何やってんのヒロイン

ネコフク

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番外編(王子側視点)

サリエル画策する・・・必要がなかった②

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 ユリヤが入学出来なかった1年間、給餌を堪能したり目を離した隙に落とし穴に腰まで落ちたマユリカを救出したり(何故そんな所に落とし穴が!?)、木の枝にぶら下がり困っているマユリカを助けたり(何故そんな状態に!?)しつつサリエルは学園生活を楽しんでいた。

 そして入学試験が行われた翌日に学園長に呼ばれサリエルは学園長室に向かう。去年不合格になり、始めの頃は不貞腐れていたユリヤは不味いと思ったのか、少しは勉強していると報告があった。よく分からないが「入学しなきゃ乙女ゲームが始まらない!」や「イケメンのためイケメンのため・・・・・・」と呟いていたらしい。

 ただ昼間勉強をして遊び歩かなくなったと思ったら夜遊びにシフトしただけだったようだ。影から「乙女じゃなくなりました」という報告に見たのか?見たんだな、と遠い目になったのは仕方ない。

 その後も高い頻度で「今日も組んずほぐれずしてました」と報告されるので、聞くに堪えないから紙面に残すだけにしてくれと指示を出したのは英断だった。後から確認したらドン引く人数で驚いた。

「いや~今回はギリギリ合格だったのですが素行が悪くて落としましたわ」

 学園長の声で報告を思い出し遠い目になっていたサリエルは、試験結果の用紙を受け取り目を通す。確かに本当にギリギリだが筆記試験は合格ラインを全て超えていた。

「素行、とは?」

「試験後教室にいた試験官に抱きつき媚を売り誘ったのです。令嬢にあるまじき行為として再教育をと抗議させてもらったよ」

「ああ・・・・・・。抱きつかれた先生はどなたですか?」

「オータクロア先生です。蕁麻疹を出して倒れてしまったので実家で休養を取る事になりましたよ」

「オータクロア先生ですか」

 オータクロア先生は経緯は知らないが女性に触られると蕁麻疹が出たり過呼吸を起こすので、受け持つ生徒は男子生徒のみ。女生徒とは一定の距離を保っている。

 学園では周知されているので女生徒は不用意に近づく事はないが、知らないユリヤにとっては目を見張る美男子のオータクロア先生は突撃対象になってしまったのだろう。オータクロア先生にしてみれば運が悪いとしか言いようがない。

 犠牲者は出てしまったが3年生を平穏に過ごせそうだ。しかしまた根回ししなくても不合格だったかとサリエルは肩を落とす。

 まあそれでもマユリカとの時間を邪魔されないのはいい事だと気持ちを切り替え、いそいそとマユリカが待つ図書室へと急ぐ。

「あ、そういえば」

 ユリヤを引き取って以降その言動と金遣いの荒さに悩まされ、くたびれてきている男爵夫妻にマユリカがハラハラしているのを知ったので、自分の事業から仕事を融通しようと侍従に指示を出しておく。

 人が良すぎて損を被る貴族は少数ながらもいる。それを全て面倒を見る気はないが、マユリカが気にしているとなると話は別。マユリカが平穏に過ごすのがサリエルの願いなのだ。
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