127 / 145
高校生編と再婚約の条件
班での自己紹介…亜耶
しおりを挟むレク当日。
今日は、ジャージ登校。
天気も良いし、体調も万全とは言えないが、班に迷惑をかけるほどでもない。
うん、大丈夫。そう思っていた。
「おはよう、鞠山さん」
そう声をかけてきたのは、湯川くんだった。
「おはよう、湯川くん。今日はよろしくね」
笑顔でそう告げた。
「無理しないようにな。真由も心配してるから……」
真顔で言う湯川くん。
私が知ってる真由って、芹沢真由ちゃんかなぁ?
「その顔は、疑問に思ってるのかなぁ。鞠山さんが思ってる通りの人であってるよ。彼女と俺の関係は、婚約者って言えばわかる?」
私の考えがわかったのか、湯川くんが説明してくれた。
「真由ちゃんのフィアンセなの! 知らなかった。」
驚いて、そう言うと。
「うん、中学の時にね決まったんだ。今は、一緒に住んでるよ。真由が、鞠山さんに会いたがってるから、よかったら今度遊びにおいで。」
少し照れたように答える湯川くんが、珍しくて二度驚いた。
真由ちゃんか……。
確か、遥さんの従兄弟になるんだよね。
「いいの? お邪魔じゃない?」
二人の家にお邪魔するってことは、そういうことだよね。
「大丈夫だよ。真由に会ってあげて。話がしたいみたいだし……ね。」
お茶目な一面を見せてくれる。
「うん、わかった。私も真由ちゃんに会いたいしね。」
三年振りになるのか……。なんだか、懐かしいなぁ。
あの頃は、遥さんに引っ張り廻されて、私と同じ年だからって、真由ちゃんを紹介されたんだよね。同じ年の娘と一緒の方が、楽しいだろうって、遥さんが気を使ってくれてたんだよね。
湯川くんと話してると。
「おはよう、鞠山さん、透。」
篠崎先輩が、声をかけてきた。
「おはようございます。今日は、よろしくお願いします。」
一様、頭を下げた。
「よろしくされます?」
侮辱的な笑みを浮かべ返される返事。
「おはよう。湯川、鞠山さん。二人は、仲良しだったんだ。」
私達を伺うように聞いてくる泉さん。
「おはよう、泉。そうだよ、共通の友人が居るから、その人の事を話してたんだ。」
湯川くんが笑顔を浮かべて言う。
ウソはついていない。ただ、裏事情を知らない彼女からしたら、疑わしいことだと思う。
「へぇ~。悠磨くんは、それ知ってるの?」
そこ気になるよね。
「知らないよ。だって、俺の婚約者の事だし……。鞠山さんは、ある人の紹介で知っていて、仲良しなんだよ。」
湯川くんが、いたって普通にカミングアウトしてるけど、大丈夫なのかなぁ。
「そうなんだ。初耳だ。」
そう言ったのは、篠崎先輩。
なんか、空気悪くなってないですか?
外に居るのに。
「透くん、おはよう。今日は、よろしくね。」
綺麗なお姉さまが、湯川くんに声をかける。
「桜先輩。よろしくお願いします。」
知り合いなのかな?
笑顔で答えてるよ。
「透?」
また声がかかる。今度は、疑問符付きで。
「兄さん。久し振りです。」
あれ? 久し振りって……。
「あっ、えっと、取り敢えず、自己紹介しとく?」
って、湯川くん。
「じゃあ、俺から。湯川透です。」
言い出した湯川くんが言う。
でも、湯川くん、ここに居るメンバー全員知ってるっぽいんだけど。湯川くんの知り合いなら、大丈夫だと思うけど……。
私の疑問に思ってると。
「一年の小林泉です。」
泉さんが素っ気なく挨拶してる。
泉さんって、名前だったんだ。名字で読んだ方がいいよね。
って言うか、悠磨くんが居る時と全然態度違う。どれだけ、猫被ってるんだろう?
