冒険者パーティー黒猫の気まぐれ

sazae9

文字の大きさ
1 / 238
1.前世

見たことのない天井だ

しおりを挟む
  僕は何をしていたのだろう……
  あれから随分時間がたっていた……




  ……今大切な人を思い出した時に、過去の出来事も思い出す――――僕はこんな人生を送っていたのだった。


  あの頃を思い出すろ、今の人生と比べると何と不幸だったのだろう……

  僕は今……幸せな気持ちに包まれているのに……


  しかしこの幸せな気持ちはこの不幸せな人生から始まった。

  忘れない方が良いのか?


  嫌だが思いだそう――僕のこれまでの人生を。

  今回の生も……もうすぐ消える命なのだから……



……
……


  これはテンプレのように始まった人生。


「見たことのない天井だ――」


  そんな感想を持ってしまったが……出来るなら言葉に出さないように気を付けた。



~~~~~


……


  ――んっ――――


  この感覚は何だろう?


  今まで利用者様と職員の声でざわざわし、僕を早く休ませてくれ…………。そう思っていたのだが……


  今は普通の人はもう起きていない時間――そうみんなが寝ている時間だ。

  みんなが起きていないのなら当たり前だが、夜中のこの時間には、起きている人の方が少ないだろう。


  一通りの業務を終え、事務作業もこなしようやく仮眠の時間が来たが……


  ――しかし現実は……

  ……


  そこらかしこから僕を呼ぶ声が続くのである。


『おしっ○でました。オムツをかえてください。お願いします。』


  そう言った声が聞こえると……僕はすでに反射的に返事をする。


「はーい、今行きまーす!?」


  僕が向かった先には、体を動かすことができず、自分ではどうしたら良いのかわからなくすがるような表情の人が待っている。



  もう何度も繰り返している言葉……何も考えなくてもあの声を聞くと自然に体が動く。
  あの言葉は僕を動かす魔法の言葉?
   この動きは慣れ――


「――スッキリしましたね~。何か変だと感じたときは声を出してくださいね!」


  そう、相手にひと声かけて戻っていく。


  ふ~、今日もいつも通りか。


  なんだか作業をしているように感じる。
  
  僕はこんな事をしたかったのか?

  疑問を感じながらもプロとして、僕は自分の気持ちとやりがいとを天秤にかける。

……

  相手が伝えてくるよりも先に気づかないとプロではないね。

……利用者様に気持ち悪い思いをさせてしまった。

  ……遅かったかなと思う気持ちが自己嫌悪となり僕の心を蝕む。


  そんな体の動きと心の疲弊を感じていると、既に僕の休憩時間になっても仕事をしていた。


……


  今日の夜勤のペアは最悪で、僕が何も言わないことを良いことに、いつもの先輩が机に伏せている。


「時間なので休みますね~…………先輩……先輩!」


  先輩は机に伏せながら、目を閉じていた…………でなく、眠っているように見える…………。


……
……


「ん、んっ、おう~」


  ん、やはり寝てたのかこの人は……

  いつも僕に色々まかせっぱなしとはいえ、ひどいんじゃないか…………


  これでも僕の権限はあなたより上のなんだよ。


  普通の業務分担であれば、この仕事はあなたがやっている仕事だ。
  あなたが動かないから僕がやっただけで、これは本当は僕の仕事でないよ!
  やるのはいいんだけど――――いいんだけど、あなたが寝る時間にするのと、僕だけが頑張るのは違うでしょ!


  ……昔から夜勤大好きと言う先輩は、年が上だからと言って夜勤を多くしてほしいと管理者に言っている。
  人に仕事を押し付けるのであれば、これほど楽に稼げる方法はない。


  だからこの人は先輩風をふかせてなにもしない。


  もう、僕の休憩時間が押しており、休む時間が削られていく。


「佐藤くん ! 時間って! …………あ~二時ですか……。まー少しだけ休んでください、何かあればあなたの責任なので起こしますよ?」


  は~、自分は寝ていて忘れてただろ……。本来なら僕が休んでいる時間。いつもそうやって僕は少しも休めていない……。


「先輩、何もないですよ、何かあれば起きますからよろしくお願いしますよ。」


