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【3‐1】ステップアップ
長いようで短かった道
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沙蘭の城、客間が賑やかだ。夜も深くなるというのに、誰も就寝しようとしない。
サキはコーディに本の感想と気になる点の質問をしている。
作家にとって、読者の感想は何よりも励みになる。目を輝かせながらコーディはお茶を飲んで聞いていた。サキは自分がフィラノスの大図書館の地下で見た出来事を話している。最初の世界の生贄と最初の邪神龍が封じられていたことだ。
サキは絵がうまく描けないのだが、紙に万年筆を走らせて熱心に説明している。
執筆と原稿をまとめるのを手伝ったローズも、サキの話に興味を示していた。
もしかしたらこの話は次につながっているのかもしれないと、期待を寄せながら。
客間の隣の大部屋では、ジェフリーが縁側に腰掛け、小雨が降っている外を眺めている。しとしとと降る雨。冬も近くなったせいで虫の声は少ない。だが、紅葉の色が残った植物に滴る雨露は趣がある。雲間から時折覗く朧月。季節の狭間を見ているようで味わい深い。
ミティアは寛いでいたジェフリーに声をかけた。
「ちょっといいかな?」
ミティアは温かいお茶を持って渡した。
「寒いよ?」
「確かに冷えて来たな」
ジェフリーは雨戸を閉めて、部屋の中に入った。受け取った暖かいお茶がじんじんとするくらい、寒かったようだ。茶葉の香りが癒しを誘う。
大部屋だがテーブルを出さずにいた。大人数に広い部屋で寛いでいる。
小雨で冷えた空気が部屋に入り込んでいた。。
城では重要会議があるなどと人払いされ、いつもなら誰かしら話に来たがるが、今回はその様子がない。
込み入った話がしやすいのだが、大変な時期に来てしまったと申し訳なくも思う。
ミティアはジェフリーに質問をした。
「先生と話した?」
ジェフリーは立ったまま動きを止める。その質問をされるだろうとは思っていたが、まずは座るべきだろう。
ジェフリーは肉厚の座布団を差し出した。ジェフリーも自分のぶんを取り出し、座る。
ちゃぶ台もないので、お茶を持って座っているだけだ。話す内容に合わず、和んでしまった。相手がミティアであるせいかもしれない。
「先生ってここに残りたいのかな?」
「そういうわけじゃないと思う。善良な一般市民が、魔法だの神族だのついていけないって弱音を吐いているだけだ。そんなに気にすることじゃない」
ざっくりと補足したが、だいたいは合っている。竜次は魔法に長けているわけでもないし、知識もサキやローズには敵わない。本人はたびたび気にしていたことだ。
今回も気にしているだけで本心ではない。ジェフリーはそう信じていた。
「キッドが話に行っただろ。案外、二人して飲んだくれてたりしてな?」
ジェフリーは楽天的な考えだ。
真剣に悩んでいたミティアはしょげてしまった。肉親に対して、もっと親身になっているのかと思っていたからだ。
「キッドは俺より年が近いんだから、兄貴と話がしやすいだろうさ」
「そうかもしれないけど、ジェフリーは先生の心配をしないんだね。血のつながった兄弟なのに」
小言を言うようになったのかと、ジェフリーは含み笑いをしている。ミティアの少し怒りながらむくれた表情も見慣れたのに、じっと見てしまう。
ミティアはじっと見られていることに反応した。
「な、なぁに?」
何でもないのに和んでしまう。ミティアの存在は大きい。ジェフリーは思ったままの気持ちを言う。
「いや、こんなに何でもないことが、いつか、当たり前でなくなるときが来るのかって思っただけだ」
「じっと見てると思ったら、今度はどうしたの!?」
ジェフリーは急に今を噛み締めるようなことを言い出した。いつも人を翻弄する側のミティアが動揺している。
今は竜次の話をしているのではないのだろうかと疑問が残るが、ジェフリーの中では手放しで終わっていた。実際にキッドの方が竜次と年齢が近い。お互いに気持ちが向いているのにどこか素直になれず、言い訳を見つけては避けるような行動が多い。これをいい機会に、二人が親密になるのではないかと期待を寄せていた。
こんな心配は余計なお世話だ。ジェフリーはそう思いながら、こうやって考えていることも楽しみの一つではあった。
ジェフリーも旅を通して考えが変わった。自分はこの旅を楽しんでいる。だが、もっと楽しみたいのが本心だった。今は目的がある。
「普通に旅が楽しめるようになりたいな」
「そうだね。わたしはジェフリーと一緒なら、どんな場所でも、冒険でもいいよ」
ただ座って話をしているだけなのに、この瞬間でさえ大切に思える。
普通に何でもない旅が楽しめる日が来るなんてあるのだろうか。
ジェフリーはぼんやりと考えた。旅の終わりが見えているはずなのに、まだ何かある気がしてならなかった。