そう思ってると皆の視線が私に向いていたので、自分の番だと思い。
「一年の鞠山亜耶です。よろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げた。
頭を上げると、さっきの三人がアイコンタクトを取っていた。
「二年の篠崎勇です。」
篠崎先輩が頭を下げる。
「三年の桜あゆみよ。よろしく。」
桜先輩が微笑みを浮かべて言う。
「同じく、三年の湯川流馬です。透とは従兄弟になる。」
湯川くんの従兄弟なんだ。どことなく雰囲気が似てると思った。
「湯川が二人居るので、区別するために俺の事、透と呼んでください。」
湯川くんが、笑顔で言う。
私は、それに頷いた。
「全員揃ってるから、報告してくるな。」
そう言って、湯川先輩がテントの方に歩いて行く。
「ねぇ、鞠山さん。亜耶ちゃんって呼んでもいいかな?」
桜先輩が、恐る恐る聞いてくる。
桜先輩、もしかして家の事知ってるのかな?
「いいですよ。」
私は、笑顔で答えると満面の笑みを浮かべる。
「亜耶ちゃん。私の事"あゆみ"って呼んでね。」
桜……あゆみ先輩が返してきた。
「あゆみ先輩……。」
私が、名前で呼ぶと嬉しそうに頷き。
「そうそう。後、何か困ったことがあったら相談してね。」
私の耳元で言う。
あぁ、やっぱり家の事知ってるんだと思った。
全校生徒の出欠席の確認が取れたところで、開会宣言をして、最初のお題が出た。
5班ずつ(番号1~30、31~60ってかんじ)で、大縄を10回跳ぶだった。
一班から五班まで集まり、三年生のゴツイ先輩二人が縄を廻す役を勝手出てくれて、なんなく10回跳ぶことが出来た。
「さて、何処から回りましょうか?」
湯川先輩が校内地図(チェックポイントが書かれてる)を広げて言う。
「だったら、時間がかからない場所から行けばいいんじゃないですか?」
篠崎先輩が言う。
スタート地点とゴール地点は今居るグランドなので、ここから近い場所のチェックポイントは、バックネットだけど……。そちらをチラリと見れば、人だかりが出来ていて、何を行ってるかわからない。
「ゴールから一番遠いところから戻ってくるのもありだと思います。」
小林さんが言う。
一番遠い場所って、地図で見るとプールになるんだけど……。
「そうだな。まずは、プールに行くか。」
湯川先輩が、決めて移動する。
「鞠山さん。今日、もしかして体調悪かったりする?」
湯川くん……透くんが、小声で聞いてきた。
「アハハ……。バレちゃったか……。他の人には、言わないでね。たぶん気持ちの持ちようだと思うから。」
私も小声で返した。
透くんが、心配そうな顔をして。
「無理だけは、しないでね。俺が、あの人に怒られるから。」
透くんが言ってるあの人って……まさかね。だけど、真由ちゃんが婚約者なら、有り得るのかな。
「うん。ありがとう。」
そんなやり取りをあの二人がどう受け止めたのか、この時予想できなかった。
0
あなたにおすすめの小説
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜
ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。
そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、
理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。
しかも理樹には婚約者がいたのである。
全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。
二人は結婚出来るのであろうか。
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します
縁 遊
恋愛
幼い頃から可愛いあまりに知らない人に誘拐されるということを何回も経験してきた主人公。
大人になった今ではいかに地味に目立たず生活するかに命をかけているという変わり者。
だけど、そんな彼女を気にかける男性が出てきて…。
そんなマイペースお嬢様とそのお嬢様に振り回される男性達とのラブコメディーです。
☆最初の方は恋愛要素が少なめです。
出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜
泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。
ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。
モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた
ひよりの上司だった。
彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。
彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
お嬢様は新婚につき誘惑はご遠慮します
縁 遊
恋愛
初恋の人との恋を実らせて結婚したお嬢様の高宮 菫(たかみや すみれ)。
新婚の菫奥様には悩みがいっぱい。
旦那様には溺愛されてどう対応して良いかも分からないし、結婚してから地味な化粧を止めたらいろんな人から誘われる様になってしまって…こちらも対応に困ってしまう。
天然で憎めないお嬢様(新婚奥様)の何気ない日常のお話です。
溺愛いえ…激甘にする予定です。
苦手な方はご遠慮下さい。
作品は不定期更新になります。
これは『お嬢様は地味活中につき恋愛はご遠慮します』の続編です。
溺愛ダーリンと逆シークレットベビー
吉野葉月
恋愛
同棲している婚約者のモラハラに悩む優月は、ある日、通院している病院で大学時代の同級生の頼久と再会する。
立派な社会人となっていた彼に見惚れる優月だったが、彼は一児の父になっていた。しかも優月との子どもを一人で育てるシングルファザー。
優月はモラハラから抜け出すことができるのか、そして子どもっていったいどういうことなのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる