実は安倍晴明は五つ子で互いの功績をひとりの者として扱い後世にはひとりの人物として語られた/時代小説新人賞最終選考落選歴あり、別名義、別作品で

牛馬走

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チャプタ―28

ダメな安倍晴明28

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「されば」
 晴足は主の前からくだんの男のもとへ移動する。
「もし、安倍家の者にございます」
 こう告げたとたん、勝負の手が止まった。
「少し、刻をよろしかろうか」
 先の阿部家の者、という言葉もあって勝負していた男は無言で数度慌ててうなずく。
「しからば」
 晴足が目で例の男に訴えた。
 すると、「お待ちを」と言ってもとの場所に戻る晴足に彼はついてくる。ちなみに、邸の主は既にその場にはいなかった。
「して、なんぞ御用があるとか」
 腰を下ろした晴足の前に男が慌てて座す。
「じ、実は妻が高熱を出して寝込んでおりまして。その長さからして何かしらの呪いか、祟りのせいではなかいかと」
「ふむ」
 晴足はひとつうなずき間を空けた。あまり早急にことを運んで足もとを見られないようにしたのだ。こういう駆け引きに晴足は長けていた。もっとも、当人にしてみれば、
 かようなことに長けてもな――。
 というのが本音だ。陰陽師としての威容があれば、こんなものは必要ないのだ、そう思っていた。
「晴明に都合を確かめねば確かなことは申せませぬが」
「できるだけのことを致しますゆえ、必ず晴明殿を我が邸に遣わしてくだされ」
「貴殿の熱い思いは必ず晴明に伝えましょうぞ」
 身を乗り出す相手を自然に避けながら晴足は応じた。
 と、横に邸の主が立つ。
「あちらの御仁、陰陽法師に物忌みをするよう告げられた由。物忌みの段取りを晴明殿に頼みたいとか」
 告げられた言葉に、晴足はため息をつきたくなった。
 魂胆が透けて見えたのだ。凶事がないか謝礼の低い法師陰陽師にたずね、いざ物忌みをするように告げられると腕の確かな晴明に頼みたくなった、そういうところだろう。
 晴足は渋い気持ちで、双六の列の手前のほうへと足を運んで先ほどと同じ口上を述べた。
 先ほどの段取りで休憩場に相手を連れてくる。
「是非とも、物忌みの段取りを晴明殿に頼まれたい」
「ふむ、されど晴明も忙しいゆえの」
 相手が吝嗇と見込んで最初から渋る。
「そこを曲げて頼みたい」
「されど」
「是非に」
 とまで告げて、相手は「謝礼は弾みまする」とついに言葉を発した。
「そこまでもうすなら、いたしかたない」
 あくまで恩を着せる調子で晴足は言葉をかさねる。そして、盤のほうへ公家を返した。
「今宵はこれにてしまいにござりまするな」
 邸の主が現れて告げた。
「さようか」
 自分は何をしているのだろう、と思いながら晴足は彼に応じる。
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