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#363話 施餓鬼会㉘
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穴は、思ったより奥行きが深いらしかった。
駆けつけた警官は一度中に潜ったものの、
「戦時中の遺構か何かですかね。隧道がずっと奥にまで続いてて、先が迷路状に入り組んでいるみたいです。我々だけではちょっと…。上司に報告して、本格的な準備と人員をそろえてから、また来ることにします」
そう、言葉を濁して帰って行った。
菜緒と別れ、実家に戻って待ったが、その日は結局家族は誰も帰ってこなかった。
再度警察に連絡すると、本格的に例の穴を調べることになったが、日時はまだ未定とのことだった。
まんじりともせず、夜が明けた。
勇樹がいなくなったせいか、怪異は起こらなかった。
ひとりだけの朝食を食べていると、開け放した窓から女性の声が聴こえてきた。
どうやら、近所の小学校に設置されているスピーカーから発せられているらしいその放送は、正午から公民館で村民集会を行うので、近隣の住民は全員参加してほしいという内容だった。
村人たちの間にも、ようやく異変が察知され出したということだろうか。
公民館は確か、小学校の敷地内にあったはずだ。
正午になるのを待って、取るものとりあえず出かけてみると、体育館のようなホールに並べられたパイプ椅子はすでに半分ほど埋まっていた。
下駄箱の前でスリッパに履き替えている時、声をかけられた。
振り向くと、私服を着た住職だった。
「すみません、警察から連絡が来て、今日の施餓鬼会法要ですが、中止になっちゃいました」
「そうですか…。まあ、そうですよね」
「夕方以降は、外出禁止令の発動も検討してるってことです。警察も、何かヤバいことが起こっていると、気づいているんでしょうか」
「実は…」
私は、家族がいなくなったきのうの一件を話した。
「うは、それは大変だ」
聞き終えると住職は蒼ざめた顔でホールの中を見回した。
「他にも行方不明になった人がいるのかもしれません。村人の数がいつもよりかなり少ない気がします」
見ると、なるほど、パイプ椅子は半分まで埋まった後、人が増えた様子はない。
「それで、例のあれですが、どうしましょうか?」
声を潜めるようにして、住職が言う。
「法要も中止になったことですし、村人たちの間に危機感が生まれたなら、もうあえて決行しなくてもよい気もしますが…」
「いや」
少し考えた後、私は首を左右に振った。
「警察には内緒で、やっちゃいましょう。どうも餓鬼たちには隠れ家があるようです。なんとしてでも、そこからおびき出さなければ…」
母や妹、そして亜季。
三人の身が心配だった。
早くしないと食われてしまう。
あの牛や鶏、そして野良猫たちのように…。
駆けつけた警官は一度中に潜ったものの、
「戦時中の遺構か何かですかね。隧道がずっと奥にまで続いてて、先が迷路状に入り組んでいるみたいです。我々だけではちょっと…。上司に報告して、本格的な準備と人員をそろえてから、また来ることにします」
そう、言葉を濁して帰って行った。
菜緒と別れ、実家に戻って待ったが、その日は結局家族は誰も帰ってこなかった。
再度警察に連絡すると、本格的に例の穴を調べることになったが、日時はまだ未定とのことだった。
まんじりともせず、夜が明けた。
勇樹がいなくなったせいか、怪異は起こらなかった。
ひとりだけの朝食を食べていると、開け放した窓から女性の声が聴こえてきた。
どうやら、近所の小学校に設置されているスピーカーから発せられているらしいその放送は、正午から公民館で村民集会を行うので、近隣の住民は全員参加してほしいという内容だった。
村人たちの間にも、ようやく異変が察知され出したということだろうか。
公民館は確か、小学校の敷地内にあったはずだ。
正午になるのを待って、取るものとりあえず出かけてみると、体育館のようなホールに並べられたパイプ椅子はすでに半分ほど埋まっていた。
下駄箱の前でスリッパに履き替えている時、声をかけられた。
振り向くと、私服を着た住職だった。
「すみません、警察から連絡が来て、今日の施餓鬼会法要ですが、中止になっちゃいました」
「そうですか…。まあ、そうですよね」
「夕方以降は、外出禁止令の発動も検討してるってことです。警察も、何かヤバいことが起こっていると、気づいているんでしょうか」
「実は…」
私は、家族がいなくなったきのうの一件を話した。
「うは、それは大変だ」
聞き終えると住職は蒼ざめた顔でホールの中を見回した。
「他にも行方不明になった人がいるのかもしれません。村人の数がいつもよりかなり少ない気がします」
見ると、なるほど、パイプ椅子は半分まで埋まった後、人が増えた様子はない。
「それで、例のあれですが、どうしましょうか?」
声を潜めるようにして、住職が言う。
「法要も中止になったことですし、村人たちの間に危機感が生まれたなら、もうあえて決行しなくてもよい気もしますが…」
「いや」
少し考えた後、私は首を左右に振った。
「警察には内緒で、やっちゃいましょう。どうも餓鬼たちには隠れ家があるようです。なんとしてでも、そこからおびき出さなければ…」
母や妹、そして亜季。
三人の身が心配だった。
早くしないと食われてしまう。
あの牛や鶏、そして野良猫たちのように…。
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