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チャプター33
ダメな安倍晴明33
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「ところで、おふたりはお聞き及びかな」
雑人が口調を変えて告げる。
「最近、内裏で話題だとか、とある美しい女人が」
ああ、と晴秀が首肯する。
「玉藻前という御仁か」
「さよう、それはもう人の身であるのが信じられぬほどの美貌をそなえておいでとか」
雑人が自分で見てきたように語った。
「官位の低い者にはお目にかかる機会などあろうはずもない」
「されど、陰陽師であればもしやと」
「官(役人)の陰陽師ではないからやはり縁がない」
雑人の言葉に、晴秀が不機嫌に応じた。
「なれど、内裏では女房が時折行方知れずになっているとのこと」
「まあ、だとしても出番があるのは蔵人(公務員)陰陽師であろうな」
晴秀に代わり、雑人の言葉に晴足はこたえた。
にしても――内裏で人が行方知れずになっていたとは知らなかった。
それにここまで雑人に玉藻前のことが知れ渡っていようとは思わなかった。
「かの玉藻前、怪しい噂があるのはご存知か」
雑人が話したくてたまらないというようすで告げる。
「怪しい噂?」
世迷いごとではなかろうな、という目で晴秀が雑人を見やった。
「なんでも、怪しい法師と玉藻前が歩いているところを見た者がいるとか」
「そもそも、どこぞの出とも知れぬと聞いたが」
「それが丑三つ時とくれば話は別でしょう、ご主人」
晴秀の言葉に、雑人が嬉しそうに応じる。どうやら噂話の類が好きな性質らしい。
「ほう、丑三つ時なあ」
だが、晴秀はいかにもどうにもよさげだ。そこで雑人は話し相手を変える。
「もしかすると、玉藻前は化生の類じゃあないでしょうか?」
「話を聞いただけで判じられるなら苦労はない」
しかし、晴足にもため息をつかれ雑人は物足りなそうな顔になった。
「そこでは陰陽道の秘術で」
「さように便利なら、こよいこの場所に我らはおらぬ」
なおも言い募る雑人の言葉を晴足は否定する。
やがて、明らかに意気の下がったようすで雑人は主のもとに戻っていった。
「今の話、いかが思う?」
「内裏のことは蔵人陰陽師に任せておけ」
ふと晴足は曰く言いがたい思いを抱き晴秀に尋ねた。が、彼はどうでもいいと肩をそびやかした。
「主上が入れ替わろうとも、政道は立ちゆく、それが事実だ」
「こら、晴秀、なんということを」
晴秀の不敬極まりない言葉に晴明は叱声を浴びせる。が、
「見ておるぞ」
晴秀が邸の主のほうを手で示したせいでつづきは発せられなかった。兄弟の言った通り、相手がこちらを見やっていたかた仕方がない。
まあ、確かに――内裏の大事に法師陰陽師の出番はないのだ。それは事実だった。
雑人が口調を変えて告げる。
「最近、内裏で話題だとか、とある美しい女人が」
ああ、と晴秀が首肯する。
「玉藻前という御仁か」
「さよう、それはもう人の身であるのが信じられぬほどの美貌をそなえておいでとか」
雑人が自分で見てきたように語った。
「官位の低い者にはお目にかかる機会などあろうはずもない」
「されど、陰陽師であればもしやと」
「官(役人)の陰陽師ではないからやはり縁がない」
雑人の言葉に、晴秀が不機嫌に応じた。
「なれど、内裏では女房が時折行方知れずになっているとのこと」
「まあ、だとしても出番があるのは蔵人(公務員)陰陽師であろうな」
晴秀に代わり、雑人の言葉に晴足はこたえた。
にしても――内裏で人が行方知れずになっていたとは知らなかった。
それにここまで雑人に玉藻前のことが知れ渡っていようとは思わなかった。
「かの玉藻前、怪しい噂があるのはご存知か」
雑人が話したくてたまらないというようすで告げる。
「怪しい噂?」
世迷いごとではなかろうな、という目で晴秀が雑人を見やった。
「なんでも、怪しい法師と玉藻前が歩いているところを見た者がいるとか」
「そもそも、どこぞの出とも知れぬと聞いたが」
「それが丑三つ時とくれば話は別でしょう、ご主人」
晴秀の言葉に、雑人が嬉しそうに応じる。どうやら噂話の類が好きな性質らしい。
「ほう、丑三つ時なあ」
だが、晴秀はいかにもどうにもよさげだ。そこで雑人は話し相手を変える。
「もしかすると、玉藻前は化生の類じゃあないでしょうか?」
「話を聞いただけで判じられるなら苦労はない」
しかし、晴足にもため息をつかれ雑人は物足りなそうな顔になった。
「そこでは陰陽道の秘術で」
「さように便利なら、こよいこの場所に我らはおらぬ」
なおも言い募る雑人の言葉を晴足は否定する。
やがて、明らかに意気の下がったようすで雑人は主のもとに戻っていった。
「今の話、いかが思う?」
「内裏のことは蔵人陰陽師に任せておけ」
ふと晴足は曰く言いがたい思いを抱き晴秀に尋ねた。が、彼はどうでもいいと肩をそびやかした。
「主上が入れ替わろうとも、政道は立ちゆく、それが事実だ」
「こら、晴秀、なんということを」
晴秀の不敬極まりない言葉に晴明は叱声を浴びせる。が、
「見ておるぞ」
晴秀が邸の主のほうを手で示したせいでつづきは発せられなかった。兄弟の言った通り、相手がこちらを見やっていたかた仕方がない。
まあ、確かに――内裏の大事に法師陰陽師の出番はないのだ。それは事実だった。
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