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十六話(アリサ③)
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「えっ?はっ?ウソっ!?」
家の執務室で顔を赤くして怒りで震える父親から渡された紙を見てアリサは驚く。そこには成績と授業や学院生活が細かく記載されていた。
内容曰く「授業に殆ど出ておらず宿題の提出も無し。単位も落としている為、次回の試験で赤点を取らなくても留年、赤点なら退学」さらに「婚約者がいる複数の令息に近づき迷惑をかけている」「学院内で所構わず淫らな行為を行っている」と記されており、これ以上風紀を乱すなら即退学という宣告付きだった。
「お前は何をしに学院に行っておるのだ!」
父親である男爵の怒りは最もだ。可憐な面立ちに育った娘を溺愛はしていたが所詮女性、余程の事が無い限り当主にはなれない為婿を取る必要がある。見目の良い娘なのですぐ同格の令息か、運が良ければ伯爵令息を捕まえるかもしれないと期待はしていたがこれは違う。
未婚の女性の婚前交渉はタブーとされている国で淫乱などもっての外、しかも学院から報告されたという事は同年代の貴族の令息には知れ渡っているのは確実。余程のもの好き以外釣書を送っても門前払いされるのが目に見えている。
「しかもよりにもよって高位貴族の令息に迷惑をかけるなど・・・・・・」
「ちよっとすり寄っただけで迷惑かけてないわよ!だれも引っかからなかったんだからノーカンでしょ!」
「当たり前だ!」
「でも引っかかったら結婚できるのよ!?贅沢し放題じゃない。手を出さない方がバカよ!」
「馬鹿はお前だ!うちは男爵、頑張っても伯爵家までしか縁を結べん!間違っても王族や公爵など雲の上の方々と婚姻は法律で出来なくなっているんだ!」
「そんなの知らないわよ!」
この国の法律では婚姻は爵家の上下2つの家格、伯爵家なら上は公爵家、下は男爵家との婚姻を認められている。王族は侯爵家以上の令息令嬢から婚約者を選ぶ事になり、第二王子であるミハエルはその中から公爵令嬢であるアラベラを指名したのだ。
アリサはこの世界が乙女ゲームだと思っているので、婚約婚姻の法律など貴族としての基礎を知らなくてもいいと思って全く覚えておらず、前世での常識(本人は非常識)のみで動いている。しかも自己中で好き放題しても許されると思っていたので、学院からの告げ口のような紙と婚約婚姻の法律を突きつけられ驚きと憤りがアリサの中に渦巻き体が震える。
(なんてことゲームではそんな設定無かったのに!そんなんじゃゲームみたいにクエスフィールやミハエルと結婚出来ないじゃない!・・・・・・ちょっと待って、もしかしてこれって隠しシナリオ?確か隠しシナリオがあるってSNSで見た気がする。結ばれるのが難しい身分だからって高位貴族の養子になって結婚、みたいな。なんだ、それならクエスフィールやミハエルとも結婚出来るじゃん。養子も見た目が可愛いからすぐなれるだろうし楽勝じゃん♪)
「おい待てっ!」
急に機嫌が良くスキップしながら執務室を出て行くアリサの後ろで父親が喚いているのは、先行きが明るくなった気でいる彼女には聞こえていない。
しかしアリサは知らない。
国の法律で後継者が居ない爵家以外、婚約婚姻の為の養子縁組が禁止されている事を。さらに高位貴族になればなるほど女性に処女性を求められる事を。
そして養子縁組さえすればハッピーエンドを迎えられると思っているアリサ。それが間違いだというのを彼女は気付いていない。
家の執務室で顔を赤くして怒りで震える父親から渡された紙を見てアリサは驚く。そこには成績と授業や学院生活が細かく記載されていた。
内容曰く「授業に殆ど出ておらず宿題の提出も無し。単位も落としている為、次回の試験で赤点を取らなくても留年、赤点なら退学」さらに「婚約者がいる複数の令息に近づき迷惑をかけている」「学院内で所構わず淫らな行為を行っている」と記されており、これ以上風紀を乱すなら即退学という宣告付きだった。
「お前は何をしに学院に行っておるのだ!」
父親である男爵の怒りは最もだ。可憐な面立ちに育った娘を溺愛はしていたが所詮女性、余程の事が無い限り当主にはなれない為婿を取る必要がある。見目の良い娘なのですぐ同格の令息か、運が良ければ伯爵令息を捕まえるかもしれないと期待はしていたがこれは違う。
未婚の女性の婚前交渉はタブーとされている国で淫乱などもっての外、しかも学院から報告されたという事は同年代の貴族の令息には知れ渡っているのは確実。余程のもの好き以外釣書を送っても門前払いされるのが目に見えている。
「しかもよりにもよって高位貴族の令息に迷惑をかけるなど・・・・・・」
「ちよっとすり寄っただけで迷惑かけてないわよ!だれも引っかからなかったんだからノーカンでしょ!」
「当たり前だ!」
「でも引っかかったら結婚できるのよ!?贅沢し放題じゃない。手を出さない方がバカよ!」
「馬鹿はお前だ!うちは男爵、頑張っても伯爵家までしか縁を結べん!間違っても王族や公爵など雲の上の方々と婚姻は法律で出来なくなっているんだ!」
「そんなの知らないわよ!」
この国の法律では婚姻は爵家の上下2つの家格、伯爵家なら上は公爵家、下は男爵家との婚姻を認められている。王族は侯爵家以上の令息令嬢から婚約者を選ぶ事になり、第二王子であるミハエルはその中から公爵令嬢であるアラベラを指名したのだ。
アリサはこの世界が乙女ゲームだと思っているので、婚約婚姻の法律など貴族としての基礎を知らなくてもいいと思って全く覚えておらず、前世での常識(本人は非常識)のみで動いている。しかも自己中で好き放題しても許されると思っていたので、学院からの告げ口のような紙と婚約婚姻の法律を突きつけられ驚きと憤りがアリサの中に渦巻き体が震える。
(なんてことゲームではそんな設定無かったのに!そんなんじゃゲームみたいにクエスフィールやミハエルと結婚出来ないじゃない!・・・・・・ちょっと待って、もしかしてこれって隠しシナリオ?確か隠しシナリオがあるってSNSで見た気がする。結ばれるのが難しい身分だからって高位貴族の養子になって結婚、みたいな。なんだ、それならクエスフィールやミハエルとも結婚出来るじゃん。養子も見た目が可愛いからすぐなれるだろうし楽勝じゃん♪)
「おい待てっ!」
急に機嫌が良くスキップしながら執務室を出て行くアリサの後ろで父親が喚いているのは、先行きが明るくなった気でいる彼女には聞こえていない。
しかしアリサは知らない。
国の法律で後継者が居ない爵家以外、婚約婚姻の為の養子縁組が禁止されている事を。さらに高位貴族になればなるほど女性に処女性を求められる事を。
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