どうやら主人公は付喪人のようです。 ~付喪神の力で闘う異世界カフェ生活?~【完結済み】

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

文字の大きさ
189 / 294
第13章 どうやら犯人は八虐の不道のようです。

もう俺は戦いに疲れた

しおりを挟む
 あの人とのデートの数日後。

「本当に楽しかったな」

私は今でもその至福の一時に酔っていた。
どこまでも続く水平線へと沈む、綺麗な夕日を見ながら二人っきりの時間を過ごせたのだ。
これほど幸せな時間はなかっただろう。
それが今になっても忘れられないのだ。
本当にあの時、あの人と出会えて良かったと思っている。
もちろん、あの人には私の趣味を打ち明ける事はしていない。
たまに、この私の本性をあの人にさらけ出してみたい…と思うのだが。
そんなことをしたらあの人に嫌われる事くらい分かっている。
せめて、きちんと結婚式をあげてからの方がいいだろうな。

「案外、私には幸運があるかもしれないな。そして、今まで通りに過ごせば悔いのない人生を過ごせる気がする」

私はそんな事を頭の中で考えながら、今日の朝食を作り始めた。



 「フンンンン~!!」

鼻唄を歌いながら、華麗なステップを踏むかのように部屋を移動する。
きっと今日も素晴らしい1日を過ごせる気がする。

だが、彼は知らない。
魔王の妹が復活により、この国の運命が大きく揺れ動かされることになってしまう事を……。




────────────────

 場所は変わり、ここは明山宅。

「ちょっと何してるんですか? 二人とも?
確かに今は暇な時間ですけど」

朝からゴロゴロとテレビの前にいる俺達二人に英彦は声をかける。
もう、この際言ってもいいだろう。
俺達二人が先日話し合って決めた今後の事を……。

「なぁ~英彦~。俺はもう働かないことにした!!!」

「そうですか…………はぁ? 今、なんて?」

英彦が不審そうに俺の顔色を見てくる。
それはまるで「病気にでもなったのか?」などと聞き出す時の表情に似ている。
そんな中、黒はテレビから目を離す事もなく、英彦に事情を説明する。

「明山さんはね~働かないって言ったのよ。だって、私達今まで八虐の6人も倒してるのよ。私ももう闘いに疲れちゃって……。しばらくはここでごろごろさせてもらうわ~」

「おい、お前のニート的な理由と一緒にするな!!!」

俺は黒の事を不服に感じながら、指を指して彼女独自の理由に反発する。
今回の事情は彼女の理由と俺の理由がたまたま働かなければいいという結論に至っただけで別に働きたくないという訳ではないのだ。
それに闘いに疲れたとか言っている黒はほとんど活躍していない。
だが、お互いもう付喪人として働きたくないという想いは同じなのだ。
しかし、どんな理由があっても二人が付喪人をやめたいというのは明らかで……。
英彦はその理由を知りたがっている。

「明山さん、あの主人公になりたかった想いはどこにいっちゃったんですか?
黒さんも、あと八虐は2人だよ!!
物語でいったら“最終章”的な立ち位置だよ。
そんなんでいいの?
虚悪の根源に近づいているんだよ!!」

「どうせ、物語の最終章って言ったって長々と引っ張って終わりに決まってるでしょ。終わらないってば。
それに虚悪の根元?
そんなの勇者的なチート能力持ちが4コマ漫画みたいにパッと解決するに決まってるじゃん」

英彦の発言に対して黒はぶっちゃけてしまった。
黒の言い放ったド正論に俺達は何も言い返すことが出来ない。
そして、当の本人は何事もなかったかのように再びテレビに釘付けとなる。
あんなぶっちゃけ話を言ってしまった黒は“SAMURAIサムライ将軍九十九道中”というテレビドラマが放送を終了したことで4日間泣き続けていたのだが……。
先日、その第2期製作が発表されたので上機嫌なのだろう。
だから、しばらくはそのドラマを見て過ごしたいのかもしれない。



