うちの弟がかわいすぎてヤバい無理!

はちみつ電車

文字の大きさ
65 / 86
ごまかしはきかない

我慢の限界

しおりを挟む
思うように力の入らない手で、大輝くんの腕を引きはがそうとするも、大輝くんの笑い声が聞こえる。

「いいよ、もっと盛り上げて。もっと泣いて」

びくともしない……。
力の差が大きすぎる。心が折れそう……。

「俺、半年も減給言い渡されちゃったんだけど。課長だっていい思いしたくせにひどくない? 紗夜ちゃんからも会社に言ってよ。今でも金足りねえのに困るんだよ」

ちょうだいって言えばもらえるくせに。
声が出ないから、大輝くんを睨みつけ必死に首を振る。

「すげえいい。めっちゃ誘ってる顔してるよ。俺も我慢の限界」
「痛っ」

ガリッと歯で耳を嚙まれた。
余裕たっぷりに見下ろされて、抵抗しても無駄だって言われてる気分……。

抗おうとするから苦しませられる。痛い思いをする。
大輝くんの言う通りに、大人しくしていた方が楽なんじゃ……。

最後に、思いっきり力を入れて、それでもダメならもう――

グッと渾身の力を込めて大輝くんの腕を掴み、肘を伸ばす。

フッと、体の重みがなくなり、ドスンと音がした。

何?!
廊下に寝転がって両手を伸ばした先には何もない。天井があるのみ。

「痛ってえ……いたのかよ」

いたのかよ?
呆然と天井を見つめていたら、魁十の顔が現れた。

「紗夜、大丈夫?」
「魁十……いたんだ」
「部屋で勉強してたらパリーンってすげえ音が聞こえたから」

魁十の顔を見たら安心してまた涙が出てくる。

「カップル間でも強制性交等罪は成立しますよ」
「嫌だなあ、ただのプレイですよ。君のお姉さんは無理矢理のシチュエーションが好きなの」
「ふざけんな。警察呼びます」
「待てって! 何もしてねえのに警察沙汰はおかしいだろ」
「未遂なだけの犯罪です」
「犯罪? 嫌だやめてって言うのはただのお約束だろ。俺は1回で満足なのに女の方からしつこく連絡してくるんだから、完全に同意してるだろ」

……本気でそう思ってるんだ。
大輝くんにしてみれば、女性が嫌がってるのは演技で実は自分を求めているのが「普通」。

体を起こして見ると、大輝くんは玄関に落ちて座り込んでいた。
立てたひざに肘をついて、頬杖しながら魁十を見上げている姿はさっきの暴力的な男と同一人物だとは思えない美しさ。

「紗夜を馬鹿な女たちと一緒にすんな。二度と紗夜に近付かないなら1回だけは見逃してやる」
「ふざけんな! 彼女にしてやったんだから十分だろうが!」
「事情聴取でもそう言えば」
「やめろ!」
「それもただのお約束だろ」

スマホを手に無表情の魁十をぐぬぬ……と悔し気に大輝くんが睨み、クルリと背を向けてドアノブへと手を伸ばした。

「会社で紗夜に不利益な言動をした場合も罪状増やして警察に突き出すからそのつもりで」
「……お前マジでうぜえな」
「俺はお前みたいな馬鹿相手にすんの嫌いじゃない。綺麗な馬鹿ってすげえ滑稽で好き」

たぶん、馬鹿にされたのは人生で初めてなんだろう。
大輝くんは顔を真っ赤にして何も言わずに出て行った。

……終わった……キッパリと別れられた。

安心やら虚しいやら後悔やら感情が大渋滞。

廊下に座り込む私の前に魁十がひざ立ちになって、頬に残る涙の跡を指で拭う。

「んっとに、隙だらけなんだから……」
「ごめん……また迷惑かけて」
「迷惑じゃない。心配。あいつの背中で紗夜が見えなかったから状況分かんなかった。入れられてたら殺してた」

