どうやら主人公は付喪人のようです。 ~付喪神の力で闘う異世界カフェ生活?~【完結済み】

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

文字の大きさ
36 / 294
第5章 どうやら王レベルは仕事をしているようです。

人助けはモットーです

しおりを挟む
 「それで何で。私も一緒なんだ?」

病院への道をまっすぐと歩く二人の女性がいた。

黒と妙義である。

「いいじゃない妙義。今日は火曜日じゃないんだから。」

何故か分からないが妙義は黒に誘われて英彦のいる病院へ向かっている。

「いや、火曜日じゃないからって。私だって忙しい日くらいあるんだぞ。」

「でも毎日何分間か、店の前で立ち尽くしていたじゃない。何で中に入らなかったの?」

妙義は見られていた事を知り、恥ずかしそうに小声で、

「心配してた……。」

しかし、黒には聞こえていなかったようで、

「えっ、何て言ったの?」

…と言ってきたので妙義は更に赤面している。

「なんでもない気にするな!!!」

「そう言えば私達って、知り合って間もないのに何回も会ってるみたいね。」

突然、黒は話を変えた。
黒のペースに翻弄されながらも妙義は話を合わせる。

「ああ、基本的に別の曜日のバイト仲間とは会うことが珍しいのだけど…。」

落ち着きを取り戻した妙義がそう答える。

「そう言われれば私、別の曜日にバイトしている人って妙義以外に知らないわ。」

「バイトをしている者にもプライベートがあるからな。皆、日常をバイト仲間に明かしたくないんだよ。でも、私はたまに曜日を間違えてお前たちと鉢合わせする。まったく困ったものだよ。」

