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檻の中で
私の好き、は
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久しぶりに魁十がムスッとした仏頂面で帰ってきた。
「あ、あの……うちの会社の人が迷惑かけてごめんね」
「マジで迷惑。こんなことが二度とないようにして」
怒ってる怒ってる。
怒ってても魁十は地球上で一番かわいい。
「あいつ、たしかバイク乗ってたよな」
「うん、バーベキューの時に乗ってたね」
今となっては大輝くんの人間性はゴミ以下だと思うけど、あれはカッコ良かった。
「すげえな。あいつ無免許だよ。身分証が保険証しかないって言って必要書類の説明を何回も聞きに来たもん」
「免許持ってないの?!」
「俺が何もしなくてもそのうち捕まるんじゃねーの」
別れて本当に良かった……。
「紗夜も何を一緒になってギャーギャー騒いでたんだよ。人が仕事してんのに俺の紗夜と勝手に盛り上がりやがって腹立ったわ」
「私の方こそだよ。大輝くんがカイのことかわいいかわいいって言うから腹立っちゃって」
「なんで」
「私が一番魁十をかわいいって思ってるもん。大輝くんなんかに譲れない」
「一番?」
「一番……」
魁十が笑って私の髪を触る。
そういう、弟っぽくないことをされるとドキッとしてしまう。
「でもあいつ、かわいいとこあったよ。紗夜にしたことめっちゃ反省してるって。許してほしいって頭下げてた」
「許したの?」
「まだ保留」
「許しちゃダメ!」
「なんで。俺結構好きかも。あいつ」
あんなケダモノを?!
魁十にあんな魔物が憑りつくなんてとんでもない!
思わずキュッと魁十に抱きついた。
絶対、大輝くんなんかに渡さない!
「ダメ。私が許さない。カイの好きは私だけのもの」
「紗夜の好きは?」
私の好き、は……。
頭真っ白。
温かい手が頬に添えられる。
グイッと力が加わって、顔を上げさせられた。
魁十は弟。
なのに、身動きが取れない。
魁十はきっと今、私が逃げる時間を与えてくれている。
私よりずっと高いところにあった魁十の唇がゆっくりと下りてくる。
繊細で長いまつ毛の目が閉じたから、私も目を閉じた。
魁十の唇を感じた瞬間、私をがんじがらめていた「弟」って檻がバラバラに壊れた気がした。
私の一番古い記憶は、3歳の時。
初めて会った魁十がとても小さくて、私を見上げ泣いた。
当時の私は漠然と不思議な子だと思った。今思えば儚いと感じたのかもしれない。
魁十がかわいすぎて、幻を見てるみたいで、消えてなくなっちゃうんじゃないかって怖くなるくらい。
かわいくて泣き虫な魁十を守ってあげたいって気持ちが姉って立場とリンクして、私は姉として両親の信頼を得ていった。
魁十のための再婚にあたって、私のリアクションは両親にとって懸念材料だっただろう。
魁十がかわいくてかわいくてしょうがなくて、追い回すように構い続けるのを両親は微笑ましく見ていた。
普通の姉弟ならいい加減にしろ、と叱られていたかもしれない。
次第に魁十が心を開いてくれるのが嬉しくてたまらなかった。
そうこうするうちに家族のあったかい空気感が心地良くって大好きになった私は、自ら「姉」に縛られていったんだと思う。
魁十を大好きな気持ちが恋だと知って、この家族を失いたくなかった。
魁十の唇が離れていくと、ふと寂しく感じて、恥ずかしくてうつむいてしまった。
魁十も何も言わない。
さすがに顔を上げたら、真っ赤になった魁十が手の甲をおでこにあてて冷やしている。
かわいい……!!
魁十がかわいすぎてもう言葉にならない。
自分からキスしといて照れる魁十、宇宙一かわいい。優勝。おめでとう。
腕を伸ばして、そっと魁十の手をのけるとグッと下唇を噛んでジトッとした目で私を見下ろす。
……どういう感情?