ミティアは俯き、ぽつりと呟く。
「兄さんと戦っておしまいだといいね。本当に、それだけなら……」
ミティアは暗くなりそうなのを自らかぶりを振って払う。顔を上げてつらそうにしながら、一応は笑って見せた。
「あのね、さっき、キッドと話したの。わたし、兄さんとちゃんと向き合って理由を聞きたいし、場合によっては戦うことになると思うけど。そうなったら力を貸してほしい」
少し視線が落ちた。自信がないみたいだ。ジェフリーは、その落ちた視線を拾うように覗き込んだ。
「嫌なんて言わないさ。これまでだって一緒に頑張って来たじゃないか。最後まで一緒だ。もちろんそのあとも……」
「ありがとう」
ミティアは恥ずかしがらず、目を逸らさなくなった。はにかみながら顔を上げる。だが、謎の視線が気になって仕方がないようだ。
隣の部屋で話をしていたはずの三人と二匹が、じっと一部始終を見ていたようだ。覗き見、盗み聞き、いや、両方だ。
中でも人間観察が大好きな圭馬は、二人をからかうような発言をする。
「え、なにこれ、今時珍しいタイプの純愛?」
あまりにつまらなさそうに言うものだから、ショコラが指摘を入れる。
「圭馬チャン、面白くなさそうに言っちゃダメなのぉん」
圭馬はドロドロと人間味が溢れる方が好きだ。ミティアとジェフリーは気持ちが真っすぐだ。毛繕いをしながらあくびをしている。つまらなさそうだ。
ジェフリーは気分を台無しにされたと、舌打ちとため息をついた。
「なんつー趣味だ。まったく……」
こんな場所で勝手に和んで話している方も悪い。場所を選ばないと、要らぬ誤解を招きそうだ。
ジェフリーは乾いた髪に指を通し、軽く解かして向き直る。サキとコーディとローズ、使い魔の圭馬とショコラ。見慣れた仲間のはずなのに、監視されているような気がしてならない。
「何だ、その輝いた目は。特にコーディ」
「ん? 何って?」
手帳と万年筆を持っている。コーディは何かをメモしている様子だ。
ジェフリーは視線が自分に向いていたので、怪訝な表情をしている。
「今度は恋愛小説でも書くのか?」
「え、違うよ。これは自叙伝の方。私が歩んだ道を本にするの。この旅をね? ジェフリーお兄ちゃんのことが知りたいんだけど?」
「俺の話なんて面白くないぞ」
「えぇー……」
油断したらこれだ。話せることは限られるし、面白いようなことはない。
だが、ジェフリーの横から熱い視線を感じる。ジリジリと燃えそうなくらい。そしてもう深夜だというのにキラキラと輝いた彼女、ミティアの視線だ。
「わたしもジェフリーのこと、知りたい!」
必殺上目遣いが炸裂する。このいくらでも甘やかしたくなる仕草。
どうしてこんなことが平気で、ごくごく自然にできるのかが、知りたいくらいだとジェフリーは頭を掻きむしって取り乱す。
夜も深いというのに、サキはにこにことしている。
「僕も知りたいです。ジェフリーさんは、自分のことをあまり話してくれませんよね?」
ジェフリーはサキの様子に唖然としている。ジリジリと迫る包囲に苦笑いをした。
「どうしてサキまで……」
「ずるいじゃないですか。人に散々過去の干渉をしておいて、自分は内緒ですか?」
「知ってどうするんだよ」
「もちろんリサーチです! 何気ないものの中に弱点が潜んでいるかもしれませんし?」
正座で人差し指を立てながら自信満々に言うサキ。ジェフリーはさらに脱力した。
「お前、何か、いい性格になったな」
「ふっふっふっ、もっと褒めてもいいんですよ!!」
大きく肩を落とすジェフリー。何だか、皆に弄ばれている気がしてならない。
時間があるからと言って、こんな流れになるとは思わなかった。
寝ろと言って逃げたいが、目を輝かせている者が約三名。ジェフリーは観念した。
「俺の何を知りたい?」
「とりあえずプロフィールかな」
「そう言って、全員の聞き出すつもりなのか?」
「え、もう聞いてある」
コーディはさらりと言う。
ジェフリーはお茶をひっくり返しそうになった。いつ聞いたのかと疑問にも思ったが、旅の道中でいくらでもチャンスはありそうだ。
一緒にいないときなどいくらでもあった。
「いや、前に自己紹介したよな? それとはまた別に何が知りたいんだ?」
「そうだなぁ、剣術学校の時代かな?」
空気が凍るようだ。ジェフリーは瞬きを止めてしまう。
「よりによって俺の暗黒時代を知りたいなんて、正気か?」
「あんこくじだい……?」
ミティアの純粋な眼差しが突き刺さる。抉られる古傷。
だが、いつかは知るのだろう。ここで話してしまってもいいかもしれない。
「あんまりいい話じゃない。それに長いから向こうで話そう。大部屋は寒い」
「お茶淹れ直すデス」
渋りながら話す雰囲気になってしまい、重い腰を上げた。ローズがどこからか茶筒を持って来て急須にお茶を淹れ直している。
ジェフリー・アーノルド・セーノルズ。
