ヒ・ミ・ツ~許嫁は兄の親友~(旧:遠回りして気付いた想い)[完]

麻沙綺

文字の大きさ
122 / 145
高校生編と再婚約の条件

優しさの裏に…亜耶

しおりを挟む

  やっとテストが終わった。
  解放感に浸る間も無く、又イベントが……。
  委員長という肩書きがある以上は、やらなきゃいけない。
  って言うか、この学校イベント多くないですか?
  何て、現実逃避してたら。
「亜耶ちゃん。行くよ。」
  龍哉くんが、声をかけてきた。
「はーい。」
  私は、嫌々返事をした。
「そんな嫌そうにしないの。って、亜耶ちゃん、何時もと違わない。」
  移動しながら、龍哉くんが言う。
「えっ、あ……。そっかなぁ……。」
  やっぱり、わかっちゃうかな……。
「亜耶ちゃんが弱ってるの滅多になさそうだけど、それこそ、男が付け入る隙になってるよ。気を付けて。」
  龍哉くんが、心配して忠告してくれる。
  わかってるんだ。
  だけど、声だけでも聞きたいって思っちゃダメなのかなって……。
「何かあったら言って。俺で力になれることがあれば、手伝うから。」
  ニッコリと笑顔を向けられて、私は頷いた。
「ありがとう、龍哉くん。」
  龍哉くんの優しさに、お礼の言葉が口から漏れた。
「ほら、急ごう。」
  龍哉くんに促されて足早に廊下を歩いた。



  龍哉くんが先に教室に入って行く。
「ほら、亜耶ちゃん。俺等が最後だよ」
  龍哉くんが振り向き様に言う。
  彼に続いて中に入ると皆席に着いてる状態だった。
「えっ、本当だ。遅くなってすみません。」
  そう言って、頭を下げる。
  遅くなったのは、私のせいだしね。
  それから、宛がわれている席に着くと視線を感じて目を向ければ、悠磨くんと目が合う。
  私が、軽く手を降れば悠磨くんが、ホンノリ顔を赤らめる。その隣に座ってる彼女は、こっちを睨んできてるけどね。
「全員、揃ったところで始めるか」
  生徒会長の声が教室に響いた。



  例年通りなら、学年毎のレクだけで、この集まりは必要なかったそうだ。
  今年は、何故か上級学年から不満(?)が出たらしく、全学年レクをする事になったという事だ。
  レクの内容は、10ヶ所あるチェックポイントを確実に通過する事。その10ヶ所で問題やお題を解くというもの。
  班も学年ごちゃ混ぜなので、前日の登校時間に校門で生徒会がクジの入った箱を持ってるから、それを引くっというもの。
  誰と一緒になるかわからないとなると、気を引き締めないといけないなぁ。

  そんな事を考えてたら。
「亜耶ちゃん。大丈夫?」
  龍哉くんが心配そうに私を見てくる。
「うん。大丈夫だよ。心配かけてごめんね。」
  笑顔を向けたんだけど。
「そんな顔で言っても心配になるだけだよ。」
  へっ?
  今の私、どんな顔をしてるの?
「凄く、不安そうな顔してる。」
  あーあ、ダメだな。全部見透かされてる。
「無理して笑うな。俺たちが居るだろうが……。俺に言いにくければ、梨花や加藤、近藤に話を聞いてもらいなよ。それだけでも不安は和らぐだろ。」
  龍哉くん、優しいな。
  遥さんが居なければ、惚れてたに違いない。
「ありがとう。」
  私は、お礼を言うしか出来なかった。



「亜耶。部活行くぞ。」
  放課後、唐突に悠磨くんが教室の入り口で呼び出した。
「あ、うん。」
  私は、そう頷くと鞄を掴む。
「亜耶、また明日ね。」
「バイバイ、亜耶ちゃん。」
  梨花ちゃんや龍哉くん達が、声をかけてくる。
「うん。また明日ね。」
  私はそう返して、入り口に着くと悠磨くんが手を繋いできた。

「亜耶、どうかしたのか? 浮かない顔をしてるが……。」
  悠磨くんが、私の顔を覗き込んでくる。
「どうもしないよ。」
  って答えるしかない。
「ふーん。オレに言えないことなのか?」
  何時になく突っ込んでくる悠磨くん。
  だって、何て言えばいいの?
  付き合う前は、悠磨くんの事いいなって一緒に居たいって思ってたのに……。今じゃ、遥さんが傍に居ないと不安で押し潰されそうになってるなんて、言えない。
「なぁ、亜耶。オレに何か言うことあるんじゃないか?」
  悠磨くんが、不安気に聞いてくる。
「なんで……。」
  私は、俯きながら、そう言うしかなかった。
「ただ、何となくそう思ったんだ。気にするな。」
  そう言って、手の繋いでない方の手を私の頭にのせた。
  

  悠磨くん……。
  あなたの優しさが、時には残酷になるんだよ。


  私の胸の内にあるものに気付き始めてるのがわかった。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

先生

藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。 町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。 ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。 だけど薫は恋愛初心者。 どうすればいいのかわからなくて…… ※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました

専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。

お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します

縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。 大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。 だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。 そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。 ☆最初の方は恋愛要素が少なめです。

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました

藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。 次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。

お嬢様は新婚につき誘惑はご遠慮します

縁 遊
恋愛
初恋の人との恋を実らせて結婚したお嬢様の高宮 菫(たかみや すみれ)。 新婚の菫奥様には悩みがいっぱい。 旦那様には溺愛されてどう対応して良いかも分からないし、結婚してから地味な化粧を止めたらいろんな人から誘われる様になってしまって…こちらも対応に困ってしまう。 天然で憎めないお嬢様(新婚奥様)の何気ない日常のお話です。 溺愛いえ…激甘にする予定です。 苦手な方はご遠慮下さい。 作品は不定期更新になります。 これは『お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します』の続編です。

溺愛ダーリンと逆シークレットベビー

吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。 立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。 優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?

処理中です...