……言い方……もうちょっと言葉選んでくれないかな。
たくさん難しい言葉知ってるのに。

「何が我慢の限界だよ……たかだか数ヶ月程度でふざけんな」
「魁十?」
「何年も何年も毎日毎日気安く好き好き言って抱きついてくるわチューしてくるわ」
「あの、魁十?」
「何度限界だって思ったか分かんない……けど、俺は紗夜が望まないなら我慢する。自分がどれだけ限界だって、紗夜を傷付けるようなことはできない」

魁十の両腕に包み込まれている。
頬に感じる一定のリズムがものすごく速い。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

同居人の一輝くんは、ちょっぴり不器用でちょっぴり危険⁉

朝陽七彩
恋愛
突然。 同居することになった。 幼なじみの一輝くんと。 一輝くんは大人しくて子羊みたいな子。 ……だったはず。 なのに。 「結菜ちゃん、一緒に寝よ」 えっ⁉ 「結菜ちゃん、こっちにおいで」 そんなの恥ずかしいよっ。 「結菜ちゃんのこと、どうしようもなく、 ほしくてほしくてたまらない」 そんなにドキドキさせないでっ‼ 今までの子羊のような一輝くん。 そうではなく。 オオカミになってしまっているっ⁉ 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* 如月結菜(きさらぎ ゆな) 高校三年生 恋愛に鈍感 椎名一輝(しいな いつき) 高校一年生 本当は恋愛に慣れていない 。・.・*.・*・*.・。*・.・*・*.・* オオカミになっている。 そのときの一輝くんは。 「一緒にお風呂に入ったら教えてあげる」 一緒にっ⁉ そんなの恥ずかしいよっ。 恥ずかしくなる。 そんな言葉をサラッと言ったり。 それに。 少しイジワル。 だけど。 一輝くんは。 不器用なところもある。 そして一生懸命。 優しいところもたくさんある。 そんな一輝くんが。 「僕は結菜ちゃんのこと誰にも渡したくない」 「そんなに可愛いと理性が破壊寸前になる」 なんて言うから。 余計に恥ずかしくなるし緊張してしまう。 子羊の部分とオオカミの部分。 それらにはギャップがある。 だから戸惑ってしまう。 それだけではない。 そのギャップが。 ドキドキさせる。 虜にさせる。 それは一輝くんの魅力。 そんな一輝くんの魅力。 それに溺れてしまう。 もう一輝くんの魅力から……? ♡何が起こるかわからない⁉♡

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

出逢いがしらに恋をして 〜一目惚れした超イケメンが今日から上司になりました〜

泉南佳那
恋愛
高橋ひよりは25歳の会社員。 ある朝、遅刻寸前で乗った会社のエレベーターで見知らぬ男性とふたりになる。 モデルと見まごうほど超美形のその人は、その日、本社から移動してきた ひよりの上司だった。 彼、宮沢ジュリアーノは29歳。日伊ハーフの気鋭のプロジェクト・マネージャー。 彼に一目惚れしたひよりだが、彼には本社重役の娘で会社で一番の美人、鈴木亜矢美の花婿候補との噂が……

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

【完結】冷徹執事は、つれない侍女を溺愛し続ける。

たまこ
恋愛
 公爵の専属執事ハロルドは、美しい容姿に関わらず氷のように冷徹であり、多くの女性に思いを寄せられる。しかし、公爵の娘の侍女ソフィアだけは、ハロルドに見向きもしない。  ある日、ハロルドはソフィアの真っ直ぐすぎる内面に気付き、恋に落ちる。それからハロルドは、毎日ソフィアを口説き続けるが、ソフィアは靡いてくれないまま、五年の月日が経っていた。 ※『王子妃候補をクビになった公爵令嬢は、拗らせた初恋の思い出だけで生きていく。』のスピンオフ作品ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

処理中です...