フィラノスに身を置いていた数年は、地位も安定した生活も、自分の力で得たものではなかった。
ただ、敷かれたレールに乗って、努力をしなくていい、苦労もしなくていい生活。
意味なんて理解していなかった。ただ、ちょっと違った生活に憧れていただけ。
それなりの年齢になって遊んでくれなくなってしまった兄と姉。
毎日いくつもの習いごとをさせられ、昼夜問わず勉学に励む。自分もそうなるのではないかと面倒になってしまった。
彼が剣術学校に転進したのは、魔法学校の学費が払えなくなったからではない。
魔導士狩りという理不尽な殺人と、強姦されながら殺された許嫁。それまで何の努力もしていなかったのに、ただ名家の令嬢が見初めた許嫁と言うだけで楽をしていた。
そんな人間が、たかだか子どもが戦うなんてできなかった。
逃げた。泣き叫ぶカサハを置いて。
思い出して、気持ちが悪くなった。
違う。
忌まわしい過去に気分が悪くなったわけではない。
どうやって、どこへ逃れたのか。
なぜ、自分は助かったのだろうか。そこが思い出せない。自分だってあの戦火の中で無傷だったわけではない。怪我をした。どこかを。どこを?
剣術学校には行った。だが、その過程が思い出せない。
ジェフリーは頭を抱え、思い出そうと懸命になる。目の奥がズキズキと痛む。表情は歪み、発汗した。
「ジェフリーさん?」
ジェフリーはサキの声で我に返った。かぶりを振って顔を上げる。
「あぁ、ごめん。何でもない」
いったんこれを忘れることにした。お茶を口に含むと暖かい感覚が走る。正直に言うと、今は自分が自分ではないような気がしてならない。ジェフリーは自分の存在が怖くなった。だが、今は別の話をするべきだ。話を進めた。
「剣術学校へ行った。それまで努力も苦労もしたことがない俺が、いきなり大人用の剣を持って追い付こうと必死だったからな。魔法学校で過ごした数年分は卒業がずれ込むはずだったが、結局半年くらいで済んだな。俺は思ったより優秀だったらしい」
それを聞いたサキは疑問を抱く。
「剣術学校っていくつかクラスがありますよね? それによって通う年数にばらつきがあったような気がしますが、確か一番つらいって評判のクラスでしたっけ?」
思いのほか、サキが話題を誘導した。ジェフリーの弱点を知りたいだけかもしれないが、興味を持っていた。
ジェフリーは深く頷いた。
「卒業する人数が入ったときの半分。しかも、何人か卒業までに命を落とす」
「よく死なずに卒業しましたね」
「仲がよかった先輩が野営中に事故で死に、慕ってくれていた後輩はみんなを逃がすためにオオカミの群れを引き寄せて死んだ。いずれも、目と鼻の先で見てる」
ジェフリーは想像を絶する極限状態も味わった。これも勉強の一環だと話すと、ミティアが同じ剣術を学べる気がせず、口を窄めている。
コーディが万年筆を握る手を止める。
「ごめん、想像以上だった」
「卒業したら役人や、大きな国の兵士や騎士団に入るらしいからな。身を投げて戦う精神はこうして身に付けるのかと思った。それ自体は普通だ。剣一本持たされて無人島に飛ばされ、『一ヶ月生き延びろ』なんて訓練めいたものもあった。それ程強靭な人間なら、どこもほしがる」
自分が体験した一番ひどかった話が無人島での一ヶ月サバイバル。就学生がやるにしてはむごたらしい。
「俺の所はまだマシだった。違う島に飛ばされた班は、生きるために殺し合いをしたって聞いた。最終的には誰も生き残れなかったらしいけど……」
ついに皆は黙ってしまった。黙ったのは人間だけ。
「のぉ、ジェフリーさぁん? 何故それだけの経験をしておいてなお、人間らしくいられるのかを質問してもいいかのぉん?」
「ばあさんは惚けた振りをして、何が聞きたい?」
「人が次々死ぬのを見ても、麻痺せんかったのかのぉ?」
ショコラの質問が重く、深い意味を感じた。
おそらくジェフリーの本質を見抜こうとしている。その意図は伝わった。
「周りの人間が死ぬのを見ても、なんにも感じなくなって行く。そんな人も見たさ。ある意味、俺は正気じゃなかったんだろうな。自分は死にたくない。あんな人になりたくないって、思って耐えた」
ジェフリーが皆の顔色を窺う。辛辣な表情で、見ている側も気落ちしてしまいそうだ。
「誤解しないでほしいけど、俺は死ぬのが怖いし、この中で誰か死ぬなんて絶対に嫌だからな?」
弱点どころか、ジェフリーの人間性を再認識した。サキは決意を固める。
「よし、僕も、もっと強くならなきゃ……」
「お前はもう強いだろ。立派な肩書きが付いているし」
「それとこれとは違います。僕は守りには長けていませんので、やはり新しく色々手を付けて、もっと皆さんをサポートできるようにならないと!!」
こんなに逞しい大魔導士が、サキ以外どこにいようか。サキには別の意図もあるようだ。それは完全にジェフリーの影響を受けている。
「僕も意識したら仲間の生存率は上がります。そうでしょ? 僕だって誰も失いたくはありません」
