超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

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第561話 人喰いの森⑤

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 会話はそれでお開きになり、仕方なく僕らは店を出た。
 酒類は佐和が持ってくれたので、非力な僕でも帰りの坂道をなんとかしのぐことができた。
 道中僕らは始終無言だった。
 嫌な話を聞いたせいである。
 あの赤い家、なんかヤバいらしいよ。
 森だけでなく、僕らが借りたコテージにまで、何か問題があるというのだろうか。
 山道は、頻繫にカーブを繰り返し、カーブを曲がり切るごとに世界が暗くなっていくような気がした。
 最後のカーブを回り切ると、行く手に例の森が見え、その手前に赤い屋根が夕日を反射しているのが見えた。
 巨大な鳥居のような森の入り口からどす黒い瘴気が噴き出し、地面を這ってコテージを包み始めているー。
 そんなイメージにぞくっと身震いした時、
「おかしい」
 佐和が唸るような声を出し、先を行こうとした僕の肩に分厚い手を置いた。
「気をつけろ。嫌な予感がする」
「変なこと言うなよ」
 この時僕は半泣きになっていたに違いない。
 それでも先に立って歩き出した佐和の後ろに隠れるようにして前進し、ようやくコテージの入り口に立った。
 不思議なことに短い階段を上がった先の玄関の扉は開いていた。
「不用心だな。翔太が来たのかな」
 おーい、帰ったよ。
 わざとらしく大きな声を出し、佐和に続いて中に入った。
 1階の居間に人影はなかった。
 誰も居ない空間の向こうに一面ガラス貼りの壁を通して庭が見え、その手前のテーブルに料理が用意してあった。
「なんだこれ?」
 出来立ての料理の数々を見回しながら、僕はつぶやいた。
 さまざまな皿に盛った4人分の料理はまさに今できたばかりという感じで、それぞれ主人を待っている。
「小林と優香はどうしたんだ? まさか2階でお楽しみの最中だとか?」
 下卑た想像とは思いながらも、せめてそうであってくれと願う。
 こんなのおかしい。
 普通じゃない。
 心の片隅で叫ぶもう一人の自分を無視して思う。
 しかし、無駄だった。
「2階にもいない」
 巨体に似合わぬ行動力を発揮した佐和が、ドスドスと階段を鳴らしながら降りてきて、険しい表情で言ったのだ。
「翔太が来た気配もない」
「ど、どういうこと?」
 茫然と立ち尽くす僕。
「それより来てくれ。見てほしいものがある」
 階段の登り口から2階のほうを見上げて佐和が言う。
「・・・見てほしいって、それ、何?」
「見ればわかる。ここがガチでまじヤバいってことが」
 ま、待ってくれよ。
 また泣きたくなった。
 2階に何があるっていうんだよ?
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