 「話を戻そう。英彦、俺は黒みたいな理由じゃないからな。
お前の言う通り、確かに主人公になりたかった想いはまだある。
しかし、あの時」

思い出すのはミハラ戦とスポンジの付喪神戦の事。
俺はあの戦いで目の前の命を助けられなかった出来事以来、自信が持てずにいたのだ。

「俺は救えなかった。
だから、ここはもう黒の言う通りに強力な付喪人や冒険者達に託した方が犠牲者が少ないかもしれないと考えたんだ」

すっかり自信を失くしてしまったのだ。
実際、五百円モードでも太刀打ちできなかった敵がこれからもたくさん現れるのだろう。
そんな時に俺は弱き者を守り通せる想像がまったく出来ないのだ。

「…ッ」

そんなスランプ状態の俺に英彦は何も言い返してくれない。
いや、言い返せないの方が正しいのだろうか。
俺の考えは英彦の心にも突き刺さったようだ。



 しかし、英彦もなんとかして俺に付喪人としての自信を取り戻してほしいようで……。

「はぁ~。いったいどうすれば…」

どうすればスランプから脱け出せるかを頭を抱えて考えている。
すると、話を聞き付けた黒はテレビを消し、自身の仮部屋へと戻っていった。
そして、しばらく物が散らかっていく音が聞こえた後。

「ねぇ~英彦」

黒はドアを少しだけ開いた状態で、英彦に向かって手招きをしている。
何かを企んでいるのだろうか。
ニマニマとした表情をしながら、英彦を呼んでいるのだ。
俺と英彦は一度顔を合わせると、英彦はため息をついて黒のもとへと歩いていった。



 ごにょごにょ。こそこそ。
黒の部屋(仮)からは二人が会話しているというのは分かるのだが、何を言っているのかは聞こえない。
そして、しばらく時間が経った後。
二人は何かを企んでいるような表情で部屋から出てきた。
絶対、何かしら面倒な事を考えているに違いない。

「…………」

怪しんで二人をジッと睨み付けていると……。

「「フッ……」」

やはり、二人は明らかに何かしら企んでいたようだ。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

幻獣保護センター廃棄処理係の私、ボロ雑巾のような「ゴミ幻獣」をこっそり洗ってモフっていたら、実は世界を喰らう「終焉の獣」だった件について

いぬがみとうま🐾
ファンタジー
「魔力なしの穀潰し」――そう蔑まれ、幻獣保護センターの地下で廃棄幻獣の掃除に明け暮れる少女・ミヤコ。 実のところ、その施設は「価値のない命」を無慈悲に殺処分する地獄だった。 ある日、ミヤコの前に運ばれてきたのは、泥と油にまみれた「ボロ雑巾」のような正体不明の幻獣。 誰の目にもゴミとしか映らないその塊を、ミヤコは放っておけなかった。 「こんなに汚れたままなんて、かわいそう」 彼女が生活魔法を込めたブラシで丹念に汚れを落とした瞬間、世界を縛る最凶の封印が汚れと一緒に「流されてしまう。 現れたのは、月光を纏ったような美しい銀狼。 それは世界を喰らうと恐れられる伝説の災厄級幻獣『フェンリル・ヴォイド』だった……。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

追放された回復術師は、なんでも『回復』できて万能でした

新緑あらた
ファンタジー
死闘の末、強敵の討伐クエストを達成した回復術師ヨシュアを待っていたのは、称賛の言葉ではなく、解雇通告だった。 「ヨシュア……てめえはクビだ」 ポーションを湯水のように使える最高位冒険者になった彼らは、今まで散々ポーションの代用品としてヨシュアを利用してきたのに、回復術師は不要だと考えて切り捨てることにしたのだ。 「ポーションの下位互換」とまで罵られて気落ちしていたヨシュアだったが、ブラックな労働をしいるあのパーティーから解放されて喜んでいる自分に気づく。 危機から救った辺境の地方領主の娘との出会いをきっかけに、彼の世界はどんどん広がっていく……。 一方、Sランク冒険者パーティーはクエストの未達成でどんどんランクを落としていく。 彼らは知らなかったのだ、ヨシュアが彼らの傷だけでなく、状態異常や武器の破損など、なんでも『回復』していたことを……。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...