サキの意識が高い。圭馬はとある指摘を入れる。
「キミさぁ、ホントはルシフ兄ちゃんたちに手を封じられたの、悔しいんでしょ?」
サキは否定しない。必要以上にルシフたちには関わらないと先ほどまとまった。
「また邪魔されたらそれこそ頭脳戦です。僕は、目的のために手段を選ばないような人に絶対負けませんから!」
サキなりの正義だ。
目的のためなら何かを犠牲にしてもいいなんて許せない。これ以上、人の命を奪う、危険に晒すことは何としても阻止したい。
だが、圭馬はその意気込みを挫くような指摘をした。
「ルシフ兄ちゃんはこの時間軸の人間じゃないんだよ!? 下手をしたらキミ、返り討ちに遭うかもしれない。過去の人なんだ。昔はもっと魔法の力が豊かだったから、現代の衰退しつつあるこの世界で大魔導士だとしても、まぁ、ちょっとはホネがあるかなぁくらいにしか思われていないよ」
毒舌鬼畜な圭馬にしてはやんわりと言ったが、内容は厳しいものだった。だが、それでもサキの根性はここからという勢いだ。
「よかったです。まるっきり、足元にも及ばないと言われなくて」
「まぁ、意識は大切だけど、もうぶつからないかもしれないし。瘴気の魔物を追っているみたいだからね。用が片付けば、またどこかへ消えてしまうんだろうと思うけど」
圭馬が気掛かりなのは、自分や圭白と和解する気がないのだろうかと言うところだ。また遭遇した際に問い詰めるつもりだが、先に仕掛けられてしまうことも予測していた。
ルシフがどれだけ強いのかは、圭馬が一番知っている。種族を越えた友だちだからだ。
「脱線しましたが、僕はジェフリーさんがまともな考えを持っていて安心しました」
サキは笑って深く頷いた。ジェフリーの話をしていたのだ。いつの間にか、そのルシフと言う男性の話になってしまったが。
ジェフリーは思うところがあるのか、カリカリと頭を掻いている。
「そのルシフって人、どっちかって言うと厳しい環境を切り抜けたからそういう考えにいたったんじゃないのか? 俺の同期と考え方が似てる」
圭馬はピンと耳を立てて言う。
「うわぁ、ジェフリーお兄ちゃんったら鋭いね。そうだよ。種族戦争の戦火に彼は巻き込まれたことがあるもの。人がいっぱい死ぬところを見たって話を聞いた記憶があるよ」
「その人を肯定できるわけじゃないが、考えが理解できないかと言われたら、そうでもない。その考えにいたった詳しい経緯は知らないけど、焦っているんだろうな。そういう人間は多少の犠牲を払ってでもまっとうしようと考える」
一定の理解こそあるが、できたら理由が知りたい。
話の中で異常なほどに食いつき、さらに目を輝かせるものが一人。種族戦争の重要な情報源があるかもしれないと目論んでいた。それはコーディだった。
ジェフリーがコーディの輝いた目に気付いた。
「コーディ、その目は何だ」
「な、何でもないよ?」
接触を試みたいという目をしているコーディだ。だが、その隣にいたミティアもその考えらしい。
「わたしも、一度はちゃんと話す場を設けた方がいいような気がする」
「話が通じる相手ならだな」
「目的が一緒かもしれないなら、もしかしたら……」
「ミティア、お前、またそうやって……」
クディフのときもそうだった。自分の命が脅かされたというのに、またかと呆れてしまう。ジェフリーは自身が頑張ればいいとは思うが、果たして彼女や仲間を守り切ることはできるのか。まともに話せるのかが問題だ。
もう会わないかもしれないのに、すっかりその話で盛り上がってしまった。
黙って聞いていたローズも何かの刺激を受けたようだ。
「ワタシも筋トレでも始めましょうかネ」
やる気が出て来たらしい。ただ、ジェフリーのことだけを話すには足らず。脱線しながらだったが、結果として皆の意識が高まった。
ぼちぼちと雑魚寝が始まる。
こんなのは日常なのだが、そろそろ男女別なんて細かく気にしなくなって来た。
節操がなくなって来たのかもしれないが、まるでこの一行が一つの家族のようだ。
小雨も止み、静かに夜が明ける。
まるで、降っていた雨が一行の心だったかのように澄んだ空気を運び込む。
サキはコーディに本の感想と気になる点の質問をしている。
作家にとって、読者の感想は何よりも励みになる。目を輝かせながらコーディはお茶を飲んで聞いていた。サキは自分がフィラノスの大図書館の地下で見た出来事を話している。最初の世界の生贄と最初の邪神龍が封じられていたことだ。
サキは絵がうまく描けないのだが、紙に万年筆を走らせて熱心に説明している。
執筆と原稿をまとめるのを手伝ったローズも、サキの話に興味を示していた。
もしかしたらこの話は次につながっているのかもしれないと、期待を寄せながら。
客間の隣の大部屋では、ジェフリーが縁側に腰掛け、小雨が降っている外を眺めている。しとしとと降る雨。冬も近くなったせいで虫の声は少ない。だが、紅葉の色が残った植物に滴る雨露は趣がある。雲間から時折覗く朧月。季節の狭間を見ているようで味わい深い。
