【R18】花嫁直前、君を侵す。

湖霧どどめ@シナリオライター

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10.見えない隙に、少しだけ。

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 教会に到着し、馬車を繋ぐ。二人がかりで男を担ぎあげ、深夜なせいで完全に締められている表門ではなく裏門から入り込んだ。そこにはすでに、モシェロイが待っていた。彼は葉巻をくゆらせている。

「おう、戻ったか」
「くっさ! 師匠くっさ!」
「いい加減慣れてくれよ……」

 葉巻の火を消しケースに入れると、モシェロイは担架を煉瓦で出来た地面に置いた。そこに、未だ失神している男を乗せる。彼をまじまじと見ながら、モシェロイは何度も頷いた。シャイネから受け取った似顔絵と何度も見比べる。

「ああ、顔は本人だ。間違いない。しかし似顔絵が描かれたのは二日前のはずだが、こんな急激にハゲるものか……?」

 そこに関しては、シャイネは何も言わなかった。ラチカもまた首を傾げるが、かといって何かが分かるわけではない。
 モシェロイが教会の人員を何人か呼び、担架を運ばせた。彼の行く先は分かる。だからこそ後ろ暗い気になるが、仕方ない。彼らは自分達の、れっきとした敵である。

「ご苦労だったな、二人とも。アーネロイも落ち着いたし人員も戻った。数日は休んでもらえる」
「やっぱり人手足りない理由それだったんだ……」
「あの、モシェロイ神父。実は馬車が壊れてしまって」

 シャイネの言葉に、モシェロイは首を傾げる。しかしすぐに、笑いだした。

「何、明日俺が見ておいてやろう。今日はうちのを貸してやる、準備してきてやるから納車庫で待っておけ。三十分もあれば大丈夫だ」

 彼に礼を言い、別れる。納車庫はすぐ近くにあり、屋根もしっかりとついている。とくに壁や扉があるわけではないが、こんな暗い状況では中のカンテラだけで外から内部の様子を図るのは難しい。
 ふたりで内部に入り、ベンチに並んで腰掛ける。

「いやー疲れたねえ」
「ですね。明日からはしばらくお暇を頂けるようですし、何をなさいますか」
「そうだねぇ……って思うと、本当の意味で私の休みかなり久々じゃない? ロドハルトも行ったし」

 ロドハルト、と聞いた瞬間露骨に彼の眉根が寄った。しかしラチカはそれに気付かない。

「うーん、兄さんを手伝うか……いや普通に鍛錬いるかなあ、足遅いって今日私痛感しちゃったよ」
「まあ、それは明日また考えてもいいでしょう。それより」

 シャイネの手が、ラチカの肩に触れた。彼の方を向き直ると、そのまま彼の手がラチカの乳房に移動する。彼の手が掬うようにラチカの胸を揉みあげると、ぎょっとして彼を見た。

「シャ、シャイネっ?」
「いえ……なんとなくもう我慢しなくてもいいかな、と。あれだけの事をしたわけですし」
「何その思い切りの良さ」

 戸惑うも、さっきの今だ。どうも抵抗しづらかった。
 シャイネの息が荒い。余程興奮しているのか、少しだけ開いた口の向こうに唾液が溜まっているのが見える。先程は、あれを、散々……。そう考えると、下腹部が再び愛液をにじませだした。しかしそれに、恐らくシャイネは気付いていない。

「んっ……」

 やわやわと、優しく。しかしどこか焦らすような揉み方がどこかもどかしい。シャイネは再び、顔をラチカの胸元に近付けた。今度は黒い制服に阻まれているが、それでもシャイネは頬をすりつけてくる。それがどこか甘えられているように感じ、振りほどけない。
 ああ、もしかすると。本当に甘えているのかもしれない。

「ああ……柔らかい、すみません……気持ちいい……」

 ふんふん息を荒げながら、シャイネは呟く。その様子が普段のつんと澄ましたシャイネとは真逆に見えて、どことなく庇護欲すら沸いてくる。
 それ以前に、彼の顔が何度も胸を押しつぶしてくる感触が……たまらなく、気持ちよくて。

「シャイネぇ……」

 声がどうしても甘くなる。それを聞き、シャイネはラチカの顔を見た。そのまま、口づけてくる。

「ん、ふぅ……んっ……」
「ん、んっ……」

 舌で唇をなぞられ、そのまま侵入される。それを受け止めるように、優しく舌を絡ませる。唾液がぽたり、と溢れてベンチに落ちた。それでもかまわずに、貪られる。ぐちゅぐちゅ、と卑猥な音を立てながら。

