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百鬼夜行⑨
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咀嚼した肉塊を喉を鳴らして嚥下すると、巨人がぐわっと口を開けた。
耳まで裂けた大きな口に、サメの歯のような鋭い牙がずらりと植わっている。
巨人はまだ食い足りないようだった。
あるいは、乳房を味見することで、乙都の柔肉の美味さに目覚めたというべきかー。
ガウウウッ!
巨人が咆哮し、丸太のような両腕を振り上げて、動けない乙都に襲いかかる。
その瞬間だった。
血の溜まったカルデラのような乙都の胸の穴から、突如として何かが飛び出した。
乳房をはぎ取られた跡の円形の断面から、それぞれ発射されたそれは、先の尖った血の色をした触手だった。
ドスッ、ドスッ。
二本の触手に連続して分厚い胸板を貫かれ、電池の切れたロボットのように巨人の動きが止まった。
その醜い顔に、信じられないといった表情が浮かんでいる。
その時にはすでに、乙都の両肩の断面にも異変が生じていた。
赤い血管のようなものがうじゃうじゃと無数に伸び出したかと思うと、互いに絡まり合い、皮膚のない腕を形成し始めたのだ。
ズボッ。
触手が抜け、乙都の胸に戻った。
胸の穴に回収された触手はそこで円形にとぐろを巻き、さっそく欠損した乳房を再建し始める。
グギギギ・・・。
歯軋りしながら、憤怒の形相を顔に浮かべて、巨人が乙都に向かって、足を一歩、踏み出した。
そこに今度は、血管の束で形成された真っ赤な右腕が、乙都の両肩からゴムのように伸びて襲いかかった。
そしてそのまま、狙いを定めて、巨人の左胸に開いた穴に突き刺さる。
ギャウッ!
巨人がのけぞった。
乙都が軽く右肩を振る。
巨人の胸に開いた穴から、ずるずると乙都の腕が抜き出されてきた。
手に、緑色の血にまみれた肉塊を握っている。
桃のような形をしたその筋肉の塊は、明らかに巨人の心臓だ。
電気コードのようにまといつく血管の束を引き千切り、乙都は巨人の心臓を高々と持ち上げた。
頭上に掲げたところで、
ぐしゃ。
声にならない気合を入れて、握り潰す。
どさっ。
巨人が倒れた。
と同時に、乙都の両肩を掴んだ万力のような手に、ものすごい力がかかった。
背後から乙都を捕まえ、動きを封じていたもう一体の仁王像が、動き始めたのだ。
血生臭い臭気が吹きつけ、首に痛みが走った。
巨人の牙が、喉笛に食い込んでいる。
このまま口を閉じられたら、乙都の頭部と胴体は簡単に分断されてしまうに違いない。
が、そうはならなかった。
下方へと伸びた乙都の両腕が、地面すれすれで鎌首をもたげ、Uの字を描いて急上昇する。
そしてそのまま、獲物を見つけた蛇のように、巨人の腰布の奥へと吸い込まれていった。
グゲエエッ!
巨人が悲鳴を上げ、動作を停止する。
その逞しい内腿を、多量の青汁のような液体が流れ下った。
伸縮自在の乙都の両腕が、バネ仕掛けのように腰布を割って跳ね上がる。
その先についた手は、それぞれ何かを握っているようだ。
ごつごつしたシシカバブのような肉の棒と、イチヂクそっくりの袋状の器官である。
両腕が別々にしなり、手の中のものを無造作に放り投げた。
石段の両側に広がる黒々とした深淵に、引きちぎられた巨人の陰茎と陰嚢が呑み込まれていった。
耳まで裂けた大きな口に、サメの歯のような鋭い牙がずらりと植わっている。
巨人はまだ食い足りないようだった。
あるいは、乳房を味見することで、乙都の柔肉の美味さに目覚めたというべきかー。
ガウウウッ!
巨人が咆哮し、丸太のような両腕を振り上げて、動けない乙都に襲いかかる。
その瞬間だった。
血の溜まったカルデラのような乙都の胸の穴から、突如として何かが飛び出した。
乳房をはぎ取られた跡の円形の断面から、それぞれ発射されたそれは、先の尖った血の色をした触手だった。
ドスッ、ドスッ。
二本の触手に連続して分厚い胸板を貫かれ、電池の切れたロボットのように巨人の動きが止まった。
その醜い顔に、信じられないといった表情が浮かんでいる。
その時にはすでに、乙都の両肩の断面にも異変が生じていた。
赤い血管のようなものがうじゃうじゃと無数に伸び出したかと思うと、互いに絡まり合い、皮膚のない腕を形成し始めたのだ。
ズボッ。
触手が抜け、乙都の胸に戻った。
胸の穴に回収された触手はそこで円形にとぐろを巻き、さっそく欠損した乳房を再建し始める。
グギギギ・・・。
歯軋りしながら、憤怒の形相を顔に浮かべて、巨人が乙都に向かって、足を一歩、踏み出した。
そこに今度は、血管の束で形成された真っ赤な右腕が、乙都の両肩からゴムのように伸びて襲いかかった。
そしてそのまま、狙いを定めて、巨人の左胸に開いた穴に突き刺さる。
ギャウッ!
巨人がのけぞった。
乙都が軽く右肩を振る。
巨人の胸に開いた穴から、ずるずると乙都の腕が抜き出されてきた。
手に、緑色の血にまみれた肉塊を握っている。
桃のような形をしたその筋肉の塊は、明らかに巨人の心臓だ。
電気コードのようにまといつく血管の束を引き千切り、乙都は巨人の心臓を高々と持ち上げた。
頭上に掲げたところで、
ぐしゃ。
声にならない気合を入れて、握り潰す。
どさっ。
巨人が倒れた。
と同時に、乙都の両肩を掴んだ万力のような手に、ものすごい力がかかった。
背後から乙都を捕まえ、動きを封じていたもう一体の仁王像が、動き始めたのだ。
血生臭い臭気が吹きつけ、首に痛みが走った。
巨人の牙が、喉笛に食い込んでいる。
このまま口を閉じられたら、乙都の頭部と胴体は簡単に分断されてしまうに違いない。
が、そうはならなかった。
下方へと伸びた乙都の両腕が、地面すれすれで鎌首をもたげ、Uの字を描いて急上昇する。
そしてそのまま、獲物を見つけた蛇のように、巨人の腰布の奥へと吸い込まれていった。
グゲエエッ!
巨人が悲鳴を上げ、動作を停止する。
その逞しい内腿を、多量の青汁のような液体が流れ下った。
伸縮自在の乙都の両腕が、バネ仕掛けのように腰布を割って跳ね上がる。
その先についた手は、それぞれ何かを握っているようだ。
ごつごつしたシシカバブのような肉の棒と、イチヂクそっくりの袋状の器官である。
両腕が別々にしなり、手の中のものを無造作に放り投げた。
石段の両側に広がる黒々とした深淵に、引きちぎられた巨人の陰茎と陰嚢が呑み込まれていった。
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