ミティアは寛いでいたジェフリーに声をかけた。
「ちょっといいかな?」
ミティアは温かいお茶を持って渡した。
「寒いよ?」
「確かに冷えて来たな」
ジェフリーは雨戸を閉めて、部屋の中に入った。受け取った暖かいお茶がじんじんとするくらい、寒かったようだ。茶葉の香りが癒しを誘う。
大部屋だがテーブルを出さずにいた。大人数に広い部屋で寛いでいる。
小雨で冷えた空気が部屋に入り込んでいた。。
城では重要会議があるなどと人払いされ、いつもなら誰かしら話に来たがるが、今回はその様子がない。
込み入った話がしやすいのだが、大変な時期に来てしまったと申し訳なくも思う。
ミティアはジェフリーに質問をした。
「先生と話した?」
ジェフリーは立ったまま動きを止める。その質問をされるだろうとは思っていたが、まずは座るべきだろう。
ジェフリーは肉厚の座布団を差し出した。ジェフリーも自分のぶんを取り出し、座る。
ちゃぶ台もないので、お茶を持って座っているだけだ。話す内容に合わず、和んでしまった。相手がミティアであるせいかもしれない。
「先生ってここに残りたいのかな?」
「そういうわけじゃないと思う。善良な一般市民が、魔法だの神族だのついていけないって弱音を吐いているだけだ。そんなに気にすることじゃない」
ざっくりと補足したが、だいたいは合っている。竜次は魔法に長けているわけでもないし、知識もサキやローズには敵わない。本人はたびたび気にしていたことだ。
今回も気にしているだけで本心ではない。ジェフリーはそう信じていた。
「キッドが話に行っただろ。案外、二人して飲んだくれてたりしてな?」
ジェフリーは楽天的な考えだ。
真剣に悩んでいたミティアはしょげてしまった。肉親に対して、もっと親身になっているのかと思っていたからだ。
「キッドは俺より年が近いんだから、兄貴と話がしやすいだろうさ」
「そうかもしれないけど、ジェフリーは先生の心配をしないんだね。血のつながった兄弟なのに」
小言を言うようになったのかと、ジェフリーは含み笑いをしている。ミティアの少し怒りながらむくれた表情も見慣れたのに、じっと見てしまう。
ミティアはじっと見られていることに反応した。
「な、なぁに?」
何でもないのに和んでしまう。ミティアの存在は大きい。ジェフリーは思ったままの気持ちを言う。
「いや、こんなに何でもないことが、いつか、当たり前でなくなるときが来るのかって思っただけだ」
「じっと見てると思ったら、今度はどうしたの!?」
ジェフリーは急に今を噛み締めるようなことを言い出した。いつも人を翻弄する側のミティアが動揺している。
今は竜次の話をしているのではないのだろうかと疑問が残るが、ジェフリーの中では手放しで終わっていた。実際にキッドの方が竜次と年齢が近い。お互いに気持ちが向いているのにどこか素直になれず、言い訳を見つけては避けるような行動が多い。これをいい機会に、二人が親密になるのではないかと期待を寄せていた。
こんな心配は余計なお世話だ。ジェフリーはそう思いながら、こうやって考えていることも楽しみの一つではあった。
ジェフリーも旅を通して考えが変わった。自分はこの旅を楽しんでいる。だが、もっと楽しみたいのが本心だった。今は目的がある。
「普通に旅が楽しめるようになりたいな」
「そうだね。わたしはジェフリーと一緒なら、どんな場所でも、冒険でもいいよ」
ただ座って話をしているだけなのに、この瞬間でさえ大切に思える。
普通に何でもない旅が楽しめる日が来るなんてあるのだろうか。
ジェフリーはぼんやりと考えた。旅の終わりが見えているはずなのに、まだ何かある気がしてならなかった。
ミティアは俯き、ぽつりと呟く。
「兄さんと戦っておしまいだといいね。本当に、それだけなら……」
ミティアは暗くなりそうなのを自らかぶりを振って払う。顔を上げてつらそうにしながら、一応は笑って見せた。
「あのね、さっき、キッドと話したの。わたし、兄さんとちゃんと向き合って理由を聞きたいし、場合によっては戦うことになると思うけど。そうなったら力を貸してほしい」
少し視線が落ちた。自信がないみたいだ。ジェフリーは、その落ちた視線を拾うように覗き込んだ。
「嫌なんて言わないさ。これまでだって一緒に頑張って来たじゃないか。最後まで一緒だ。もちろんそのあとも……」
「ありがとう」
ミティアは恥ずかしがらず、目を逸らさなくなった。はにかみながら顔を上げる。だが、謎の視線が気になって仕方がないようだ。
隣の部屋で話をしていたはずの三人と二匹が、じっと一部始終を見ていたようだ。覗き見、盗み聞き、いや、両方だ。
中でも人間観察が大好きな圭馬は、二人をからかうような発言をする。
「え、なにこれ、今時珍しいタイプの純愛?」
