どうやら主人公は付喪人のようです。 ~付喪神の力で闘う異世界カフェ生活?~【完結済み】

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

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第13章 どうやら犯人は八虐の不道のようです。

招かれざる客

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 その表情を見た犯人は怒りを抑え込みながら、深呼吸をすると、2人の王レベルに向かってこう言い残した。

「──ガキ共め。運のいい奴らだ。私には君達に構う暇がもうないんだよ。今の私の叫びが通行人に聞かれてしまったかもしれないからね。この路地道から立ち去らねばならない」

きつそうに吐息を漏らしながら、犯人はこの場を立ち去ろうとしている。
そして、彼はスポンジマンを撤退させた。
このまま通路へと歩き、一般人に紛れて逃げるつもりなのだろうか。
紅葉はこのまま逃がすわけにはいかない…と考えたようで、立ち去ろうとする犯人へ発言する。

「こんまま『はい、どうぞ』って電車ん席ばご老人に譲るごと逃がすわけなかやろ。魔王軍幹部ん八虐ん不道ば逃すわけなかやなか。あんたはもうおしまいばい。このうちが罪ば裁いてやるっちゃけん」

彼女はそう言ってポケットから折紙を取り出そうとしたのだが、犯人は予想外の一言を呟いてしまったのだ。

「近づいてみるかい?  次に私に攻撃した瞬間……いや、いいよ。早く攻撃してくるがいい」

犯人の目はまっすぐ山上の方を睨み付けている。
その目は明らかに何か企んでいる目だ。

「……!?」 

「おっと、すまない何でもない。これなら、ただの正当防衛って事でいいんじゃないかなって思っただけさ」

紅葉の思考に圧をかける犯人の言葉。
正当防衛…とはいったい何の事を言っているのだろう。

「いったい何ば企んどーと?
言いんしゃい!!」

訳の分からないという不安が紅葉を焦らせてくる。

「別に~君には関係ないだろ?
それに敵に作戦を話すわけがないよな?
ほらほら、攻撃してこないのかい?
私はいいよどちらでも。君が選ぶんだ。
──君達は仲間なんだろ?  
だったら仲良くな。フフフ……」

犯人の余裕そうな発言。
そして、意味ありげな発言。
これが更に紅葉の思考を揺らがせる。



 紅葉は必死に彼の作戦について考えようと思ったが、一向に理解ができないので彼女はこれ以上の思考を閉ざし、攻撃することに決めたようだ。

「『折紙享楽……」

紅葉がそう言って、ポケットから折紙の能力を発動させようとしたのだが……。
折紙を全て出してしまったのが悪かった。
両手にいっぱいの折紙の作品で、一瞬でも早く犯人を攻撃しようと考えたのがまずかった。
犯人は自身の血に染まったポケットから何かを取り出して、紅葉の折紙の上を狙って投げてきたのだ。



 その何かが折り紙の上に乗った時…。
それは火を放ちながら、折り紙に引火し始めた。
彼女の目線の先にある物、それはライター。
彼女の両手の上で燃える折り紙。

「熱ッ!?」

彼女は思わず、その折り紙達をライターごと地面に落としてしまう。

「──ああ、それかい?
それは私が300円くらいで買ったライターだよ。さっき出店でついでに買ったのを思い出したんで、投げてみたのさ。フゥ、これで攻撃はできないね」

犯人の作戦にまんまとハマった紅葉。
彼女が攻撃用として残しておいた折り紙は全てライターによって燃やし尽くされてしまったのだ。



 ボコボコに蹴られ動けない山上。
攻撃の手段を失った紅葉。
この短時間で犯人は2人の王レベルの付喪人を殺すことなく打ち負かしたのだ。
その現実を受けとめられずに、ショックを受ける王レベルの2人。
彼らのプライドはもう崩れ去っている。

