超短くても怖い話【ホラーショートショート集】

戸影絵麻

文字の大きさ
387 / 615

#363話 施餓鬼会㉘

しおりを挟む
 穴は、思ったより奥行きが深いらしかった。
 駆けつけた警官は一度中に潜ったものの、
「戦時中の遺構か何かですかね。隧道がずっと奥にまで続いてて、先が迷路状に入り組んでいるみたいです。我々だけではちょっと…。上司に報告して、本格的な準備と人員をそろえてから、また来ることにします」
 そう、言葉を濁して帰って行った。
 菜緒と別れ、実家に戻って待ったが、その日は結局家族は誰も帰ってこなかった。
 再度警察に連絡すると、本格的に例の穴を調べることになったが、日時はまだ未定とのことだった。
 まんじりともせず、夜が明けた。
 勇樹がいなくなったせいか、怪異は起こらなかった。
 ひとりだけの朝食を食べていると、開け放した窓から女性の声が聴こえてきた。
 どうやら、近所の小学校に設置されているスピーカーから発せられているらしいその放送は、正午から公民館で村民集会を行うので、近隣の住民は全員参加してほしいという内容だった。
 村人たちの間にも、ようやく異変が察知され出したということだろうか。
 公民館は確か、小学校の敷地内にあったはずだ。
 正午になるのを待って、取るものとりあえず出かけてみると、体育館のようなホールに並べられたパイプ椅子はすでに半分ほど埋まっていた。
 下駄箱の前でスリッパに履き替えている時、声をかけられた。
 振り向くと、私服を着た住職だった。
「すみません、警察から連絡が来て、今日の施餓鬼会法要ですが、中止になっちゃいました」
「そうですか…。まあ、そうですよね」
「夕方以降は、外出禁止令の発動も検討してるってことです。警察も、何かヤバいことが起こっていると、気づいているんでしょうか」
「実は…」
 私は、家族がいなくなったきのうの一件を話した。
「うは、それは大変だ」
 聞き終えると住職は蒼ざめた顔でホールの中を見回した。
「他にも行方不明になった人がいるのかもしれません。村人の数がいつもよりかなり少ない気がします」
 見ると、なるほど、パイプ椅子は半分まで埋まった後、人が増えた様子はない。
「それで、例のあれですが、どうしましょうか?」
 声を潜めるようにして、住職が言う。
「法要も中止になったことですし、村人たちの間に危機感が生まれたなら、もうあえて決行しなくてもよい気もしますが…」
「いや」
 少し考えた後、私は首を左右に振った。
「警察には内緒で、やっちゃいましょう。どうも餓鬼たちには隠れ家があるようです。なんとしてでも、そこからおびき出さなければ…」
 母や妹、そして亜季。
 三人の身が心配だった。
 早くしないと食われてしまう。
 あの牛や鶏、そして野良猫たちのように…。
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

プール終わり、自分のバッグにクラスメイトのパンツが入っていたらどうする?

九拾七
青春
プールの授業が午前中のときは水着を着こんでいく。 で、パンツを持っていくのを忘れる。 というのはよくある笑い話。

処理中です...