どうやら主人公は付喪人のようです。 ~付喪神の力で闘う異世界カフェ生活?~【完結済み】

満部凸張(まんぶ凸ぱ)(谷瓜丸

文字の大きさ
247 / 294
15.5章 魔崩叡者霊興大戦ラスバルム(西)

大江御笠

しおりを挟む
 体が崩れるように毒に犯されていく。
油断した隙に刺さった刃から毒が全身にまわっていく。
先程までの威勢は消え去り、彼は今地面に膝を落とした。
だが、決して叫び声や苦痛の声をあげることはない。

「…………」

ジッと恨めしそうに山上を見ていた。
恨めしい。恨めしい。恨めしい。
大江の心の中にドロドロとした呪怨が満ちていく。
彼は完全に山上に殺意をむき出しにしたまま、何を思ったか自らの腕を切り落とした。

「『終術蝕涙(しゅうじゅつしょくるい)・大嶽(おおたけ)』!!」

最後の最終奥義。使うつもりもなかった禁止されていた技。大江は最後の最後に自らの自我を捨ててまで、暴れるつもりのようだ。
彼が切り落とした腕からは大量の流血ではなく。異色なスライムがドバドバと流れ落ちていた。
そして、スライム達は集合し、形を構成していく。一方、大江の体はだんだん小さくなっていく。

「私は…………まだ、死ねん!!!」

3m級の大きさになってもスライムの膨張は止まらない。
大江の側でどんどん大きくなっていく。



 だが、全身に猛毒がまわっている大江にとってはここまでが限界のようで………。
最終奥義の完成もできず、大江の体も隣のスライムも崩れ始めた。

「…………本当にこれが私の終わりなの……か?」

体をスライムに奪われかけたその醜い姿。
かつて、まだ駆け出しの武士だったころ、武を極めてきた1人の侍の姿はそこにはない。
スライムは地面にじわじわと消え始め、彼はもう助かることすらできない。
朽ちていく。消えていく。失くなっていく。

「私の刀はここで跡絶える……?」

侍の道を歩んできた男が最後に悲しそうな表情で地面に消えていく。

「嗚呼、私は人より長く生きすぎたのだな」

少なくともその生涯はよきものであったとは言えない。
父が不倫し、母がおじさんに連れられていかれた。
それでも生きた。あいつと共に………。

「(…………………あれはいったい誰だ?)」

私と道場に通っていた仲のよいあいつは誰だったかな。
兄か?  姉か?  親友か?
思い出せないほど古い歴史。
それほど彼は長く生きすぎてしまったのだ。

「(まぁ、あれが誰かは考える必要はない。もうすぐ会える………………)」

1人の侍がいたとされる場所に遺されたのは、
赤と黒の着物に体を通していた和服だけ。
こうして、山上達は最後まで彼を見送った。



────────────

 山上達の戦いは終了し、周囲にいたスライム達は『大江御笠(おおえみかさ)』と共に消滅。
西軍は多数の犠牲者を出しながらの戦勝。

「終わりましたね」

「終わったな~」

柱にもたれ掛かり、山上と八剣は休息を取っていた。

「副会長………。これで魔王城に侵入するんですよね」

八剣はまだ気が抜けていないようで、今後の事を考えている。
確かに八剣の言う通り。大江との戦いが終わったとしてもその先には魔王との戦いが待ち受けているだろう。
今、他の方角で戦っている戦士だけで果たして勝てるだろうか。
いや、そもそも大江のような敵将がたくさんいるはず………。
逸れに彼らが勝利しているかもわからない。
このメンバーだけで戦うことになるかもしれないのだから。
他方角の状況が分からないというのは不安である。

「みんな大丈夫だろうか………」

山上はいつもより元気もなく、不安そうな表情でふと呟いた。

「それは分かりません」

でも、八剣は大丈夫だと言えるほどの確信は持ち合わせていない。
ここで問題ないと言ってしまえば後で再開したときが辛くなるからである。

「ですが、どうなろうと我々は失った者達の意思を背負っています。その真実は変わりません。それが例え私たちが全滅しても、誰かが意思を継いでくれる。成し遂げてくれる」

「そうか。確かにそう思えば死んでも悔いはあるが後悔はなさそうだな。
だが、全滅はゴメンだな。俺はあの約束を守るぜ。みんなで………生徒会で……ラーメン食うんだろ?」

そういえばそんな約束をしていたな……と八剣は思い出す。
戦争が終わったらみんなでラーメンを食いにいくと話していたのは彼女も覚えている。
だが、この人数で更に魔王との戦いが待ち受けているとなると……。
敵将戦で既に何人か生徒会のメンバーも殺されている。
それでも、生きてラーメンを食いに出かけるという事を決めてしまった。
その約束は八剣も破るつもりはない。

「─────そうですね。じゃあまずは気絶している塩見さんを治療部隊の所に運んであげなきゃです。
時間がありませんし………」

「あっ、そうだったな。塩見さんを運ばねぇと……!!
治療部隊に怒鳴られちまう」

地面で今にも息途絶えそうな塩見。
すぐにでも彼を治療してあげないと死んでしまう。
山上達は側で倒れていた塩見の腕を肩にまわして一歩一歩、みんなのもとへ歩き始めた。
そんな時、塩見の右肩を支えて歩いていた八剣が小さな声でボソボソと呟いた。
しかし、山上の耳にはその声が聞こえない。

「ん?  どうした?」

「…………なんでもないですよ。戦争が終わったら生徒会長の座はいただきますって言っただけです」

「お前………まだ狙ってやがったのかよ」

山上は八剣の言葉にやれやれと思いながらも軽く笑みを浮かべる。
その笑みを見て八剣も思わずほほを緩ませた。
いつもならこうして共同作業を行うこともない犬猿の仲の2人。
彼らの戦いはまだ終わってはいない。
魔王を倒した後でも彼らとの戦いが待っている。
それでも、今は心安らかに安堵する平穏な時が流れていてもいいかもしれない。
彼らの戦いはこれからなのだから………。


──────────────────

魔崩叡者霊興大戦ラスバルム(西)


敵将:大江御笠(おおえみかさ)討伐
連盟同盟:200人の戦死者。60人の負傷者。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
恋愛
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

Radiantmagic-煌炎の勇者-

橘/たちばな
ファンタジー
全てを創世せし神によって造られた、様々な種族が生息する世界──その名はレディアダント。 世界は神の子孫代々によって守られ、幾多の脅威に挑みし者達は人々の間では英雄として語り継がれ、勇者とも呼ばれていた。 そして勇者の一人であり、大魔導師となる者によって建国されたレイニーラ王国。民は魔法を英雄の力として崇め、王国に住む少年グライン・エアフレイドは大魔導師に憧れていた。魔法学校を卒業したグラインは王国を守る魔法戦士兵団の入団を志願し、入団テストを受ける事になる。 一つの試練から始まる物語は、やがて大きな戦いへと発展するようになる──。 ※RPG感のある王道路線型の光と闇のファンタジーです。ストーリー内容、戦闘描写において流血表現、残酷表現が含まれる場合もあり。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

朝敵、まかり通る

伊賀谷
歴史・時代
これが令和の忍法帖! 時は幕末。 薩摩藩が江戸に総攻撃をするべく進軍を開始した。 江戸が焦土と化すまであと十日。 江戸を救うために、徳川慶喜の名代として山岡鉄太郎が駿府へと向かう。 守るは、清水次郎長の子分たち。 迎え撃つは、薩摩藩が放った鬼の裔と呼ばれる八瀬鬼童衆。 ここに五対五の時代伝奇バトルが開幕する。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...