるのは、自分だって思ってる娘です。そんな彼女を護りたいって思うのは、男心です。それに俺は、あなたに一度だって心動かされてないんです」
只鬱陶しいだけの存在。
「……そ……そんな……。私は……あなたの事を……愛して……るんです……。」
涙を溜め今にも溢れそう目で、俺を見つめてくる。
そんなことしても、無駄なんだが……。
「悪いけど、何されてもあなたには揺るがない。さぁ、俺の気持ちがわかったなら、お引き取り願います」
俺は、ドアの方に歩み寄り戸を開けて、退出を願った。
仕事の邪魔だ、さっさと退場願いたい。
お嬢は、ゆっくりと此方にやって来る。その頬には涙の筋が幾つも伝うが俺は、拭ってやることすらしなかった。
そんなことして、勘違いされても困るし……。
「……」
何も言葉を交わすことなく彼女は出て行った。
俺は、そのドアを閉めて鍵を掛けた。
ハァーーー。
特大の溜め息。
机の上に備え付けられてる受話器を取り、姉に連絡し姉から受け付けにゆかり嬢を俺の部屋に入れるなと通達をしてもらう。
あのお嬢なら、懲りる事無く何度も足を運んでくるに違いない。だったら、前もって伝えておくに越した事無い。
亜耶。
早くお前をこの腕に抱き締めたい。
そして、俺の心を癒してくれ。
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