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十九・アーチェリーの勝敗はどっち!?
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雲一つない清々しいほど晴れ渡っている午後。予定通り、ユージンに誘われてアーチェリーをするためにスポーツ施設を訪れていた。休日ゆえにそこそこの賑わいだ。
あんなことがあったのでもう少し恥ずかしいかと思ったが、ユージンの態度が変わらないので安堵した。
一射ずつ交代で矢を放ち、見事に的中すれば褒美として、互いのいいところを一つ褒めるという条件をつけることになった。言い出したのはもちろんユージンだ。断りたかったが、的中の都度に一回キスすると言われて戸惑っていたところ、代替案として提示された。ニエルには拒否権がなかった。
ユージンがさっそく的中させる。期待の眼差しでこちらを見てくる。誉め言葉を適当につぶやく。
「顔がいい」
「ありがとう」
今度は難なくニエルが的中させると、ユージンは間髪入れずに口を開く。
「美しい」
「お前に負けるよ」
「そんなことはない。君の美しさはまるで――」
「はいはい、それはもうわかってるから言わなくていい」
一ついうという条件なのに、いくらでも褒めようとするので暴走する前に制する。
「君の番だよ」
「んー、背が高い」
「頑張ったんだ」
「え?」
「なんでもないよ」
そういえば、今更ながら気づいたが原作のユージンよりも、今、目の前にいるユージンの方が若干ながら背が高い気がする。ゲームだとヒロインと並ぶので身長をイメージしやすかったが、同じ世界に存在しているとなると身長までは正確に把握できなかった。また異なる点を発見してしまった。
気を取り直したニエルが矢を放つと、やっぱり的中する。
「食欲旺盛なところも魅力だよね」
「筋肉はつかないけどな」
「そんなところも素敵だよ」
「はいはいありがとう」
「次は?」
またまたユージンは的中させる。褒めてほしいと催促される。
「そうだな、食わせたがり」
「一生、困らせないよ」
「そりゃ頼もしいな」
すぐさまニエルの番がやってくる。ニエルが放った矢は、弦を離れた瞬間、まるで意思を持ったかのようにまっすぐ的へ向かっていった。風を切る音が微かに響き、矢は的の中心部に寸分の狂いもなく突き刺さる。べた褒めされるのは聞き飽きた。しかしユージンは、ニエルがまったく想像していなかったことをつぶやいた。
「──僕の運命」
「それは俺じゃない」
ユージンの運命の相手はイリーナ・アルハインだ。ニエル・ガルフィオンではない。
「いいや君だよ」
「本当に違うのに」
違うと言っているのにユージンは小さく首を振るだけで聞き入れない。
「僕が選んだんだ」
「八歳のときだろ?」
「違うよ」
「え……?」
ニエルが矢を放とうとした瞬間、違うと否定されるとは思わず、そこで初めて失敗してしまった。矢は的まで届かずに手前で落下した。
(……どういうことだ?)
豆腐バナナアイスがきっかけで、ユージンはニエルを選んだとばかり思っていた。婚約者に指名したのも、アイスを食べた翌日だ。あのときではないのなら、一体いつだったのか。一緒に登下校はしても、何かのきっかけになりそうな出来事は、あの一件しか浮かばない。
「僕の勝ちだね」
とうとう負けてしまった。負けてしまったのだが、それよりも、一体いつ決めたのか気になってしまった。
「一つ、お願い聞いてくれるよね?」
「……叶えられる範囲なら」
「今使っちゃうのは勿体ない気がするから、聞いてほしくなったらいうね」
とんでもないことを言い出さないか不安になるものの、叶えられそうもないことを言われたら全力で逃げることにした。
あんなことがあったのでもう少し恥ずかしいかと思ったが、ユージンの態度が変わらないので安堵した。
一射ずつ交代で矢を放ち、見事に的中すれば褒美として、互いのいいところを一つ褒めるという条件をつけることになった。言い出したのはもちろんユージンだ。断りたかったが、的中の都度に一回キスすると言われて戸惑っていたところ、代替案として提示された。ニエルには拒否権がなかった。
ユージンがさっそく的中させる。期待の眼差しでこちらを見てくる。誉め言葉を適当につぶやく。
「顔がいい」
「ありがとう」
今度は難なくニエルが的中させると、ユージンは間髪入れずに口を開く。
「美しい」
「お前に負けるよ」
「そんなことはない。君の美しさはまるで――」
「はいはい、それはもうわかってるから言わなくていい」
一ついうという条件なのに、いくらでも褒めようとするので暴走する前に制する。
「君の番だよ」
「んー、背が高い」
「頑張ったんだ」
「え?」
「なんでもないよ」
そういえば、今更ながら気づいたが原作のユージンよりも、今、目の前にいるユージンの方が若干ながら背が高い気がする。ゲームだとヒロインと並ぶので身長をイメージしやすかったが、同じ世界に存在しているとなると身長までは正確に把握できなかった。また異なる点を発見してしまった。
気を取り直したニエルが矢を放つと、やっぱり的中する。
「食欲旺盛なところも魅力だよね」
「筋肉はつかないけどな」
「そんなところも素敵だよ」
「はいはいありがとう」
「次は?」
またまたユージンは的中させる。褒めてほしいと催促される。
「そうだな、食わせたがり」
「一生、困らせないよ」
「そりゃ頼もしいな」
すぐさまニエルの番がやってくる。ニエルが放った矢は、弦を離れた瞬間、まるで意思を持ったかのようにまっすぐ的へ向かっていった。風を切る音が微かに響き、矢は的の中心部に寸分の狂いもなく突き刺さる。べた褒めされるのは聞き飽きた。しかしユージンは、ニエルがまったく想像していなかったことをつぶやいた。
「──僕の運命」
「それは俺じゃない」
ユージンの運命の相手はイリーナ・アルハインだ。ニエル・ガルフィオンではない。
「いいや君だよ」
「本当に違うのに」
違うと言っているのにユージンは小さく首を振るだけで聞き入れない。
「僕が選んだんだ」
「八歳のときだろ?」
「違うよ」
「え……?」
ニエルが矢を放とうとした瞬間、違うと否定されるとは思わず、そこで初めて失敗してしまった。矢は的まで届かずに手前で落下した。
(……どういうことだ?)
豆腐バナナアイスがきっかけで、ユージンはニエルを選んだとばかり思っていた。婚約者に指名したのも、アイスを食べた翌日だ。あのときではないのなら、一体いつだったのか。一緒に登下校はしても、何かのきっかけになりそうな出来事は、あの一件しか浮かばない。
「僕の勝ちだね」
とうとう負けてしまった。負けてしまったのだが、それよりも、一体いつ決めたのか気になってしまった。
「一つ、お願い聞いてくれるよね?」
「……叶えられる範囲なら」
「今使っちゃうのは勿体ない気がするから、聞いてほしくなったらいうね」
とんでもないことを言い出さないか不安になるものの、叶えられそうもないことを言われたら全力で逃げることにした。
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