実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―22

ダメな安倍晴明22

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 崩れた築地塀の影からその者は邸から出てくる影たちを睨んでいた。
 彼はひとつの陰陽法師としての仕事を直言で断られている。
『すまぬな、上等な陰陽師に祓え頼めることになってな』
 依頼人と対面することすらできず、雑人が相手だった。
 屈辱だった。まず、まるで己が下等であるような物言いが気に喰わなかった。都でも随一の腕前の陰陽法師だと自負していた。正式な陰陽師が相手ならばともかく、詳しく話を聞いてみると依頼をかっさらっていたった者たちも官職の陰陽師にはなったことがないという。それに、下郎風情に断りを入れられるのが我慢ならなかった。
 それで己の依頼は誰が横取りしたのか確認せずにはおられなかくなったのだ。
「小僧どもか」
 ここのところ都で名高い年若き陰陽師、なかでも知られているのは晴明という名の若者だ。
「おのれ」
 いつかは潰さねばならない相手だ。都で陰陽法師としてやっていくなら、いま最も名が知れている陰陽師は邪魔だ。しかし、
「よい、今ではない」
 それが結論だ。己が意趣返しをするならやはり呪詛だが、呪詛は法で禁じられている、国から敵視されるようになるのは上手くなかった。
 今は依頼を数こなし、公卿に己を依怙贔屓させるのが先決だ。
 そう考えながら、築地塀をまわり小僧たちとは進行方向が別の場所に出て散策を始めた。
 しばらく歩いていると、人影に遭遇した。女が男の肝を引きずり出して喰らっていたのだ。濃い血臭がする。
「誰だ?」
「陰陽師だ、ただ安心しろ。わしはそもじ(おまえ)の敵ではない」
「敵ではない」
「そう、敵ではないのだ。どうだ、美味い肝がもっと食える内裏に行きたくはないか?」
 とっさのことだというのに彼の口から次々と言葉がこぼれ出る。
 女性の身なりは汚れていた。これならば、と思ったのだ。むろん、絶世の美女の面貌が彼を動かした、これは利用のしがいがある、と。
 それから、彼は彼女を引き連れてとある公卿の邸を訪れた。
 呼び出されて現れた雑人はどこか怯えた顔をしていた。その表情が、肝を喰らっていたせいで血にまみれの衣装を視界に入れたとたんに壮絶に引きつった。
「無事にいたくば、主に目通りさせよ」
 彼は女のことを利用してことを進めた。
 血濡れた女の訪問は、邸の主を引き出すのは早かった。
 寝殿で公卿に向かい合って彼がまず、なにがしたいか明かせと求められた。
「どういうことだ、まろは女を呼び寄せろなどとは申しておらぬが」
「その後、あの妖女が朝堂で寵愛を得られれば、たやすく朝廷を突き動かすこともできましょう」
 彼の言葉に、公卿は渋い表情ながら納得の念をうかがわせる。
「確かに、その娘ごは都のどの姫君よりも美しい」
「主上、新皇が色香に惑うことはままありましょう」
 公卿と彼は違いの顔を見据えて笑みを浮かべた。思ってもなかった形で都で成り上がる道が掴めたのは大きかった。
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