ヒバナ、オーバードライブ DX!

戸影絵麻

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第2部 ヒバナ、フィーバードリーム!

#11 鋼鉄の男

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 ほとんど途切れかけた意識が、耳障りな音で現実に引き戻された。

 薄目を開けると、大きな黒いワゴン車が、砂埃を蹴立てて工場の敷地に滑り込んでくるところだった。

 黒の車体に荷物を抱えた熊のマーク。
 
 どうやら宅配便の車らしい。

「タケミカヅチ、どこだ!」

 怒号とともに姿を現したのは、天を衝かんばかりの大男である。

 四角い顔に太い首。

 白いTシャツを引きちぎらんばかりに胸の筋肉が盛り上がっている。

「やめて! もめごとならヒバナを運んだ後にして!」

 ミミの声がした。

「なんだあ、おまえは?」

 男がぽかんと口を開ける。

「ミミズがしゃべった?」

「久しぶりだな。カイ」

 今度はレオンの声。

「お、そこにいたか。この祟り神め」

「言いたいことは色々あるだろうが、ミミの言う通りだ。今は一刻を争う」

「だからなんで俺がおまえの言うことを聞かなきゃなんないんだよ!」

「人助けのためだよ」

 ひずみが言った。

「おじさん、大人なんだから、わかるでしょ? 見てよ、この傷。ヒバナ、死にかけてるんだよ」

「死にかけてる?」

 男のいかつい顔がヒバナの視界に入ってきた。

 腰をかがめてのぞき込んでいるのだ。

 眉が太く、目つきが鋭い。

 おっかない顔ではあるが、そこはかとなく愛敬があった。

 不思議なのは、肩に小さなフクロウを留まらせていることである。

 まん丸の眼をした、妙に人間臭い顔つきのフクロウだ。 

 ヒバナは笑ってみせようとした。

 でも、無理だった。

 唇の端が、かすかにひきつっただけである。

「ひでえな、どうしたんだ、こりゃ」

「魔物と戦ったんだ。この子は、俺たちの仲間なんだよ」

「俺たち?」

「おまえや俺みたいに、根の国と戦う運命を背負わせられた者さ」

「俺はそんな仲間に入った覚えはないぞ」

「これから入るんだよ。なんなら、レオンの命と引き換えにね」

 くっくと笑って、ミミが言う。

「なんでもいいから、おまえの車ですぐに昭和区の舞鶴公園まで、この子を運んでくれ。俺のことは、その後で煮るなり焼くなりすればいい」

「白鶴公園? そんなとこに、何があるんだ?」

「公園内に、円墳がある。目立たないが、3世紀につくられたという、国宝級の遺跡だ。その中にある銭湯さ」

「銭湯? どうして古墳の中に銭湯があるんだよ?」

「常世の湯って言ってな、古代から英雄や武将御用達の秘密の治療所のひとつなんだよ」

「なんだそれ? おとぎ話か何かかよ」

「行ってみればわかるさ。さ、ヒバナを運んどくれ。丁寧に、そっと持ち上げるんだよ」

「わ、わかったよ」

 男がヒバナの顔をしげしげと見つめた。

 その瞳の中で、一瞬、何かが動いたようだった。

 再び薄れ行く意識の中で、変身が解けててよかった、とヒバナは思った。

 せめて死ぬときは、人間の娘の姿で死にたかったのだ。
 
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