「お嬢様……」

 様子を伺うようにして、シャイネはその目をラチカに向けてくる。何となくでしか分からないが、ひとまず頷く。すると彼の指が、ラチカの制服のボタンにかかった。さっきよりは優しく、一つずつボタンが外される。五つほどボタンが外れると、隠されていたラチカの胸がすべてあらわになった。シャイネはまじまじと見つめてくるが、それがあまりにも恥ずかしくて涙目になってしまう。
 何かを言うより先に、シャイネの舌がラチカの膨らみかけた突起に触れた。

「あんっ……」

 ちゅぷ、ちゅぷ、とさっきより優しい音を立てながらシャイネの口が突起をねぶる。さっきよりも優しく、かつ執拗に。シャイネの手は、ラチカの手に両方とも絡められた。強い力ではないはずなのに、逃げられない。
 乳輪をなぞり、そのまま突起を舌で転がされる。舌の感触、浸されるぬるい唾液。すべてが、ラチカの脳を蕩けさせる。ギャムシアとは違う、優しく、より執拗な愛撫。おかしくなりそうだった。

「あっ……シャイネっ……」

 声を塞がれるように、口づけられる。また違う刺激が、脳を打ち付けた。彼は一向に、止まる気配がない。
 こんなにも、おかしくなりそうなのに。ギャムシアはすぐに挿入してきたが、シャイネはラチカの蜜壺に触れる気配すらない。ひたすら、胸ばかりを食んでいる。もしかすると、ここが好きなのかもしれない。

「シャイネ、気持ちいいの……?」

 頷かれる。そもそもこの質問が痴女のような気がしてしまい一瞬顔が熱くなるが、シャイネは気にしていないようだった。
 ラチカは、何も触れていない。その手はすでに彼に押さえつけられている。彼が勃起しているかも分からない。いや、これでしていなかったらそれはそれで悲しい話なのだが。
 シャイネの唇が、再び乳房の白い部分に触れた。乾く気配の無い唾液を舌で塗りつけながら、彼はずっとうわ言のように「美味しい……美味しい……」と呟き続ける。味など無いだろうに、それでもラチカの耳にその声は甘く響いた。
 そろそろ、もどかしさの限界が来ている。体がぷるぷると震えだした頃、足音が聞こえた。きっとモシェロイだ。
 ラチカが声をかけるよりも早く、シャイネは気付いた。急いでラチカのボタンを留めてやり、自身の頬を叩く。そこまでしなくても、と一瞬ぎょっとしたがモシェロイの影が見えた。

「おう、居たか。馬車の用意が出来たぞ」
「感謝します、モシェロイ神父」

 本当にその切り替えの早さは何なのだ。いやさっきのアレか。
 仕方ないので、急遽誂えられた馬車へと向かう。下着の中で、愛液がぐちゃぐちゃと音を鳴らしているが聞こえていないことを祈るばかりだ。
 馬車に乗り込み、シャイネはいつものように御者台に乗る。モシェロイに見送られながら、馬車は歩き出した。

「屋敷まで眠られても構いませんよ」
「いいよ、もうすぐだし」

 どこか不貞腐れたような答え方になってしまう。
 ……あんなにも、愛撫されて。未だに胸の部分に、あの感触が残っている。よく見ると、拭きもせず服を直したせいか唾液が内側から染みとなって服の内側ににじんでいた。

「シャイネ」
「はい、お嬢様」
「……私、何もしてないけど。いいの?」

 その言葉の真意を汲んでもらえたかは、分からない。シャイネは馬から目を離さなかった。こちらを、見はしない。

「あくまで、俺がしたくてしてることですから。お嬢様の手を煩わせる必要はありませんよ」
「そっか」
「それに、そんな事までさせてしまえば本当に俺は……」

 そこで、彼は口を噤んだ。しかしすぐに、首を振る仕草。

「とりあえず、お嬢様も気持ちよくなってくれたなら俺としては僥倖ですよ」
「僥倖、って……」

 快感を感じないわけが、ないのに。昔の、あの幼児だった頃から彼を知っているのにあんな顔は初めて見た。それだけでも。
 しかしこれ以上、何も言えなかった。言えばきっと、何か。……シャイネの今のところの口ぶりからして、どうも嫌な予感がする。まるで、ここまでしたのに……突き放されてしまいそうな。そんな、予感。
 結局主君と従者だ。自分達は。