あまりにつまらなさそうに言うものだから、ショコラが指摘を入れる。
「圭馬チャン、面白くなさそうに言っちゃダメなのぉん」
圭馬はドロドロと人間味が溢れる方が好きだ。ミティアとジェフリーは気持ちが真っすぐだ。毛繕いをしながらあくびをしている。つまらなさそうだ。
ジェフリーは気分を台無しにされたと、舌打ちとため息をついた。
「なんつー趣味だ。まったく……」
こんな場所で勝手に和んで話している方も悪い。場所を選ばないと、要らぬ誤解を招きそうだ。
ジェフリーは乾いた髪に指を通し、軽く解かして向き直る。サキとコーディとローズ、使い魔の圭馬とショコラ。見慣れた仲間のはずなのに、監視されているような気がしてならない。
「何だ、その輝いた目は。特にコーディ」
「ん? 何って?」
手帳と万年筆を持っている。コーディは何かをメモしている様子だ。
ジェフリーは視線が自分に向いていたので、怪訝な表情をしている。
「今度は恋愛小説でも書くのか?」
「え、違うよ。これは自叙伝の方。私が歩んだ道を本にするの。この旅をね? ジェフリーお兄ちゃんのことが知りたいんだけど?」
「俺の話なんて面白くないぞ」
「えぇー……」
油断したらこれだ。話せることは限られるし、面白いようなことはない。
だが、ジェフリーの横から熱い視線を感じる。ジリジリと燃えそうなくらい。そしてもう深夜だというのにキラキラと輝いた彼女、ミティアの視線だ。
「わたしもジェフリーのこと、知りたい!」
必殺上目遣いが炸裂する。このいくらでも甘やかしたくなる仕草。
どうしてこんなことが平気で、ごくごく自然にできるのかが、知りたいくらいだとジェフリーは頭を掻きむしって取り乱す。
夜も深いというのに、サキはにこにことしている。
「僕も知りたいです。ジェフリーさんは、自分のことをあまり話してくれませんよね?」
ジェフリーはサキの様子に唖然としている。ジリジリと迫る包囲に苦笑いをした。
「どうしてサキまで……」
「ずるいじゃないですか。人に散々過去の干渉をしておいて、自分は内緒ですか?」
「知ってどうするんだよ」
「もちろんリサーチです! 何気ないものの中に弱点が潜んでいるかもしれませんし?」
正座で人差し指を立てながら自信満々に言うサキ。ジェフリーはさらに脱力した。
「お前、何か、いい性格になったな」
「ふっふっふっ、もっと褒めてもいいんですよ!!」
大きく肩を落とすジェフリー。何だか、皆に弄ばれている気がしてならない。
時間があるからと言って、こんな流れになるとは思わなかった。
寝ろと言って逃げたいが、目を輝かせている者が約三名。ジェフリーは観念した。
「俺の何を知りたい?」
「とりあえずプロフィールかな」
「そう言って、全員の聞き出すつもりなのか?」
「え、もう聞いてある」
コーディはさらりと言う。
ジェフリーはお茶をひっくり返しそうになった。いつ聞いたのかと疑問にも思ったが、旅の道中でいくらでもチャンスはありそうだ。
一緒にいないときなどいくらでもあった。
「いや、前に自己紹介したよな? それとはまた別に何が知りたいんだ?」
「そうだなぁ、剣術学校の時代かな?」
空気が凍るようだ。ジェフリーは瞬きを止めてしまう。
「よりによって俺の暗黒時代を知りたいなんて、正気か?」
「あんこくじだい……?」
ミティアの純粋な眼差しが突き刺さる。抉られる古傷。
だが、いつかは知るのだろう。ここで話してしまってもいいかもしれない。
「あんまりいい話じゃない。それに長いから向こうで話そう。大部屋は寒い」
「お茶淹れ直すデス」
渋りながら話す雰囲気になってしまい、重い腰を上げた。ローズがどこからか茶筒を持って来て急須にお茶を淹れ直している。
ジェフリー・アーノルド・セーノルズ。
フィラノスに身を置いていた数年は、地位も安定した生活も、自分の力で得たものではなかった。
ただ、敷かれたレールに乗って、努力をしなくていい、苦労もしなくていい生活。
意味なんて理解していなかった。ただ、ちょっと違った生活に憧れていただけ。
それなりの年齢になって遊んでくれなくなってしまった兄と姉。
毎日いくつもの習いごとをさせられ、昼夜問わず勉学に励む。自分もそうなるのではないかと面倒になってしまった。
彼が剣術学校に転進したのは、魔法学校の学費が払えなくなったからではない。
魔導士狩りという理不尽な殺人と、強姦されながら殺された許嫁。それまで何の努力もしていなかったのに、ただ名家の令嬢が見初めた許嫁と言うだけで楽をしていた。
そんな人間が、たかだか子どもが戦うなんてできなかった。
逃げた。泣き叫ぶカサハを置いて。
思い出して、気持ちが悪くなった。
違う。
忌まわしい過去に気分が悪くなったわけではない。
どうやって、どこへ逃れたのか。
なぜ、自分は助かったのだろうか。そこが思い出せない。自分だってあの戦火の中で無傷だったわけではない。怪我をした。どこかを。どこを?
