伯爵令嬢のぼやき

ネコフク

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「違う、違うんだよなぁ・・・・・・」

 うららかな春の陽射しを感じながら窓際の席で紅茶に口に運びそっとため息をつく。

 ごきげんよう。わたくしガスティ伯爵令嬢のアマリアと申します。向いに座っているのはジューイッシュ辺境伯令息のネルタ、別荘が近い場所にあり幼い頃一緒に遊んだ仲です。
 まあ所謂幼なじみというやつです。

 しかし8歳の時から会う事もなく、学園に入り7年ぶりに再会。小柄で可愛らしかった彼に会うのを少し楽しみししていたのですが、思っていたのと違う成長をなさっておりました。

 ええ、ええ。7年もあれば人は変わるもの。幼少期からなら激変するのも分かります。背も高くなり男性なので声も低く体つきだって武の辺境伯家ですもの、それなりに筋肉も付きましょう。


 ・・・・・・


 でもこれは無いんじゃないかなぁ!?


 辺境伯夫人に似た可愛らしいかんばせはその面影を残し大人びた顔になったのは予想通り。笑顔はワンコを思わせる。

 そこまではいい。人懐っこい笑顔はご令嬢をキュンとさせるのだろうが、残念ながらわたくしは猫派。キュンのキの字も心に届かない。

 でもそこじゃない。

 デカい。デカすぎるのだ。

 15なのに180は超えているのではないだろうか。しかも筋肉が鎧のように付いている。小柄ショタ枠どこいった?

「ずいぶん変わりましたのね?」

「うん、アマリアが大きい人が好きって言ったから頑張ったんだ」

「そ・・・・・・そうなんですのね」

 褒めて褒めてと言わんばかりにぱあっと笑顔を向けてくるネルタに、言葉が詰まってしまう。

 違う、違うのよネルタ!解釈違いよ!確かにわたくし「大きい人が好き」と幼い頃に言ったわ。けれどわたくしの大きいは「背が高い」の意味だったのよぉ!背の高めな母親似のわたくしは自分が同じように高くなると見越して(実際令嬢にしては高めに育った)、ヒールを履いて自分より背の高い殿方がいいと暗に話しただけなのに、全体的に大きくなりすぎなのでは!?会わなくなってから父親である辺境伯の遺伝子を注入されたのかしら?
 そもそも頑張れば物理的に大きくなるのもなの!?

「それに頭が良い人がいいって言ってたよね。だから頑張って首席取ったんだ」

 そこ!そこもですわ!確かに「頭が良い人」も言ったわ。でもわたくしの頭が良いは「頭の回転が速い人」の意味でしたのよ。テンポ良く幅広い会話を楽しむ。もちろんそれには知識も必要だから頭が良いことにはこした事はないけれども。

 確かに首席は凄いことだわ。でも何故かネルタから脳筋臭がするのよね。
 これもしかして貴族的な遠回しな言葉が通じない、そのまま取ってしまうやつなのでは?

 しまったーーーーー!そうならあの時「細身で背の高いクールなインテリ系が好き」とハッキリ言えば良かったーーーーー!

 ヤバい、解釈違いで魔改造したネルタに今さら違うとは言えない状況になってる!

「あ・・・・・・あのさ」

「はい?」

 顔を赤らめながらモジモジする筋肉ダルマ。・・・・・・うん、全くトキメかない。

「僕アマリアの理想に近くなったと思うんだ。だから・・・その・・・こっ・・・婚約者になってほしいな~なんて・・・ほら、約束したでしょ?アマリアの理想になったら婚約してくれるって」

 あ゙ーーーーー!!言った、言ったよ!理想の男性になったら婚約してあげるって。でもあんなかわゆいショタっ子がなれると思わないじゃん!しかも解釈違いのムキムキマッチョ。小型ワンコから超大型ワンコ。だからわたくしは猫派なんだって。

「もうアマリアのお父上には許可を取っているから、後はアマリアの返事だけなんだ」

 うるうる上目使いで返事待ちしているけど、お父様が許可している時点で断れないやつ!外堀埋めたり根回ししたりの周到さ。貴族は裏で動いたりするもの、そういう感じ嫌いじゃない。

 仕方ない、お父様当主には逆らえない。

「ネルタ」

「はい」

「婚約の話、お受けしますわ」

「やったー!!」

 にっこり微笑みながら返事を返すと、勢いよく立ち上がりバンザイをするネルタ。その拍子にテーブルにぶつかり紅茶や皿の上にあった菓子が5cmほど浮き上がり、ガチャガチャボトボトテーブルの上に飛び転がる。

 ・・・・・・そういうとこが脳筋臭がするとこやぞ。


「本当違うんだよなぁ・・・・・・」

 慌ててさらにテーブルの上を惨劇にみまわれたようにしたネルタを見て、手に持っていて無事だった紅茶を飲みながら深くため息をつき、これ以上筋肉を付けないよう誘導するかと頭の中で計算するアマリアだった。
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