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ごまかしはきかない
そして姉弟になった
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終業のチャイムが鳴ると、すぐさま会社近くの居酒屋さんへ朝倉さんとなっちゃんに手を引かれて連行された。
「で?! 魁十くんと血縁関係はないってどういうこと?!」
「まだ飲み物すら来てないのに」
「朝倉さんのせいでおあずけ食らって我慢の限界なんですよ! 遠山さん、律儀に朝倉さんの言うこと守って教えてくれないし!」
「遠山さんなら約束守ってくれるって信じてた。で、どういうこと?!」
朝倉さんもなっちゃんも、そんな鼻息荒く期待値を上げられてしまうと逆に話しにくいんだけど。
「3歳の時に、私のママと魁十のパパが再婚したんです。私の方が2ヵ月誕生日が早いから私がお姉ちゃんねって、姉弟になりました」
「2ヵ月? じゃあ同級生?」
「はい。同じクラスになったことはないんですけど」
「そりゃ遠山が二人いたらややこしいもんね」
「姉弟で同級生の時点でもうややこしいよ」
「うちの学年、4月生まれと3月生まれの兄妹も男女の双子もいたから特に珍しくはなかったよ」
遠山姉弟、山田川兄妹とかってまとめて呼ばれたりしていた。
「魁十の本当のママは女優さんで、アメリカで制作される映画の主演に抜擢されたのと同時期に魁十がおなかにいることが分かったの。魁十を産むことは二人とも同意したんだけど、どうしても夢を諦めきれなくて話し合いを重ねた結果、二人は結婚せず別れを選んだの」
「ドラマチックー」
「で、魁十はパパが引き取って、魁十のママは産後ひとりで渡米したの」
「女優の息子かぁ。どうりで顔が整いまくってるはずだ」
「魁十はパパ似だよ」
「魁十くん似のイケメンで元カノは女優。キラキラ人生だなあ。羨ましい」
それが、そうでもない。
「パパは普通のサラリーマンで、魁十の祖母が面倒見てたんだけど、虐待があったらしくて……」
「魁十くんを?!」
「若くしておばあちゃんになっちゃったから、まだ遊びたかったんだろうってパパは言ってた。自分たちの決断に勝手に巻き込んだ俺にも責任があるって」
パパが予定よりも早く出張から帰ったら、首輪とリードでテーブルの脚に繋がれた魁十がひとりでテレビを見ていたらしい。
「ママとパパは結婚はしない方針で付き合ってたけど、魁十のために家族になろうって結婚したんだって」
「なんで結婚しない方針だったの?」
「ママがもう結婚したくないって思ってたんだって。前の旦那さんがモラハラのひどい人だったみたいで」
「遠山さんは覚えてないんだ?」
「ううーん……怒鳴り声くらいしか覚えてないですね」
「うわあ」
「察した。ごめん、忘れて」
結婚に至る経緯を私たちに伝えるつもりはなかったんだと思う。
話してくれた時、ママはたいそう酔っていた。
すっごく幸せそうに
「紗夜と魁十が仲良くじゃれてるのを見てたら、結婚して良かったって、心の底から思うの」
ありがとう、大好き!
と両手に花状態で私たちを抱きしめたママの笑顔を思い出す。
私の酒好きはきっとママ譲り。
「本当のお母さんとは魁十くん全然会ってないの?」
「うん、ずっとアメリカだし。でも割と自由人というか後先考えない人だから問題起こしがちで、ネットで検索したらニュース記事が出てくるよ」
日本の作品にはほとんど出ていないけど、アメリカで活躍する日本人女優として記事になってる。
「魁十くんとはだいぶ違うね」
「いつか訴えられたら俺が助けるって、魁十は国際弁護士目指してます」
「魁十くんには母親が二人いるんだ」
「そうですね」
「偉いなあ。会ったこともない母親でも助けようだなんて」
魁十はそういう子なの。
損得で考えない、ありのままを受け入れる懐の深い子なの。
「いいなー。血の繋がらない義理の弟とひとつ屋根の下なんて、絶対最後にはくっつくやつじゃん」
「くっつく?! ないない!」
「どうして? 魁十くんに不満なところがあるの?」
「ないですけど。頼り切ってますし」
「じゃあ、くっつかない理由ないじゃん。いいなー。私もイケメンの義理の弟が欲しかった!」
え……待って。ちょっと待って。
「弟とくっついてもいいの?」
「義理だもん、元は他人のただの男女でしょ」
元は他人。
魁十も言ってた。
「えー、どうしよう?! 弟だとしか思ってなかったのに意識しちゃいそう!」
「いいなー、私もそんな贅沢な悩み抱えたかったー」
「贅沢じゃないの! 弟、今変なムーブメントが来てて」
「なっちゃん、今日はとことん付き合うよ。飲んじゃおうー」
ひどい! すっかりやさぐれて二人とも真面目に話聞いてくれない!