魁十が自分の肩をトントンと叩いた。
「拭く?」
そう言えば、大輝くんとキスした後は口が唾液でベタベタする気がしてたな。
「拭かない。汚くないもん」
「汚いと思ってたのかよ。さすがに気の毒」
「ねえ、もう1回聞いてよ」
きっかけがないと、自分から言うのは恥ずかしい。
察したのか、また魁十の顔がカッと真っ赤になる。
照れ屋さん、かわいい~。
もっと照れさせたくなる。
「……紗夜の好きは?」
「全部魁十! 魁十だけが好き。ヤバいくらい好き。何が何でも好き」
「語彙力ねえな」
中2から続く思春期で、こんな風に魁十の首に抱きついてもいつも秒ではがされていた。
魁十が笑顔で受け入れてくれる日が来るなんて、夢みたい。
「あ、あの……うちの会社の人が迷惑かけてごめんね」
「マジで迷惑。こんなことが二度とないようにして」
怒ってる怒ってる。
怒ってても魁十は地球上で一番かわいい。
「あいつ、たしかバイク乗ってたよな」
「うん、バーベキューの時に乗ってたね」
今となっては大輝くんの人間性はゴミ以下だと思うけど、あれはカッコ良かった。
「すげえな。あいつ無免許だよ。身分証が保険証しかないって言って必要書類の説明を何回も聞きに来たもん」
「免許持ってないの?!」
「俺が何もしなくてもそのうち捕まるんじゃねーの」
別れて本当に良かった……。
「紗夜も何を一緒になってギャーギャー騒いでたんだよ。人が仕事してんのに俺の紗夜と勝手に盛り上がりやがって腹立ったわ」
「私の方こそだよ。大輝くんがカイのことかわいいかわいいって言うから腹立っちゃって」
「なんで」
「私が一番魁十をかわいいって思ってるもん。大輝くんなんかに譲れない」
「一番?」
「一番……」
魁十が笑って私の髪を触る。
そういう、弟っぽくないことをされるとドキッとしてしまう。
「でもあいつ、かわいいとこあったよ。紗夜にしたことめっちゃ反省してるって。許してほしいって頭下げてた」
「許したの?」
「まだ保留」
「許しちゃダメ!」
「なんで。俺結構好きかも。あいつ」
あんなケダモノを?!
魁十にあんな魔物が憑りつくなんてとんでもない!
思わずキュッと魁十に抱きついた。
絶対、大輝くんなんかに渡さない!
「ダメ。私が許さない。カイの好きは私だけのもの」
「紗夜の好きは?」
私の好き、は……。
頭真っ白。
温かい手が頬に添えられる。
グイッと力が加わって、顔を上げさせられた。
魁十は弟。
なのに、身動きが取れない。
魁十はきっと今、私が逃げる時間を与えてくれている。
私よりずっと高いところにあった魁十の唇がゆっくりと下りてくる。
繊細で長いまつ毛の目が閉じたから、私も目を閉じた。
魁十の唇を感じた瞬間、私をがんじがらめていた「弟」って檻がバラバラに壊れた気がした。
私の一番古い記憶は、3歳の時。
初めて会った魁十がとても小さくて、私を見上げ泣いた。
当時の私は漠然と不思議な子だと思った。今思えば儚いと感じたのかもしれない。
魁十がかわいすぎて、幻を見てるみたいで、消えてなくなっちゃうんじゃないかって怖くなるくらい。
かわいくて泣き虫な魁十を守ってあげたいって気持ちが姉って立場とリンクして、私は姉として両親の信頼を得ていった。
魁十のための再婚にあたって、私のリアクションは両親にとって懸念材料だっただろう。
魁十がかわいくてかわいくてしょうがなくて、追い回すように構い続けるのを両親は微笑ましく見ていた。
普通の姉弟ならいい加減にしろ、と叱られていたかもしれない。
次第に魁十が心を開いてくれるのが嬉しくてたまらなかった。
そうこうするうちに家族のあったかい空気感が心地良くって大好きになった私は、自ら「姉」に縛られていったんだと思う。
魁十を大好きな気持ちが恋だと知って、この家族を失いたくなかった。
魁十の唇が離れていくと、ふと寂しく感じて、恥ずかしくてうつむいてしまった。
魁十も何も言わない。
さすがに顔を上げたら、真っ赤になった魁十が手の甲をおでこにあてて冷やしている。
かわいい……!!
魁十がかわいすぎてもう言葉にならない。
自分からキスしといて照れる魁十、宇宙一かわいい。優勝。おめでとう。
腕を伸ばして、そっと魁十の手をのけるとグッと下唇を噛んでジトッとした目で私を見下ろす。
……どういう感情?
魁十が自分の肩をトントンと叩いた。
「拭く?」
そう言えば、大輝くんとキスした後は口が唾液でベタベタする気がしてたな。
「拭かない。汚くないもん」
「汚いと思ってたのかよ。さすがに気の毒」
「ねえ、もう1回聞いてよ」
きっかけがないと、自分から言うのは恥ずかしい。
察したのか、また魁十の顔がカッと真っ赤になる。
照れ屋さん、かわいい~。
もっと照れさせたくなる。
「……紗夜の好きは?」
「全部魁十! 魁十だけが好き。ヤバいくらい好き。何が何でも好き」
「語彙力ねえな」
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魁十が笑顔で受け入れてくれる日が来るなんて、夢みたい。
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