幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉

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8話「リメイクドレスに挑戦せよ」後編

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「……あ、このドレス、原作のヒロインが着ていたものにそっくり!」

 人で賑わう大通りのマーケットで、中古のドレスを眺めていると、黄色と青色のストライプ生地で縫われたデイドレスに惹きつけられた。ウエストの位置は胸のすぐ下と高く、肩と襟の部分はパフスリーブで可愛らしい。ハイウエストから下にふんわりと広がるスカートの下には、等間隔に四段ほどフリルがあしらわれていた。

(……そんなに高くないし、買っちゃおうかな)

 石鹸などの必要な日用品以外はなるべく買わないようにしていた。けれど、原作ヒロインのコスプレをしていたことも相まって、久しぶりに着たくなった。

「それを買ってくれたら、このボンネットもおまけでつけるよ?」
「……ください!」
「ありがとう!」

 ボンネットをつけると言われ、お忍びで街に繰り出していた時の原作ヒロインのコスプレが、まさか原作の世界観で出来るのならば安すぎると買ってしまった。着替えられる場所を聞き、ミレアはドレスに身を包んだ。

「わあ……素敵! これで金髪のウイッグもあれば完璧なのになぁ」

 さすがに中古のドレスはあっても付け毛の類いは見当たらなかった。この世界に転生してから、初めてメイド服と寝巻以外の洋服に袖を通した。新鮮だ。
 可愛いドレスに高揚しながら、明日使用する肉や魚を購入していたところ、誰かに肩を叩かれた。

「あの、すいません」
「はい……えっ!?」

 ミレアが振り向くと、そこにいたのは見覚えのある外見の青年だった。それもそのはず。原作の正ヒロインであるマーガレットと結ばれる、従兄弟のエドワード・コートニーだったのだ。つまり、イザベラが恋をしてしまう相手だ。

「ひ、人違いです!」
「あ、待って!!」

 なるべく接触しないつもりでいたのに、うっかり顔を合わせてしまったのでミレアは慌てて逃げ出した。気を抜いてしまった。マーガレットが着用していた衣装と似ているのなら、間違えて声をかけられるということもあり得るのに、すっかり失念していた。

(私のバカ!)

 悔やんでももう遅い。ボンネットをしていたので勘違いしたのだろう。顔を見た瞬間に、幼馴染みではないことはすぐにわかったはずだ。
 ところが、青年はなにかを叫びながら追いかけてきた。

(どうしたらいいの!?)

 メイド服に着替えなければ、職場の邸宅には戻れない。なす術がない。どうしようもない。そんな困っていたミレアを助けてくれたのは、今朝も顔を合わせたばかりの協力者だった。

「君も買い物にきていたの? 荷物、僕が持つよ」
「……エミール様?」
「行こうか」

 エミールは、普段と異なる装いをしているのに、すぐにミレアだと見抜いたらしい。ミレアのことをしきりに気にしていたエドワードと、離れられるように連れ去ってくれた。助かった。

「まだ昼休みは終わらないよね? せっかくだし、アイスでも食べない?」
「いいんですか?」
「外で偶然会えたんだし、行こうか」

 高級な菓子店で味わえる、フルーツ味のソルベをご馳走してもらい、途中で着替えてから邸宅に戻った。
 イザベラからは、道行く人々にリメイクドレスを大絶賛されたと、お礼にチョコレートの詰め合わせをもらった。とても美味しかった。
 エドワードに追いかけられた理由は、ミレアが落としたハンカチを拾ってくれたからだったという。エミールを通して返却され、内心申し訳なく思った。しかし、なるべく接触を控えたかったので、それでよかったと納得した。
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