「コーマス様に知れたら、俺は恐らくまた懲罰でしょうね。それどころでは済まないかもしれない」

 彼は冗談めかして笑うが、恐らくシャレにはならない。ラチカは「言わないよ」と呟く。

「シャイネが居なくなるのだけは、嫌だもの」

 ずっと傍に居て。エクソシストとして戦う時も、普段も。とにかく彼は、切り離せない程にまでラチカといつも居る。
 シャイネは初めてこちらを向いた。その表情は、月明かりで逆光になってしまって見える事はなかった。

「……ありがとうございます」
「うん」

 彼は再び、馬の方を向いた。がたんがたん、と緩やかに道を進んでいく。
 そうだ、シャイネとの事は。秘密にしなければならない。ギャムシアの事も。
 抱えていく秘密が、どんどんたまっていく。半分くらいは、いつも抵抗をしない自業自得ではあるのだが。ラチカは気付かれないように、重い溜息を吐いた。



 烏は鳩に並び、頭が良いとされる。ロドハルトは昔、その名をアスパロロクと呼ばれていた時から鳩以上に烏を愛用していた。理由は単に、生息地の関係だろう。
 ギャムシアからの伝書烏に「三日後には返事を改めて送る」と旨の手紙をつけ送り返し、コーマスは深い溜息を吐いた。

「……最悪だ」

 コーマスの言葉の背で、ヴェリアナが呻いている。彼女の口には、鎖が噛まされていた。一度情事の際彼女の声が大きいと苦情が来てから、いつもこの形で行っている。しかしコーマスの性嗜好の都合でも、この姿は割と都合がよかった。
 一糸まとわぬヴェリアナの裸体を、そっと指でなぞる。さっき散々愛したが、それでもまだ足りない。しかもこまめに中断が入るせいで散々だ。根っからの仕事人間であるコーマスは、仕事を後回しにするという行為はどうしてもできない。
 ヴェリアナの口元を開放してやる。彼女は大きく音を立てて息を吸うと、涙目でコーマスを見た。弑逆心が膨れ上がるが、一つ咳払いをして無理やり落ち着かせる。

「お前は先に寝ておけ。一旦公務室に戻る」
「あら……大丈夫よ、私。お夜食作るわ」
「すまない、助かる。ミルク粥にしてくれ」

 ヴェリアナはくすくす笑いながら、「はぁい」と可愛らしく返事した。さっきまであれ程鞭を打たれていた部分は、痛々しい程赤く腫れあがっている。かつて自分が傷つけた跡は全身に広がっているが、それは完全に彼のものであるという証だった。

「あの烏、ロドハルトのものよね。進展?」
「ああ。どうもがっついているな、あいつは」

 ……事情を知っているのは、コーマスとヴェリアナだけだ。まだ、ラチカを含め家のものは全員知らない。
 ギャムシア・ロドハルト。彼は、コーマスに対しあくまで真摯に、しかし狡猾に。取引を持ち掛けてきた。

「何故だ? あまりにも急すぎる。ラチカと何かそんな話でもしたのか?」

 未だそういった話を落ち着いて出来てはいないが、恐らくその可能性は低いだろう。一応あれでもエヴァイアンの家のものという自負はあるだろうし、国に関することであれば恐らくどうにかしてでも自分に伝えに来るはずだ。
 しかし、ヴェリアナには何となく分かっている。というより、勘付いていると言った方が正しいか。コーマスに対しギャムシアが持ちかけた話はつまりブラフで、本命の狙いは。あの日のラチカの問いが、まるでそのまま答えのようなものだった。ただ、それを知れば……と。だから彼女は敢えて口を挟まずにいる。
 もし自分の勘が正しければ、ロドハルトの国主はあまりにも周到な策士だ。一国を乗っ取った以上、生半可な者では勿論無いのだろうが。少なくとも、コーマス相手に挫く気は無いらしい。

「ラチカちゃんには話すの?」

 いつもの黒いロングドレスを纏いながら、ヴェリアナは問う。コーマスは顔をしかめた。

「……今から明日の昼食まで、考える。色々調べねばならん事もあるしな」
「分かったわ」

 コーマスは身なりを整えると、部屋を出た。ヴェリアナもまた、彼に貰った帽子を深く被る。

『お前をいっそどこかに閉じ込めたい。誰にも、見せたくない』

 エヴァイアン国主の夫人相手となれば、そういうワガママが通るわけがなかった。せめてもの彼の妥協が、これだ。せめて、その美しい顔を少しでも陰らせられるようにと。自分だけのものに出来るようにと。

「……ワガママな男と結婚すると、苦労するわよ。ラチカちゃん」

 愛せれば、確かに別ではあろうが。
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