「──ちなみに山上にはなにもしてなかった。君はもう少し冷静に判断しなきゃなッ!!」

犯人は紅葉に当て身を行い、彼女の首筋に強烈な打撃を与える。
しかし、彼女は気絶することはなかったが、痛みで苦しがっており、地面に横に倒れてしまった。

「それじゃあ、失礼するよ」

犯人は2人に手を振って、その場を離れようと歩き始める。
まるで、泥棒のように周囲をチラチラと警戒しながら路地道から出ようとする犯人。
狭い路地道の地面には血が飛び散っており、簀巻の血と共に彼の荷物やスポンジマンの亡骸しかない。
その事件現場から彼は逃げ出そうとしている。
犯人は巻き込まれた一般人のような形相で颯爽と責任逃れするつもりなのだ。
だが、人生とはそれほど甘いものではなかったようだ。

「ここか……?」
「この事件現場は明らかにそうね」

なんと、路地道と通りを繋げる通路から物音に誘われたのか、2人の男女が路地道へと姿を表したのである。




────────────────────
    犯人の目の前に現れた2人の男女。
一見、興味本位で来てみたカップルのように見えるのだが……。
犯人はその彼女達を知っている。
黒髪の変なメガネを頭にのせた少年と、長い金髪のクールな女性。明山と妙義である。
そして、彼らも犯人の事を知っている。
だが、おそらく彼が殺人犯であるという事には気がついていないだろう。
お互いの顔を確認した瞬間、金髪の女性は犯人の事を心配して駆け寄る。

「おい!?   鈴木さん。大丈夫か?  怪我がひどいぞ。何があった?」

血まみれで大ケガをしている犯人に駆け寄ろうとする女性。
さすがに疑われてはまずいと思ったのだろう。
犯人はわざと巻き込まれた一般人のような振る舞いを行い始めた。

「──やぁ、2人じゃないか。良かった~。
気を付けるんだよ。ここから離れるんだ。突然、スポンジの化け物が現れて、簀巻を殺したんだ。バラバラになった。人間がバラバラだぞ。
あわわわ、そこの2人も襲っていた。このままじゃ殺されてしまう」

恐怖で震えきっているような演技でこの場を逃れようとする犯人。

「──ああ、それなら見たぜ。2体ほどな。
今は英彦と黒が相手をしてくれている」

だから、来たのが2体ほど数が足りなかったのか…と犯人は心の中で納得する。

「…ッ!?   じゃあ早く私を助けてくれ。傷口が痛むんだ」

必死に傷が痛いというアピールを行う犯人、もちろんこれも半分は演技である。
しかし、2人には思うことがあるようで……。

「でも、妙なんだよな。妙な事が2つあるんだけど。
俺たちは更に2体のスポンジマンが走っているのを追いかけてきたんだ。
そして、たどり着いたら、スポンジマンもいない、その代わりにあんたがいたんだよ」

「ああ、明山の言う通りだ。確かに距離は離れてしまったが、来るときにスポンジマンなんかにすれ違わなかったぞ?
私が保証する」

どうやら、2人は先程犯人が呼んだスポンジマンの2人の跡を追ってきたようだ。


「じゃあ、きっとどこかに隠れているんだ。気を付けてくれあいつは危険だ」

「でも、妙な事はもう1つあってな……」

男が手元から取り出したのは携帯電話。

「数分前に簀巻から電話が来てさ。ずっと通話中になってんだよ。向こうから声が聞こえるしな。叫び声とか笑い声とか」

通話中。
実は簀巻が背中に隠して何かをしていた時、電話を掛けていたのだ。
証拠になるのは水晶玉だと犯人は考えていたのだが、その時すでに犯人は簀巻に騙されていたのだ。

「まさか!?」

犯人が簀巻の血がついている荷物の場所を見ると、そこには完全に閉じきっていない携帯電話が……。
これでは今までの会話は全て聞かれているも同然。
犯人に逃げ場はなくなってしまったのだ。

「妙だろ?  なぁ、鈴木さん。いや、やっと見つけたぜ。犯人さんよォォォ~」

彼は犯人を指差して、決定付ける。
これでもう犯人の正体が明らかになったのだ。

「明山平死郎……。お前って奴は…」

激しい怒りを抑え込みながら、彼らを睨み付けている犯人。

次回、遂に不道(スポンジマン)とのリベンジマッチが幕を開ける。
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