  本当は自分がやる仕事は強気に自分でやれ! いつも僕を起こす仕事は、あなたの責任であなたがやれる範囲の仕事だから!

  だから僕を、「よっぽどの事がなければ起こすな!」

  そう言えたらスッキリするんだけど。


「そうだね、じゃあごゆっくり~。」と先輩はあくびをしていた。


  

  ――ここからは僕の切なる思いだ。

  頼みます。利用者のお願いを聞いて。

  普段から先輩は相手に無理やりいうことを聞かせ我慢させるので、僕が起きたときには先輩がなにもしていない時より仕事が増える……


  お願いだから他のペアが出来るような程度に普通な仕事して…………




  は~、今日もこの先輩とペアだったから三十分も休めないな。本当なら二時間は休憩時間があるのに…………。
  今日のペアは最悪だったな……。


……
……


  ようやく布団に入り横になる。


  ――よし休もう


……


  布団に入り横になってすぐになにか胸が締め付けられるようだった……


  ぐっ……ぐっ…………


  んーーーー

  ――フッフフ……フッ――フッと意識が遠くなってきたぞ。




  少しは寝れそうかな……


  ん~? 苦しいのか?



  ふっふっふ~…………?

  ――苦しいぞ!


  く~、る~、しい~、せん~ぱ~


……
……


  頭の中が白くなったように何も感じなくなった……


  そして苦しさも消え、目の前が暗くなった時――どこからか声が聞こてきた。





『おい、こっちだ…………』

しおりを挟む
感想 100

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

【商業企画進行中・取り下げ予定】さようなら、私の初恋。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

ガチャと異世界転生  システムの欠陥を偶然発見し成り上がる!

よっしぃ
ファンタジー
偶然神のガチャシステムに欠陥がある事を発見したノーマルアイテムハンター(最底辺の冒険者)ランナル・エクヴァル・元日本人の転生者。 獲得したノーマルアイテムの売却時に、偶然発見したシステムの欠陥でとんでもない事になり、神に報告をするも再現できず否定され、しかも神が公認でそんな事が本当にあれば不正扱いしないからドンドンしていいと言われ、不正もとい欠陥を利用し最高ランクの装備を取得し成り上がり、無双するお話。 俺は西塔 徳仁(さいとう のりひと)、もうすぐ50過ぎのおっさんだ。 単身赴任で家族と離れ遠くで暮らしている。遠すぎて年に数回しか帰省できない。 ぶっちゃけ時間があるからと、ブラウザゲームをやっていたりする。 大抵ガチャがあるんだよな。 幾つかのゲームをしていたら、そのうちの一つのゲームで何やらハズレガチャを上位のアイテムにアップグレードしてくれるイベントがあって、それぞれ1から5までのランクがあり、それを15本投入すれば一度だけ例えばSRだったらSSRのアイテムに変えてくれるという有り難いイベントがあったっけ。 だが俺は運がなかった。 ゲームの話ではないぞ? 現実で、だ。 疲れて帰ってきた俺は体調が悪く、何とか自身が住んでいる社宅に到着したのだが・・・・俺は倒れたらしい。 そのまま救急搬送されたが、恐らく脳梗塞。 そのまま帰らぬ人となったようだ。 で、気が付けば俺は全く知らない場所にいた。 どうやら異世界だ。 魔物が闊歩する世界。魔法がある世界らしく、15歳になれば男は皆武器を手に魔物と祟罠くてはならないらしい。 しかも戦うにあたり、武器や防具は何故かガチャで手に入れるようだ。なんじゃそりゃ。 10歳の頃から生まれ育った村で魔物と戦う術や解体方法を身に着けたが、15になると村を出て、大きな街に向かった。 そこでダンジョンを知り、同じような境遇の面々とチームを組んでダンジョンで活動する。 5年、底辺から抜け出せないまま過ごしてしまった。 残念ながら日本の知識は持ち合わせていたが役に立たなかった。 そんなある日、変化がやってきた。 疲れていた俺は普段しない事をしてしまったのだ。 その結果、俺は信じられない出来事に遭遇、その後神との恐ろしい交渉を行い、最底辺の生活から脱出し、成り上がってく。

処理中です...