困る……私をもてあそんで楽しむ魁十を意識なんかしちゃったら、身も心ももたないよ!
「で?! 魁十くんと血縁関係はないってどういうこと?!」
「まだ飲み物すら来てないのに」
「朝倉さんのせいでおあずけ食らって我慢の限界なんですよ! 遠山さん、律儀に朝倉さんの言うこと守って教えてくれないし!」
「遠山さんなら約束守ってくれるって信じてた。で、どういうこと?!」
朝倉さんもなっちゃんも、そんな鼻息荒く期待値を上げられてしまうと逆に話しにくいんだけど。
「3歳の時に、私のママと魁十のパパが再婚したんです。私の方が2ヵ月誕生日が早いから私がお姉ちゃんねって、姉弟になりました」
「2ヵ月? じゃあ同級生?」
「はい。同じクラスになったことはないんですけど」
「そりゃ遠山が二人いたらややこしいもんね」
「姉弟で同級生の時点でもうややこしいよ」
「うちの学年、4月生まれと3月生まれの兄妹も男女の双子もいたから特に珍しくはなかったよ」
遠山姉弟、山田川兄妹とかってまとめて呼ばれたりしていた。
「魁十の本当のママは女優さんで、アメリカで制作される映画の主演に抜擢されたのと同時期に魁十がおなかにいることが分かったの。魁十を産むことは二人とも同意したんだけど、どうしても夢を諦めきれなくて話し合いを重ねた結果、二人は結婚せず別れを選んだの」
「ドラマチックー」
「で、魁十はパパが引き取って、魁十のママは産後ひとりで渡米したの」
「女優の息子かぁ。どうりで顔が整いまくってるはずだ」
「魁十はパパ似だよ」
「魁十くん似のイケメンで元カノは女優。キラキラ人生だなあ。羨ましい」
それが、そうでもない。
「パパは普通のサラリーマンで、魁十の祖母が面倒見てたんだけど、虐待があったらしくて……」
「魁十くんを?!」
「若くしておばあちゃんになっちゃったから、まだ遊びたかったんだろうってパパは言ってた。自分たちの決断に勝手に巻き込んだ俺にも責任があるって」
パパが予定よりも早く出張から帰ったら、首輪とリードでテーブルの脚に繋がれた魁十がひとりでテレビを見ていたらしい。
「ママとパパは結婚はしない方針で付き合ってたけど、魁十のために家族になろうって結婚したんだって」
「なんで結婚しない方針だったの?」
「ママがもう結婚したくないって思ってたんだって。前の旦那さんがモラハラのひどい人だったみたいで」
「遠山さんは覚えてないんだ?」
「ううーん……怒鳴り声くらいしか覚えてないですね」
「うわあ」
「察した。ごめん、忘れて」
結婚に至る経緯を私たちに伝えるつもりはなかったんだと思う。
話してくれた時、ママはたいそう酔っていた。
すっごく幸せそうに
「紗夜と魁十が仲良くじゃれてるのを見てたら、結婚して良かったって、心の底から思うの」
ありがとう、大好き!
と両手に花状態で私たちを抱きしめたママの笑顔を思い出す。
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「うん、ずっとアメリカだし。でも割と自由人というか後先考えない人だから問題起こしがちで、ネットで検索したらニュース記事が出てくるよ」
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「魁十くんとはだいぶ違うね」
「いつか訴えられたら俺が助けるって、魁十は国際弁護士目指してます」
「魁十くんには母親が二人いるんだ」
「そうですね」
「偉いなあ。会ったこともない母親でも助けようだなんて」
魁十はそういう子なの。
損得で考えない、ありのままを受け入れる懐の深い子なの。
「いいなー。血の繋がらない義理の弟とひとつ屋根の下なんて、絶対最後にはくっつくやつじゃん」
「くっつく?! ないない!」
「どうして? 魁十くんに不満なところがあるの?」
「ないですけど。頼り切ってますし」
「じゃあ、くっつかない理由ないじゃん。いいなー。私もイケメンの義理の弟が欲しかった!」
え……待って。ちょっと待って。
「弟とくっついてもいいの?」
「義理だもん、元は他人のただの男女でしょ」
元は他人。
魁十も言ってた。
「えー、どうしよう?! 弟だとしか思ってなかったのに意識しちゃいそう!」
「いいなー、私もそんな贅沢な悩み抱えたかったー」
「贅沢じゃないの! 弟、今変なムーブメントが来てて」
「なっちゃん、今日はとことん付き合うよ。飲んじゃおうー」
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