知らぬはヒロインだけ

ネコフク

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三話

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 うららかな春の日差しが柔らかく降りそそぐ季節。
 クエスフィールとシスティアが通う王立学院で入学式が行われる日。

 2年生に上がり、生徒会に入った2人は他の役員と共に式がある講堂へと向かっていた。

 少し緊張していたり友人とはしゃぐ1年生の邪魔にならないよう道の端の方を歩いていると、後ろから走って来る音が聞こえ、「きゃっ♡」というわざとらしい悲鳴で振り返ると、両手を広げ転んだフリをして一緒に歩いていた生徒会長のミハエルに抱きつこうという不届きな女生徒がいたが、すんでで副会長のアラベラが体を割り込ませその豊かな胸で女生徒をはね返す。

 ボヨン

 波打つ胸をガン見するミハエルの視線はいつもの事なので無視し、アラベラは弾かれてひっくり返った女生徒に手を差し伸べる。

「あなた大丈夫かしら?」

「えっ、はっ、えっ?」

 状況を飲み込めないのかアラベラとミハエルを交互に見て戸惑っている。

「状況が分からないのかしら?あなた今転んだ拍子にわたくしの胸にぶつかって転びましたのよ」

「胸ぇ⁉」

 驚く女生徒がアラベラの胸を見て「スイカが2個・・・・・・」と呟いたのは仕方ない。このアラベラ、金髪を豪快に巻いた美女で、制服の上からでも分かるくらいのボン・キュッ・ボンの体。胸はミハエルが「かなりの重さだよね~」と太鼓判を押す大きさなのである。

「さあ、手を取って。起こして差し上げますわ」

 動く度に揺れる胸に女生徒とミハエルが釘付けになりながら手を取り立ち上がると、女生徒は周りを見渡し「おかしい。転んだ拍子にミハエルに抱き着くイベントだったのに・・・・・・しかも何でここにアラベラやシスティアがいるの?」と小声でブツブツ言い始める。

「あなた怪我はない?」

 アラベラの声で我に返った女生徒は急に足首を押さえ痛いと言い出す。

「転んで足首を痛めたのかしら?システィア、治して差し上げて」

「えっ、いや、クエス様に・・・・・・」

「大丈夫、システィアは優秀な治療師ですの。わたくしが保証しますわ」

 にこにこと美女の圧がある笑顔を向けられ断れる者がいるだろうか。いや、いない。
 それ以上は言えず大人しくシスティアに治療してもらう女生徒。

「・・・・・・これで大丈夫です」

「さすがだねティア」

 手をかざし治療し終えたシスティアの体を引き寄せ頭にキスをし、愛おしそうに見つめるクエスフィールにミハエルとアラベラが「ご馳走様」「いつ見ても甘々ですわね」と呆れ顔をしていて女生徒は唖然としている。

「そういえばあなた見ない顔ね、1年生かしら。お名前は?」

「あ・・・アリサ=ダサヨンです・・・」

「ああ、ダサヨン男爵令嬢なのね。もう少しで式が始まりますわよ。行かれてはいかが?」

「は、はい、クエス様、ミハエル様ありがとうございます」

 ペコリと頭を下げ走って行くアリサを見つめ「お礼を言う人間違ってない?」と3人は心の中で突っ込み、システィアだけ顔を曇らせたのであった。
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