剣術学校には行った。だが、その過程が思い出せない。
ジェフリーは頭を抱え、思い出そうと懸命になる。目の奥がズキズキと痛む。表情は歪み、発汗した。
「ジェフリーさん?」
ジェフリーはサキの声で我に返った。かぶりを振って顔を上げる。
「あぁ、ごめん。何でもない」
いったんこれを忘れることにした。お茶を口に含むと暖かい感覚が走る。正直に言うと、今は自分が自分ではないような気がしてならない。ジェフリーは自分の存在が怖くなった。だが、今は別の話をするべきだ。話を進めた。
「剣術学校へ行った。それまで努力も苦労もしたことがない俺が、いきなり大人用の剣を持って追い付こうと必死だったからな。魔法学校で過ごした数年分は卒業がずれ込むはずだったが、結局半年くらいで済んだな。俺は思ったより優秀だったらしい」
それを聞いたサキは疑問を抱く。
「剣術学校っていくつかクラスがありますよね? それによって通う年数にばらつきがあったような気がしますが、確か一番つらいって評判のクラスでしたっけ?」
思いのほか、サキが話題を誘導した。ジェフリーの弱点を知りたいだけかもしれないが、興味を持っていた。
ジェフリーは深く頷いた。
「卒業する人数が入ったときの半分。しかも、何人か卒業までに命を落とす」
「よく死なずに卒業しましたね」
「仲がよかった先輩が野営中に事故で死に、慕ってくれていた後輩はみんなを逃がすためにオオカミの群れを引き寄せて死んだ。いずれも、目と鼻の先で見てる」
ジェフリーは想像を絶する極限状態も味わった。これも勉強の一環だと話すと、ミティアが同じ剣術を学べる気がせず、口を窄めている。
コーディが万年筆を握る手を止める。
「ごめん、想像以上だった」
「卒業したら役人や、大きな国の兵士や騎士団に入るらしいからな。身を投げて戦う精神はこうして身に付けるのかと思った。それ自体は普通だ。剣一本持たされて無人島に飛ばされ、『一ヶ月生き延びろ』なんて訓練めいたものもあった。それ程強靭な人間なら、どこもほしがる」
自分が体験した一番ひどかった話が無人島での一ヶ月サバイバル。就学生がやるにしてはむごたらしい。
「俺の所はまだマシだった。違う島に飛ばされた班は、生きるために殺し合いをしたって聞いた。最終的には誰も生き残れなかったらしいけど……」
ついに皆は黙ってしまった。黙ったのは人間だけ。
「のぉ、ジェフリーさぁん? 何故それだけの経験をしておいてなお、人間らしくいられるのかを質問してもいいかのぉん?」
「ばあさんは惚けた振りをして、何が聞きたい?」
「人が次々死ぬのを見ても、麻痺せんかったのかのぉ?」
ショコラの質問が重く、深い意味を感じた。
おそらくジェフリーの本質を見抜こうとしている。その意図は伝わった。
「周りの人間が死ぬのを見ても、なんにも感じなくなって行く。そんな人も見たさ。ある意味、俺は正気じゃなかったんだろうな。自分は死にたくない。あんな人になりたくないって、思って耐えた」
ジェフリーが皆の顔色を窺う。辛辣な表情で、見ている側も気落ちしてしまいそうだ。
「誤解しないでほしいけど、俺は死ぬのが怖いし、この中で誰か死ぬなんて絶対に嫌だからな?」
弱点どころか、ジェフリーの人間性を再認識した。サキは決意を固める。
「よし、僕も、もっと強くならなきゃ……」
「お前はもう強いだろ。立派な肩書きが付いているし」
「それとこれとは違います。僕は守りには長けていませんので、やはり新しく色々手を付けて、もっと皆さんをサポートできるようにならないと!!」
こんなに逞しい大魔導士が、サキ以外どこにいようか。サキには別の意図もあるようだ。それは完全にジェフリーの影響を受けている。
「僕も意識したら仲間の生存率は上がります。そうでしょ? 僕だって誰も失いたくはありません」
サキの意識が高い。圭馬はとある指摘を入れる。
「キミさぁ、ホントはルシフ兄ちゃんたちに手を封じられたの、悔しいんでしょ?」
サキは否定しない。必要以上にルシフたちには関わらないと先ほどまとまった。