「でも、そのお陰で妙義に会えたんだから困った事じゃないと思うの。」

また妙義は赤面している。黒の言ったことが嬉しいのだろうか。

「…いくぞ。英彦が心配だ。」

「妙義ってば。さっきは行く気が無かったのに…。でも、どうしたの? 顔が赤いよ。」

二人は駆け足で病院へ向かった。



 結局、英彦はまだ目覚めていなかったが、医者の話では退院するには一週間もあれば良いほど回復しているようだった。

「「良かったー。」」

二人は安堵しきった顔で病院を出ていく。

「しかし、英彦があんなに酷い怪我をおっているなんて、いったい何があったんだ?」

「ちょっと遠くで色々あったのよ。帰りは私の能力で帰ってきたんだけどね。」

引き出しの付喪人の能力は出し入れするばかりか、移動もできるようだ。ただし引き出しに入らないといけないのと、お腹が空くので彼女はあまり使いたがらない。

「まぁ、お前も付喪人の仕事が大変なんだろう。詳しくは聞かない。そんな事より今から食事にでも行こう。私達昼飯も食ってないし…。」

時刻はちょうど昼時だったので妙義は黒を食事に誘う。


「食事? もちろん行きましょ。行ってみたい店があったのよ。…というかお前もって?」

黒からの質問から逃げるために妙義は走り出した。

黒も妙義を追って走り出す。



 黒達がたどり着いた先は最近テレビで報道されていた高級料理店であるドラゴンの卵焼きの店であった。

その店は希少なドラゴンの卵を使用しており、さらに専用の卵焼きフライパンを使って作った卵焼きである。

もちろんドラゴンなんて滅多に見つからないので高級料理として扱われている。

また普通の卵焼きよりも独特の香りと舌触りで絶品の料理でもあるらしい。

そんな庶民が入れそうにない店の前に二人は立っていた。

「さぁ行きましょ。妙義」

黒は値段の事など考えていないのだろう。

そんな黒を妙義は心配していた。

「黒、流石にここは昼飯には向いてないと思うのだが…。確かにここはいい店だが、今日は持ち合わせが…。家に連絡すれば簡単だけど…。」

黒が入ろうとするのを必死に止めようとする妙義。

普通なら通行人達からの視線が痛く感じるはずなのだが、

しかし、この事が通行人達に迷惑がられそうになる前に彼らの目は別の方向を見ていた。

その視線の先には大勢の人に追いかけられている女性がいた。

何人もの制服を着た人達に追われている。

「妙義。私は…。」

「ああ、分かっている。」

二人の思いは同じだった。

女性を追いかけている集団の前に立ち塞がったのだ。

女性をかばう黒と妙義。

突然の事に女性と集団は驚いている。

しかし、女性は自分の味方だと分かると2人に頭を下げて走り出す。

彼女らがどちらの立場か分かった様子でそれぞれの行動を続けた。

「待ちなさい。貴方達それでも人間なの? よってたかって一人を虐めて恥ずかしくないの?」

黒の一声に集団は驚いたがその中の一人は、

「お前らには関係無いことだ早く道を開けてくれ。」

…と言った。すると、黒の一声に続き妙義も、

「そうだそうだ、お前たちに武士道はないのか。」

…と言ってきたので集団も流石に、

「これは我々の仕事だ。邪魔をするなら分かっているよな。」

…と明らかにヤバイ雰囲気を出しながら言ってきた。

これには流石に二人にも焦りが出てくる。

「あっ…さっき逃げていた人だ。」

黒は指を指した。

それにつられて制服の集団は黒の指差した方向を見る。

だが、もちろんそこには誰もいない。

彼らは騙されたと知った時にはもう遅く、二人には逃げられていた。



 「あの…ありがとうございました。」

二人が逃げ込んだ先の路地裏に先程の女性が隠れてこちらを見て言った。

二人はそんな彼女が無事な事に安心している。

「いや、お礼なんて良い。」

「でもどうして、あんな連中に追いかけられているの? 」

黒の質問を聞くと少し困った顔をして、

「それは…。」

どうやら言いにくい事情のようだ。

この人は悪い人には見えないので、何かがあったとは思うが、黒達は深く聞くことは止めた。

「しかし、何よ。あの集団は…。一人に対し大勢で…。例えあいつらにどんな理由があっても許せない。あれ私の嫌いなタイプだわ。次あったら覚悟してなさい。」

黒が愚痴をこぼす。

「フフ、優しいんですね。」

「フッ…。」

すると、その愚痴を聞いた二人が少し笑っている。

「えっ、何?  私何かおかしいこと言った?」

「いや、こんな美少女な方からも愚痴はこぼれるものなんだと思うと…意外で…。」

しかし、妙義の笑った理由は女性とは違っていたようだ。

「私は…その…黒からそんな言葉が聞けるなんてと思ってな。」

「妙義ってば。せっかくの良いシーンだったのに。」

妙義の笑った理由を聞き、黒は頬を膨らませた。



 その時だった。

「そうか覚悟しろと?
まあ、理由も知らない一般人から見ればそう写るか。」

突然、声がしたかと思うと、彼女らの頭上に建物と建物の間を跨いで下から見下ろしている女がいたのだ。

「あの…見えてますよ。スカート履いてるから…。」

「おい黒。こういうのは言っちゃダメだ。きっと制服なんだ。うん。わざとじゃなく、忘れていたんだろう。ほら、赤面している。」

ようやく降りてきたが、女性の顔はまだ赤い。

その後、彼女は三人の前に立つと気持ちを落ち着かせて自己紹介を始めた。

「私は…八剣(やけん)。国市高等学校生徒会書記やってるわ。
趣味、策略。特技、出世。夢は会長になること。」

「貴方、この被害者の敵?」

黒は肝心な事を知るため聞いてみることにしたのだが、

「敵だねぇ…。」

八剣は呆気もない返事で返してきた。

その答えなので、黒たちは警戒心を解かない。

すると、八剣は自己紹介を続けてきたのだ。

「あと、訳もなく付喪人やってる。レベルは王。
まっ、チームで王だからそんな堅苦しくならなくても良いけど。
それくらいはあると思ってな……ってあれ?」

彼女が説明をし終わった時、目の前には三人の姿はなかった。

八剣が長々と自己紹介をしている間に逃げられたのだ。

「あいつら人の話は聞けって…。」

八剣は片手の掌を宙に向ける。

すると、その掌からは小さな雫が出てくる。

「まっ、逃げられないけど。」

そう言って小さな雫が掌から放たれる。

すると、小さな雫は大きな流水となってまるで竜のように荒れ進んでいった。

そう例えるなら流水の自動追跡である。

「これを追いかけて行った先に奴らがいるってことだな。」

もう一人、路地裏から人影が現れる。

それは紐を操り、車に潰され、ブロードに逃げられたあの国士高等学校生徒会副会長であった。

「何言ってるんです。そんな甘ちゃんの考え方するなんて、やっぱり副会長失格ですね。やっぱり私と…。」

「副会長の座はお前となんて絶対変わらねぇよ。あっ、お前はあいつらの事をどうするんだよ。」

八剣はうっすらと笑みを浮かべて、

「決まってるじゃん。溺死だよ。」

こうして、付喪人であり、生徒会でもある彼らの仕事が始まる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。 世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。 そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。 一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。 ※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

朝敵、まかり通る

伊賀谷
歴史・時代
これが令和の忍法帖! 時は幕末。 薩摩藩が江戸に総攻撃をするべく進軍を開始した。 江戸が焦土と化すまであと十日。 江戸を救うために、徳川慶喜の名代として山岡鉄太郎が駿府へと向かう。 守るは、清水次郎長の子分たち。 迎え撃つは、薩摩藩が放った鬼の裔と呼ばれる八瀬鬼童衆。 ここに五対五の時代伝奇バトルが開幕する。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...