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#84 禁書⑩
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「銀河鉄道に乗り込んで魔王を倒す? そんなの無理だよ! だって私には、何の力もないし」
バンッと机を叩き、少年の言葉に私は猛然と抗議した。
元の世界でも小娘にすぎなかったこの私。
顏とスタイルはよくなったといっても、ここでもせいぜい娼婦まがいのただの若い女である。
魔法が使えるわけでもないし、剣のスキルがあるわけでもない。
強いて利点を上げるならこのプロポーションと美貌が醸し出すお色気だが、そんなもので魔王が惑わされるとはとても思えない。
「そうだね。もちろん、手ぶらで乗り込めなんて無茶なことは言わないさ。ちょっと待ってて」
少年はそう言い置いて、机の後ろの書庫に入っていく。
覗いてみると、そこは2階まで吹き抜けの壁面すべてが書架になっていて、上のほうの本を取るためにあちこちにはしごが立てかけてあるようだ。
「やっぱりあったよ。もうひとつ」
ややって再び姿を現すと、少年が茶色い革製のブックカバーみたいなものを机の上に置き、私のほうへと滑らせた。
「こ、これは?」
「さっき話した魔法のブックカバーだよ。盗まれたもののほかにもうひとつ、奥の金庫に保管してあった」
魔法のブックカバー?
魔王を生み出す元になったという、禁断のアイテム…。
「これで、私にいったいどうしろと?」
おそるおそるたずねると、今度は少年が懐から一冊の文庫本を取り出した。
「そのカバーをこの本にかけるんだよ。そうすれば、この本の中に出てくる小道具は、全部実体化できるし、武器になる」
なるほど。
このブックカバーに魔王を生み出すほどの力があるのなら、それくらいはた易いはずだ。
「それで…その本ってのは、いったい?」
魔導書だろうか。
あるいは武器についての解説書?
でも、この世界の魔法や武器が、宮沢賢治の心の闇が産んだ魔王に果たして効くのだろうか?
「魔導書でも武器の一覧でもないよ」
私の心の中を読んだかのように、ダーク=トルストイが微笑した。
「郷に入っては郷に従え、って言うだろう? 君の言うミヤザワケンジとやらの世界の小道具でなければ、きっと魔王にはダメージを与えられないんじゃないかと思ってね。ほら、これはさっき君が言っていた本だ。僕にはこの言語は読めないが、表紙絵で確信した」
私は少年が差し出した文庫本の表紙に目を落とした。
漆黒をバックに、銀色の線で深海魚みたいにはかない列車の絵が描かれている。
「これは…『銀河鉄道の夜』…」
「そうさ。その本を持って、銀河鉄道に乗り込めば、君には必ず”場”の力が宿るはず。それに、これは僕の推測だが、君がこの世界に召喚された理由、そいつは偶然なんかじゃなく、君がトシという女性に似ていたからじゃないかと思うんだ。もしそうだとすれば、君こそが選ばれたデーモン・キラーということになる。ね、そうじゃないか?」
長い前髪の隙間から私を見つめて、少年が言った。
「そんな、馬鹿な…」
私はあんぐりと口を開けた。
賢治の妹、トシにこの私が似ている?
だから私こそが、魔王を倒す者、デーモン・キラー?
身体じゅうから力が抜け、私はへなへなと椅子に崩れ落ちた。
バンッと机を叩き、少年の言葉に私は猛然と抗議した。
元の世界でも小娘にすぎなかったこの私。
顏とスタイルはよくなったといっても、ここでもせいぜい娼婦まがいのただの若い女である。
魔法が使えるわけでもないし、剣のスキルがあるわけでもない。
強いて利点を上げるならこのプロポーションと美貌が醸し出すお色気だが、そんなもので魔王が惑わされるとはとても思えない。
「そうだね。もちろん、手ぶらで乗り込めなんて無茶なことは言わないさ。ちょっと待ってて」
少年はそう言い置いて、机の後ろの書庫に入っていく。
覗いてみると、そこは2階まで吹き抜けの壁面すべてが書架になっていて、上のほうの本を取るためにあちこちにはしごが立てかけてあるようだ。
「やっぱりあったよ。もうひとつ」
ややって再び姿を現すと、少年が茶色い革製のブックカバーみたいなものを机の上に置き、私のほうへと滑らせた。
「こ、これは?」
「さっき話した魔法のブックカバーだよ。盗まれたもののほかにもうひとつ、奥の金庫に保管してあった」
魔法のブックカバー?
魔王を生み出す元になったという、禁断のアイテム…。
「これで、私にいったいどうしろと?」
おそるおそるたずねると、今度は少年が懐から一冊の文庫本を取り出した。
「そのカバーをこの本にかけるんだよ。そうすれば、この本の中に出てくる小道具は、全部実体化できるし、武器になる」
なるほど。
このブックカバーに魔王を生み出すほどの力があるのなら、それくらいはた易いはずだ。
「それで…その本ってのは、いったい?」
魔導書だろうか。
あるいは武器についての解説書?
でも、この世界の魔法や武器が、宮沢賢治の心の闇が産んだ魔王に果たして効くのだろうか?
「魔導書でも武器の一覧でもないよ」
私の心の中を読んだかのように、ダーク=トルストイが微笑した。
「郷に入っては郷に従え、って言うだろう? 君の言うミヤザワケンジとやらの世界の小道具でなければ、きっと魔王にはダメージを与えられないんじゃないかと思ってね。ほら、これはさっき君が言っていた本だ。僕にはこの言語は読めないが、表紙絵で確信した」
私は少年が差し出した文庫本の表紙に目を落とした。
漆黒をバックに、銀色の線で深海魚みたいにはかない列車の絵が描かれている。
「これは…『銀河鉄道の夜』…」
「そうさ。その本を持って、銀河鉄道に乗り込めば、君には必ず”場”の力が宿るはず。それに、これは僕の推測だが、君がこの世界に召喚された理由、そいつは偶然なんかじゃなく、君がトシという女性に似ていたからじゃないかと思うんだ。もしそうだとすれば、君こそが選ばれたデーモン・キラーということになる。ね、そうじゃないか?」
長い前髪の隙間から私を見つめて、少年が言った。
「そんな、馬鹿な…」
私はあんぐりと口を開けた。
賢治の妹、トシにこの私が似ている?
だから私こそが、魔王を倒す者、デーモン・キラー?
身体じゅうから力が抜け、私はへなへなと椅子に崩れ落ちた。
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