「また邪魔されたらそれこそ頭脳戦です。僕は、目的のために手段を選ばないような人に絶対負けませんから!」
サキなりの正義だ。
目的のためなら何かを犠牲にしてもいいなんて許せない。これ以上、人の命を奪う、危険に晒すことは何としても阻止したい。
だが、圭馬はその意気込みを挫くような指摘をした。
「ルシフ兄ちゃんはこの時間軸の人間じゃないんだよ!? 下手をしたらキミ、返り討ちに遭うかもしれない。過去の人なんだ。昔はもっと魔法の力が豊かだったから、現代の衰退しつつあるこの世界で大魔導士だとしても、まぁ、ちょっとはホネがあるかなぁくらいにしか思われていないよ」
毒舌鬼畜な圭馬にしてはやんわりと言ったが、内容は厳しいものだった。だが、それでもサキの根性はここからという勢いだ。
「よかったです。まるっきり、足元にも及ばないと言われなくて」
「まぁ、意識は大切だけど、もうぶつからないかもしれないし。瘴気の魔物を追っているみたいだからね。用が片付けば、またどこかへ消えてしまうんだろうと思うけど」
圭馬が気掛かりなのは、自分や圭白と和解する気がないのだろうかと言うところだ。また遭遇した際に問い詰めるつもりだが、先に仕掛けられてしまうことも予測していた。
ルシフがどれだけ強いのかは、圭馬が一番知っている。種族を越えた友だちだからだ。
「脱線しましたが、僕はジェフリーさんがまともな考えを持っていて安心しました」
サキは笑って深く頷いた。ジェフリーの話をしていたのだ。いつの間にか、そのルシフと言う男性の話になってしまったが。
ジェフリーは思うところがあるのか、カリカリと頭を掻いている。
「そのルシフって人、どっちかって言うと厳しい環境を切り抜けたからそういう考えにいたったんじゃないのか? 俺の同期と考え方が似てる」
圭馬はピンと耳を立てて言う。
「うわぁ、ジェフリーお兄ちゃんったら鋭いね。そうだよ。種族戦争の戦火に彼は巻き込まれたことがあるもの。人がいっぱい死ぬところを見たって話を聞いた記憶があるよ」
「その人を肯定できるわけじゃないが、考えが理解できないかと言われたら、そうでもない。その考えにいたった詳しい経緯は知らないけど、焦っているんだろうな。そういう人間は多少の犠牲を払ってでもまっとうしようと考える」
一定の理解こそあるが、できたら理由が知りたい。
話の中で異常なほどに食いつき、さらに目を輝かせるものが一人。種族戦争の重要な情報源があるかもしれないと目論んでいた。それはコーディだった。
ジェフリーがコーディの輝いた目に気付いた。
「コーディ、その目は何だ」
「な、何でもないよ?」
接触を試みたいという目をしているコーディだ。だが、その隣にいたミティアもその考えらしい。
「わたしも、一度はちゃんと話す場を設けた方がいいような気がする」
「話が通じる相手ならだな」
「目的が一緒かもしれないなら、もしかしたら……」
「ミティア、お前、またそうやって……」
クディフのときもそうだった。自分の命が脅かされたというのに、またかと呆れてしまう。ジェフリーは自身が頑張ればいいとは思うが、果たして彼女や仲間を守り切ることはできるのか。まともに話せるのかが問題だ。
もう会わないかもしれないのに、すっかりその話で盛り上がってしまった。
黙って聞いていたローズも何かの刺激を受けたようだ。
「ワタシも筋トレでも始めましょうかネ」
やる気が出て来たらしい。ただ、ジェフリーのことだけを話すには足らず。脱線しながらだったが、結果として皆の意識が高まった。
ぼちぼちと雑魚寝が始まる。
こんなのは日常なのだが、そろそろ男女別なんて細かく気にしなくなって来た。
節操がなくなって来たのかもしれないが、まるでこの一行が一つの家族のようだ。
小雨も止み、静かに夜が明ける。
まるで、降っていた雨が一行の心だったかのように澄んだ空気を運び込む。
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